ホワイトハウス 陥落!

皇紀2673年(平成25年)6月9日

【コラム】

 映画『エンド・オブ・ホワイトハウス』 6月8日(土)全国ロードショー‎

 よりによってアメリカの独立記念日にホワイトハウスが北朝鮮のテロリストに占拠され、大統領が人質にとられた!……笑えない。いや、別に笑って欲しい映画でもなかろう。

 独立記念日と言えば、『インデペンデンス・デイ』(ローランド・エメリッヒ監督)では異星人の襲撃によってホワイトハウスが一瞬で爆破されたし、大統領が人質になると言えば『エアフォース・ワン』(ウォルフガング・ペーターゼン監督)があった。

 なぜかこの二作ともドイツ出身の監督がメガホンをとっているのだが、『エンド・オブ・ホワイトハウス』の監督はアフリカ系アメリカ人のアントワーン・フークアだ。実はエメリッヒ監督の『ホワイトハウス・ダウン』も八月十六日に公開(予定)になる。

 まぁ立て続けにホワイハウスが火の海になる映画を作ったハリウッドが病んでいるのか、もうアメリカ自体が病んでいるのか、外国人である私たちの知ったことではないが、いよいよ北朝鮮のテロリストにアメリカの中枢を襲わせるという設定は日本人にとっても興味深い。

 当然アメリカはホワイトハウスの危機想定ぐらいしてきたが、映画として描かれることはなかったと思う。大統領専用機がハイジャックされる映画も公開当時は驚かされた。なぜなら、ハリウッド映画界はごひいきの民主党政権下であれ好かん共和党政権下であれ、政府の意向と連動することがあるからだ。

 これまで大統領を襲ったりホワイトハウスを汚染してきたのは、大抵ロシアの工作員や元軍人、或いは中東のテロリストや麻薬カルテルだった。つまり、アメリカの敵はコイツらね、というわけ。

 ところが、『ホワイトハウス・ダウン』のほうのテロ組織はともかく、『エンド・オブ・ホワイトハウス』ではほぼ初めてと言っていいほど北朝鮮を「核の脅威」とともに徹底的にアメリカと敵対させている。日本海域から太平洋第七艦隊を撤収させ、核ミサイルの発射コードを教えろと迫るらしい。

 対する大統領は『幸せのレシピ』のアーロン・エッカートだが、未だにアメリカ人の最も好きな映画の中の大統領は『インデペンデンス・デイ』のビル・プルマンだと言うから、やはりどの国も誇り高く戦って勝つ人物を理想とするようだ。

 そこで北朝鮮のテロリストと戦うのは、心に傷を抱えて小さな職責に甘んじている『300(スリーハンドレッド)』のジェラード・バトラー。指揮権は『ディープ・インパクト』でバラク・オバマの登場より先に黒人大統領を演じた下院議長役のモーガン・フリーマンが握る。このあたりの設定とキャスティングがいかにも現在のアメリカだ。

 わが国は今、北朝鮮と対話を始めている。何よりも早く拉致被害者を奪還するためだが、そのために朝鮮総連の問題で妥協することも出てくるだろう。しかし、アメリカは北朝鮮を突き放した。

 韓国映画界が日本との戦争を描いたことは何度もあるが、そんな作品が作られる背景には、それほどの国民的関心、韓国の場合は「反日」とかね、厳然と存在する。アジアの地図もまともに見られないアメリカ人の関心が、ようやく私たち日本人のレヴェルに追いついてきたのかもしれない。

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橋下市長らは何を目論むか

皇紀2673年(平成25年)6月8日

 http://sankei.jp.msn.com/west/west_affairs/news/130603……
 ▲産經新聞:【オスプレイ訓練 八尾受け入れ】橋下氏、官房長官に候補地として提案 地元の反発には「松井知事が協議すると思う」

 日本維新の会共同代表で大阪市の橋下徹市長と同党幹事長で大阪府の松井一郎知事は六日、在日米軍にも配備されている海兵隊の垂直離着陸輸送機「MV-22オスプレイ」の訓練に関し、菅義偉内閣官房長官との会談で、八尾空港(大阪府八尾市)での一部受け入れを提案しました。

 橋下市長は「沖縄の負担を軽減するため」などと突然の提案の理由を述べていますが、本当のところはどうなのでしょうか。

 そもそも在日米軍はこの提案を受け入れません。なぜなら戦略上の問題に加えて、八尾空港は日米地位協定に基づく「共同使用施設」ではなく、現状で米軍は使用出来ない上に、その規模の小ささから共同使用をわが国政府に申し出ることもありません。

 また、防衛省も同様の認識です。もしもの際の機材の故障に対応する場所すら確保出来ず、周囲は住宅密集地のため、拡張もままなりません。所管の国土交通省にその予定もないのです。

 一部からは「いわゆる『慰安婦発言』で傷ついた名誉を挽回するためでは」との声も聞こえますが、「沖縄の負担軽減」を煽ってきた報道各社は、いざ橋下市長らがその策を提案しても頭ごなしにこれを否定的に伝えています。

 仮にも本気で八尾空港での受け入れが可能だと考えて提案したとすれば、橋下市長も松井府知事も国政政党に携わる資格のない「国防音痴」であると露呈されたことになりますが、目的は別にあるはずです。

 それは、受け入れ反対を表明した八尾市の田中誠太市長を対象の一つとし、反対運動を扇動して対立軸をわざわざ創出、既に低落した支持率の再浮上を目論むという策謀ではないでしょうか。もはやこれ以外に考えられないほど、今回の提案はあまりに準備不足で稚拙なのです。

 田中市長は八尾市議会議員および大阪府議会議員のころ、旧日本社会党系の元民主党公認であり、六年前に自民党推薦の現職を破って民主党推薦で当選しました。

 橋下市長はともかく松井府知事が事前に彼に打診すべきところを一切していません。これからは八尾空港と大阪市役所、大阪府庁が「オスプレイ反対」を掲げる極左破壊活動の聖地と化すでしょう。橋下市長と松井府知事は我田引水の国防論争を喚起すべく、それを狙っていると思われます。

 私はかねてより「日韓対立は利権化している」など申してまいりましたが、対立を煽って何らかの政治的利益を得るという構図は決してなくなりません。私たちは、このような手法を用いる政治家や文化人、報道企業を信用してはならないのです。

訴えるなら今のうちかも…

皇紀2673年(平成25年)6月7日

 http://sankei.jp.msn.com/world/news/130605/chn130605……
 ▲産經新聞:欧州委、対中反ダンピング関税暫定適用を決定 太陽光パネルに

 欧州連合(EU)欧州委員会は四日、域内に輸入される中共製太陽光発電盤に対し、反不当廉売(ダンピング)関税を六日から暫定的に適用することを正式に決定しました。

 しかし、中共との経済的関係への影響を未だに懸念する独英などから反対意見が出たため、当初からの引き上げ目標を「交渉次第」としており、早速ここにつけ込んだ中共商務部は翌日、欧州産葡萄酒(ワイン)を反不当廉売の調査対象とすることを発表しています。

 これで中共がどの種の国家か、よくお分かりになったでしょう。彼らはわが国に対してのみならず、弱みを見せれば欧州連合に対してもいわゆる「恫喝外交」をやります。だから占領憲法(日本国憲法)の有効状態という最大の弱みを抱え続けているわが国には、年中脅しをかけてくるのです。

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 http://www.yomiuri.co.jp/election/sangiin/news/20130530……
 ▲讀賣新聞:自民、「ワタミ」渡辺会長擁立へ…参院比例選

 飲食大手「ワタミ」会長の渡邉美樹氏が、今夏の参議院議員選挙で自民党比例区公認候補となることが決まりました。安倍晋三首相から直接打診があったといいます。

 渡邉氏は佐川急便で働いて必死に稼いだお金で独立起業し、今日の地位を築いた(高杉良氏の『青年社長』より)という苦労体験を持ち、それなりの人生哲学を身に纏った立派な方です。ところが、彼の創業したワタミには、社員・従業員の労働条件の悪さにまつわる話が後を絶ちません。

 もし彼らの主張に間違いがなく、訴訟を起こすというのなら、早くしたほうがよいでしょう。仮にも渡邉氏が当選し、厚生労働委員会にでも所属されたら、必ず提訴しづらい、受け取ってもらえない状況になることが予想されます。

 わが国は国家三権が独立していますが、司法への政治の介入は時として否定出来ません。別に訴訟を勧めているわけではありませんが、本当に辛くて会社側と話し合いにもならないならば司法判断を今すぐ仰ぐべきでしょう。

 人の上に立つ経営者や現場主任などで最も性質が悪いのは、自身の艱難辛苦の成功体験を当然の基準とし、部下にも同等の働きを強く求めることです。

 渡邉氏は知らず知らずのうちに、佐川でのいわば「キツイ」体験を当然の基準として社員たちにも押しつけているかもしれません。そこに悪意はないと信じたいところですが、このままではまるで「悪代官」であり、経営者として失敗します。

 よって政治家に転身するというわけでもないのでしょうが、私たちの給与や働く環境をよくしようと取り組んでいるはずの安倍首相は、これら情報を得ないまま彼に出馬を要請したのでしょうか。首相の周囲にこれ以上、政策立案の邪魔になる人は置かないほうがよいと思います。

 自民党には西田昌司参議院議員のような政治家がいれば十分です。

誰がこんな原稿を書いたか

皇紀2673年(平成25年)6月6日

 http://www.kantei.go.jp/jp/96_abe/statement/2013/0605speech.html
 ▲首相官邸:安倍総理 「成長戦略第3弾スピーチ」(内外情勢調査会)

 安倍晋三首相は五日、自身の経済政策の「本丸」と語る成長戦略の第三弾を掲げました。これまで第一弾の医療や労働、第二弾の社会基盤輸出や農業、投資などについて、私は申したいことを山ほど抱えながら本日まで耐えてきましたが、これが単なる安倍首相批判で済む問題ではないため、思い切って端的に申します。

 まず、今回の発表をもってしても日経平均株価が下落したといいますが、双方に大した因果関係はありません。それでも安倍首相の講演が多くの人を失望させたのは事実です。

 なるべく過去に申したことの重複を避けるとして、第一弾は成長戦略になっておらず、第二弾には今後三年間を「集中投資促進期間」にするとありましたが、政府がこの手のことをやって成功した試しなどありません。その期間ののちはどうなるのでしょうか。

 また、農業に於いても「第六次産業化」などと、いかにも官僚が考えた「言葉遊び」に内容が終始し、厳然と「減反で補助金を拠出してきた自民党政治の間違いを私は一掃します」と言えなかった時点で「アベノミクスの失速」は必至です。

 こう申すと、またぞろ「だから安倍首相批判は控えてくれと頼んだはずだ」と一部からお叱りを受けますが、私は決して関係者から資金を提供されて書いたり講演したりしていませんので、むしろ安倍首相の周囲に問題があると明言しておきます。

 元経済産業(旧通商産業)官僚が強くなった官邸ならば「日本近海の海底資源採掘」をいち早く発表するかと思えば、未だに五年後の商業化に向けた採掘調査を進めていませんし、安倍首相も何も言わなくなりました。

 今回の講演原稿にも「投機」ではなく「投資」を求めるとありながら、その元手と申すべき資源がなければ、口先だけで絵に描いた餅に終わります。第三弾の最も酷いのは、一人あたりの国民総所得を十年後に百五十万円増やし、七年後に外国企業の対日直接投資残高を二倍にすると言ったことです。

 前段は、そもそも給与と物価下落の悪循環(デフレーション・スパイラル)から脱却する大胆な金融政策が奏功すればほぼ目的を果たしてしまいますし、後段は、大きな投資の対象を何ら産み出していない現状では空想にしか聞こえません。どなたが書いた講演原稿か存じませんが、意味がないのにもほどがあります。

 これまでも米大統領府(ホワイトハウス)に比べてわが国の首相官邸には優秀ないわゆる「スピーチライター」がいないことが一部で指摘されてきましたが、ひたすら「言葉の安全運転」に腐心して、これほど中身のない発表をすれば、私たちの落胆を誘ってもやむをえません。

 安倍首相周辺の癌は、間違いなく産業競争力会議の「民間議員」たちです。加えて「クールジャパン」戦略会議も全く余計なお世話であり、政府のすべきことは文化に対する過保護ではなく、世界進出のための著作権・知的財産等に関する法的手助けの具体化に他なりません。

 仮にも官邸から「農作物も瓦斯や石油も自給すると言ったら、米国からこの政権がまた潰される」といった泣き言が聞こえてくるならば、占領憲法(日本国憲法)の無効確認こそ成長戦略の第一弾だと答えましょう。

トルコ大規模デモ、なぜ?

皇紀2673年(平成25年)6月5日

 http://sankei.jp.msn.com/world/news/130604/erp130604……
 ▲産經新聞:トルコ、24万人規模のスト突入 反政府デモ拡大 野党党員1人死亡

 野中広務元官房長官や仙谷由人元官房長官らが訪中し、沖縄県石垣市尖閣諸島の係争化(棚上げ論の蒸し返し)を中共共産党幹部らと確認しあったとか何とか、といった報道に触れても、皆様はほとんど心配する必要はありません。

 野中氏も仙谷氏も現政権と一切関係のない人たちです。彼らの言動は日中関係のいわゆる「瓦斯抜き」に過ぎません。

 仮にも安倍晋三首相の親書でも携えた自民党の高村正彦副総裁が「中日関係が……」などと話し出せば多少緊張も走りますが、中共側とて本気で彼らと話し合ってはいないでしょう。このような体裁が欲しいだけです。

 さて、土国(トルコ)では四日、首都イスタンブル中心部のタクシム広場にあるゲジ公園の再開発計画反対に端を発した抗議運動がついに二十四万人規模にまで膨れ上がり、野党・共和人民党の男性党員が死亡しました。

 この日は公務員労働組合連盟も運動に参加し、二日間の公業務中止という抗議手法に出ることを発表しています。私は本来、公務員が労組を結成して政治活動をすることに反対ですが、日土の大いなる違いは、土国の公務員は国旗を掲げて政府と戦うことでしょう。

 わが国の自治労や日教組の政治活動で、私は国旗を見たことがありません。一体彼らはどこの国の公務員で、誰のために、どこの誰と戦っているのでしょうか。

 わが国の報道では、約十年間に渡って高い支持率を誇ってきた公正発展党のレジェップ・タイイップ・エルドアン首相が急速に回教化を進めており、国父ケマル・ アタテュルク以来の「世俗派(単純に申すと徹底した政教分離原則)」がこれに対抗し始めたという構図を伝えていますが、決してそれだけではありません。

 回教徒としての暮らしを徹底することがいわば「保守的または復古主義的」で、酒類の販売禁止などに反対することが俗に「革新的または個人主義的」というのではなく、前段で申した通り土国の世俗主義は建国以来です。そちらのほうが彼らの「国体」のかたちに違いありません。

 確かにきっかけは多目的施設の建設計画に反対することであり、抗議していた老人や女性に過剰な暴力をふるって排除しようとした警察官の様子が広く伝えられたことへの不満でしたが、俗に言う「首都圏の知識層」は、エルドアン首相の極端な合理主義と外国資本流入の促進によって、むしろ伝統的な街の風景が失われ始めていたことに強い危機感を抱いていました。

 つまり、これは「中東の春」というより泰王国(タイ)でかつて起きた「反タクシン」行動によく似ているのです。新自由主義の導入で国体の破壊をも目論んだタクシン・チンナワット元首相を非難したのも、やはりバンコク都内で活躍していた知識層でした。

 この構図を理解した上で私たちは土国の行方を見守り、エルドアン首相に対して穏便な対応を求めることがわが国政府の役割の一つです。日土関係がこれからも親密であるために。