万博は当初予算内でやって
消費税の導入以降、徐徐に生産性を下げ、人件費を抑制する企業の蔓延(内需委縮)を許し続けるわが国政府は、今なお「一億二千五百万国家」で人手不足が起きた分野の穴埋めに、消費税の廃止ではなく外国人を「労働力」として物のように輸入する方針に転じました。
その在留資格である「特定技能」の一号に、岸田政権が新たに自動車運送、鉄道、林業、木材産業の四分野を加えようとしています。以前から申していますが、特に自動車運送の分野で外国人を受け入れることは、いわゆる「人と道路の安全」面で極めて危険です。
まず低賃金と厳しい労働環境を改善することが第一であり、長期計画としては、やはり内需回復を優先して少子化に歯止めをかけねばなりません。
これをせずして「足りなければ外国から入れればよい」という短絡思考では、劣悪な環境に外国人が耐えきれず、離職者と不法滞在を増やすだけで、何の解決にもならないどころか別の問題(犯罪など)を増やしてしまいます。
社会保険料の徴収強化も、多くの場合に於いて私たち国民のはたらく意欲を削いでおり、兆どころか京単位の莫大な政府・国民資産を背景にした国債購入で潤沢に予算を組めるはずのわが国で、制度設計そのものが間違っているのです。
つまり、政府の言う「人が足りない」「予算が足りない」は、財務省主計局を頂点とした霞が関官僚が主導する出鱈目であり、すべて嘘なのです。
さて、そこでもう一つの問題は、能登半島大地震のような自然災害からの復興に、その都度、大型予算を投入しなければならないわが国の事情です。自主憲法の大日本帝國憲法下では、例えば大正十二年の関東大震災からの復興も早かったのですが、現行憲法(占領憲法)を「憲法」と言い出してから少しずつ「自己再生能力」までもを失い始め、阪神淡路大震災も東日本大震災も復興がままなりません。
そのせいで、震災が起きると大きな国家的行事にいちいちケチがつき始めます。来年開催予定の日本国際博覧会(大阪・関西万博)についても、能登半島大地震の発生直後から私たち国民の間で中止論が噴出しました。
もともと大阪維新の会主導で誘致された万博で、いざ「当初予算額では足りない」と言い出した大阪府が「政府主催なんだから何とかしろ」というような論調に出た際は、多くの国民を呆れさせたものです。
開催に係るさまざまな発注に、維新と懇意の企業が選定されているといった不信感も相まって、主催者を代表する岸田文雄首相が自民党のいわゆる「派閥」解消に続く「捨て身の破壊策」として、万博の中止を言うのではないか、といった憶測まで飛び交いました。
しかし、大阪府が「政府主催だ」と言うのなら、主催者として「当初予算内に収めるべし」を命じればよいと思います。つまり、規模を縮小するということです。
そこへ次期首相候補の高市早苗経済安全保障担当相も、同種の問題提起をしました。高市担当相も自ら言及した通り、開催延期は難しいかもしれませんから、もう一つの「縮小」でいけばよいでしょう。
大地震復興に必要な工事と万博会場の建設工事は、ほとんど分野が異なり、影響し合わないという意見もありますが、本音を申しますと「健康」だの「長寿」だのといった不気味な主題を掲げた博覧会に、国民的需要があるとは思えません。
昭和四十五年開催の大阪万博が「人類の進歩と調和」で、それを打ち破る岡本太郎氏の「太陽の塔」だけ(旧鉄鋼館など一部現存)が原形のまま残ったことを考えても、維新が「身を切る」と言いながら万博の予算だけは死守しようと詭弁を弄しているあたりに、やはり「権力が掲げる言葉の胡散臭さ」を禁じえないのです。
高市担当相は、よく思い切って延期か縮小を提言されたと思います。