自衛権問題より消費税問題

皇紀2674年(平成26年)7月4日

 http://www.asahi.com/articles/ASG733DKFG73ONFB004.html
 ▲朝日新聞:解釈改憲、違憲訴訟視野に団体結成へ 三重・松阪市長

 自衛権に関する解釈改憲の動きをめぐり、自説を述べた私に対して或る方が「あなたは集団的自衛権の行使に反対なんですね?」と言うので、私は「賛成・反対以前の問題。その質問には意味がない」と申しました。

 ですから、首相官邸周辺を取り囲んで反対運動をし、JR新宿駅南口で騒動を起こしたり、乗じて違憲確認訴訟の手に出ると宣言した三重県松坂市の山中光茂市長のような人物に申したいのは、政府に問うべき問題を間違えているということです。

 占領憲法(日本国憲法)有効論を信奉しながら、行使容認を閣議決定した安倍内閣は、何度でも申しますが、これから自衛隊員を、そして私たち国民を騙しにかかるわけで、確かに抗議の対象にはなるでしょう。

 しかしながら、反対派の精神的支柱は、つまるところ安倍晋三首相と同じ占領憲法有効論であり、すでにこれまで数回にわたって解釈が変更されてきたものを持ち出して、今更何を司法に問うというのでしょうか。無効確認をしない限り、不毛な運動はやみません。

 占領憲法第九条によれば、自衛隊は違憲の存在であり、山中市長が争点とした第十三条にいたっては、そもそも自衛権保持の根拠とも申せます。政府の解釈も反対派の主張も、ともにあべこべなのです。

 山中市長は、松下政経塾から民主党の出身で、のちに子供手当てなどの施策をめぐって民主党と対立したのは、みんなの党の渡辺喜美代表(当時)の支援を受けてからでした。

 子供手当てを徹底的に批判したのは見事でしたが、そのような信念を持っているならば、まして地方の首長として、自衛権問題より消費税問題に血道をあげるべきでしょう。国民の生命や自由、幸福追求権を奪う緊急性が高いのは、むしろ消費水準の異常な下落が示す「増税ショック」のほうです。

 これは、決して重要な問題から目をそらせるために申しているのではありません。憲法問題こそが最重要なのですが、七月三日記事で申したように、給与は下落したまま物価だけが上昇している中、総務省統計局が六月二十七日に速報した五月の家計調査で、消費税導入年および最初の増税年と今回を比較して、ありえないほど家計消費が下落してしまったことが分かりました。

 税率引き上げの撤回を陳情していたころ、私が申すような事態を危惧する声はほとんどなく、ところが現実は大きく過去二回を上回る落ち込みを記録してしまったのです。

 うるさく申して恐縮ですが、安倍内閣の経済政策は、掲げた目標と実質政策がちぐはぐであり、国民生活の向上は見込めません。なぜ、あれだけの人が官邸を取り囲んでいるのに、この現実に誰も声を上げないのでしょうか。

 「地球市民」などと現実逃避を重ね、外国人労働者(事実上の移民)受け入れに無批判を貫きながら、どうして雇用や賃金の問題が解決するでしょう。情緒的な思考停止こそが、政治家や官僚をつけあがらせるのです。

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愚者ほどバラマキに依存

皇紀2674年(平成26年)7月3日

 http://sankei.jp.msn.com/politics/news/140627/plc140627……
 ▲産經新聞:「きめ細やかな広報を」 臨時給付金で首相

 すっかり申し忘れていたことなのですが、臨時給付金(バラ撒き)ほど間違った政策はありません。このようなことをするのであれば、全品目一律の消費税率引き上げ決定を撤回すればよかったのです。

 いよいよ今月からの経済指標が、次なる十%への引き上げ判断の材料となるわけですが、給与はかつて下げられた低水準のままなのに、物価ばかりが上昇しています。

 何度でも申しますが、デフレーション(デフレ)というのは、物価よりも給与が下がっている状態を指すのであり、安倍晋三首相も日本銀行も物価上昇に関する数値目標しか示していません。

 それで企業は給与を上げられるだろうという目算を立てておきながら、外国人労働者(事実上の移民)大量受け入れ政策なんぞを掲げるものですから、当初最重要課題だったはずの「デフレ(給与下落)脱却」がまるで果たせないのです。

 目下の物価上昇にしても、単に材料費の高騰や収穫量、またはそもそもの飼料不足などによる商品単価のやむをえない値上げであって、ほとんどの企業は給与水準を引き上げられる環境にありません。

 しかし、購買する側に立てば物価上昇に変わりはなく、先月からは毎年のことながら住民税の納付も始まりましたから、もう絞れるところもないまま生活苦が始まるのです。

 中低所得でもかなりの納税額が通知されますから、もう「生活保護のほうがマシだ」という気持ちになる人もいるでしょう。それほど、現下のわが国は不公平なことだらけなのです。

 そこへ特定条件を設けて臨時給付金をバラ撒き、しかもその広報にまたぞろ行政費用がかかるというのですから、納めた税金を無駄遣いされているのは明白でしょう。

 バラ撒くくらいであれば、納税に関する免除条件を拡大すればよいのです。政府税制調査会は、配偶者控除の廃止に待ったをかけてくれたまでは結構でしたが、中小企業の法人税率(国税)を引き上げようとしています。

 大企業は引き下げるのに、中小企業には「これまで優遇されてきたのだから、うんととってやる」というのは、企業の所得規模に応じた適正を狂わせ、「誤った平等」の論理で「弱いもの虐め」をしているに過ぎません。そのようなことをするくらいなら、法人税率引き下げの議論をやめればよいのです。

 安倍政権の経済政策は、外交・安全保障政策はともかくとしても、まったくなっていません。もう一度申しますが、今日「アベノミクス」などという現象は、もう存在していないのです。

全拉致被害者帰国しかない

皇紀2674年(平成26年)7月2日

 http://sankei.jp.msn.com/world/news/140630/chn140630……
 ▲産經新聞:中国軍ナンバー2党籍剥奪 習指導部 軍掌握へ賭け

 或る産經新聞社記者の見立てでは、中共の徐才厚前中央軍事委員会副主席の党籍が剥奪されたことをもって、共産党人民解放軍が習近平国家主席に集団で造反し始めるかもしれないというのですが、本当にそうでしょうか。

 胡錦濤前主席は、ついに共産党軍をうまく制御できないまま役割を終えましたが、習主席はすでに軍をほぼ掌握しています。彼らと運命を共にするかのように、外交部を厳しく叱責したこともあるようです。

 徐氏は、胡前主席に近い人物でした。上記産經新聞社記事の最後にあるとおり、習主席は、胡一派を一網打尽にすることで軍に忠誠を誓わせ、自らも軍と一体の政策を進めているのです。この記事のニュアンスのほうが正確でしょう。

 さて、習主席が軍と一体化して外交部を叱責したのは、北朝鮮問題でのことだった、と私は聞いています。

 その詳細は申せませんが、とにかく三日から始まる韓中首脳会談と関連して、まず北朝鮮を崩壊させ、韓国による朝鮮半島の統一を習主席が望んでいるということです。もちろん、在韓米軍の完全排除が条件であることは、申すまでもありません。

 北朝鮮の弾道弾発射について、六月三十日記事で私が申したことと、わが国の報道各社の解説はまったく異なっていましたが、某社の「これでも日朝協議に応じるかどうか、北朝鮮は日本を試した」という分析のほうが間違いです。

 金正恩第一書記は、ドル送金だけでなく原油供給まで(本年一月から)止めた中共に激怒しており、その中共と韓国が秘密裏に北朝鮮崩壊後の半島統一を話し合っていることもおそらく聞きつけ、残された唯一の対日接近という手に出ました。

 ですから、本当に北朝鮮は困窮しきっているのです。中共を脅すにも原油がなく、それで韓国に嫌がらせをしているに違いありません。韓国の朴槿恵大統領は、習主席に騙されているとも知らず、在韓米軍の撤退要請へと舵を切りなおす可能性も出てきました。

 米国政府の大筋は、確かに在韓米軍を引き上げたいのであり、一方で北朝鮮の核兵器開発をやめさせたいと思っています。よって、いざとなればわが国に自衛隊を派遣させ、統一資金も援助させたいのであって、これが安倍晋三首相の自衛権をめぐる解釈改憲謀略の正体です。

 だからこそ、それまでは何が何でも日韓関係を友好のうちに維持させられ、北朝鮮崩壊の手助けをさせられるのでしょうが、これが中共の思うツボだとなぜ分からないのでしょうか。

 在韓米軍のいない韓国など北朝鮮と何も変わりません。これらの策謀をすべてひっくり返すには、北朝鮮が本気で拉致事件の全被害者を即時わが国に帰国させるしかないのです。

集団的自衛権、閣議決定へ

皇紀2674年(平成26年)7月1日

 http://www.afpbb.com/articles/-/3019144?ctm_campaign
 ▲AFP:シリアとイラクの武装勢力、イスラム国家樹立を宣言

 六月十四日記事で、私は「回教スンニーの過激派『イラクとレバントのイスラム国(ISILまたはISIS)』が新しい回教国家を建造してしまうかもしれない」と申しましたが、本当にそのとおりに彼らは宣言しました。

 米軍が大規模派兵できなかったのは、こうなることを知っていたからです。だからこそ「中共は『米国弱体の隙に……』などと勘違いしないほうがよい」とも申しました。

 また、「これをイラク国内の問題と思ってはいけない」「いわばシリアで鍛えられた戦力がいよいよイラクを掌握しようというところまできた」とも指摘し、彼らはこれまたそのとおりに建国範囲を設定したのです。

 少し前に読者の方が、安倍晋三首相とイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相との首脳会談を取り上げ、イランを怒らせた外交交渉を批判されましたが、このとき安倍首相の頭は、露国のクリミア半島問題に対処するよい方法を探ることで一杯で、米国と距離をとってでも対露制裁に加わらなかったイスラエルとの諸合意は、利口な策だと考えられました。

 しかし、事実としてイラン(義国)に対日非難をさせる口実を与え、私がかねてから「米国と距離を置いてでも守れ」と主張してきた日義関係に亀裂が走ったのです。

 そのことと、本日閣議決定される予定のいわゆる「集団的自衛権」行使容認(解釈改憲)問題は繋がっており、今やすっかり一例として定着したホルムズ海峡の機雷除去作業に自衛隊が戦時から関わる可能性を、自ら創出してしまいました。

 自衛隊は、必ずイラン軍に殺されます。独国軍も、アフガニスタン攻撃に「治安維持活動」として独国基本法の解釈変更で臨みましたが、そこは兵士五十人以上の戦死者を出す戦場だったのです。この「戦場に派兵」という事実を、アンゲラ・メルケル首相は四年間も隠蔽しました。

 安倍首相は、おそらく自衛隊員にも同じことをするのでしょう。占領憲法(日本国憲法)のままでそうすることは、まさしく自衛隊員を、私たち国民を騙す行為にほかなりません。「やむをえない」ではすまないのです。

 わが国政府は、現段階で中東情勢を見誤っています。この新しい「イスラム国」の登場にも決して対処できません。

 いつまでも占領憲法政治をやっていると、中東諸国にまで弱みを握られ、原油輸入もままならなくなるでしょう。そのとき、米国政府はわが国を助けません。「個別」も「集団」もない自衛権の行使で、国際情勢と向き合わねばならないのです。

北朝鮮が弾道ミサイル発射

皇紀2674年(平成26年)6月30日

 http://sankei.jp.msn.com/world/news/140629/kor140629……
 ▲産經新聞:北朝鮮が弾道ミサイル発射 日本海に向け複数

 北朝鮮が二十九日午前五時頃から、二発の短距離弾道弾を発射したことについて、その狙いなどの分析が各所で始まっています。

 射程は五百キロメートル以内で、日本海上に落下しましたから、単純に考えれば日朝協議の進展に対する何らかの「力による」牽制が疑われますが、今回はまったく違うでしょう。

 最も関係があるのは、中共の習近平国家主席が来月三日から、韓国を公式訪問することであり、歴代主席が就任してから北朝鮮を後回しにするのは、これが初めてです。

 むろん外貨がほしくてたまらない北朝鮮が、いつものように「見本市」をやっていると申せばそれまでですが、韓国が中共に隷属を始めたことは、北朝鮮にとって極めて許容しがたい現実に違いありません。

 彼らが直接中共を牽制したければ、黄海に向けて中距離弾道弾を発射したでしょうし、米国を牽制するのであれば、長距離弾道弾を太平洋に向けて発射したでしょう。すぐに人民にも伝えるはずですが、今のところ速報されていません。

 しかし現下の北朝鮮は、それらを発射して見せることもできない経済状態にあると考えることができます。核実験の可能性をちらつかせてできなかったのも、同様ではなかったでしょうか。

 短距離弾道弾は、はっきり申し上げて対韓国の兵器です。今の北朝鮮にできる精一杯は、韓国を牽制し、むしろ日米に対して「しっかり韓国をつかまえておけ」と言いたいように見えます。日米韓の離間は、中共がやっていることです。

 よって日朝協議への影響はありませんし、政府は冷静に対処しました。ただ、日韓関係の改善を仮に米朝それぞれから要求されても、それは韓国に言っていただかなければなりません。

 韓国の「反日」からくる賠償などの請求に応じることは、今後の日朝国交回復交渉にも影響するため、決して私たちが認めてはならないのです。