化学兵器使用というワナ

皇紀2673年(平成25年)8月30日

 http://sankei.jp.msn.com/world/news/130829/amr130829……
 ▲産經新聞:「原爆投下も国際法違反か」シリア化学兵器使用で米国務省に質問飛ぶ

 国務省のマリー・ハーフ副報道官が「叙国(シリア)での化学兵器使用は国際法違反に当たる」と述べた定例記者会見の場で二十八日、ロイターの記者が「では米国が核兵器を使用し、広島と長崎で大量の市民を無差別に殺害したことは、あなたの言う同じ国際法違反だったのか」と質問する場面がありました。ハーフ副報道官はこれに答えていません。

 もともと英国に本社を置いていた通信社のロイターは、加州のトムソン社に買収されてからも基本的に「反米的(米国に於ける反保守的)」と指摘されることが多く、このような記者の質問もロイターならではと言えましょう。

 しかし、報道記者の中からも、欧米による叙国への軍事介入に対する根拠の薄弱さを懸念する声が上がっているのは事実であり、今回の質問はそれを代弁したようなものです。

 http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTJE97S033201……
 ▲ロイター:米国と同盟国、アサド大統領命令の証拠つかめず

 そのロイターが、やはりバッシャール・アル=アサド大統領の命令によって化学兵器が使用された証拠などないこと、サリンかどうかを含め、その使用を科学的に裏づける作業さえまだ終わっていないうちに「使用の断定」が発表されたことを記事にしています。

 叙国問題への対応について、私は一貫して皆様に「早くから与えられた大きな情報を疑え」と申してきたようなものです。アサド大統領は本当に圧政の独裁者であり虐殺者なのか、彼は本当に統治能力を欠いた無能者なのか、実のところ反政府側は単なる破壊活動家(テロリスト)たちではないのか、という疑問を抱きもせず、欧米が叙国民を巻き添えにしてでも手始めに巡航弾道弾を駆使することに対し、積極的だろうが消極的だろうが賛成していただきたくありません。

 米政府に介入圧力を加えた勢力が何者たちかはともかく、この展開の裏で、義国(イラン)との交渉に悪影響を及ぼし、以国(イスラエル)を有利にする思惑が強くはたらいています

 そこで介入の基準として「化学兵器の大量使用」というのが出てきたわけですが、この類いの方便によってわが国もかつて欧米から不当な封鎖に遭い、太平洋を挟んだ大戦となって焼け野原にされたことを忘れてはなりません。

 これからわが国が真の自立国家として情報を収集し、私たち国民の国家国体を守り、好戦的な外国を諌められるようになるためには、目下の叙国問題への対応を間違えることは出来ないのです。

 安倍政権がイラクの二の舞を演じる米国に盲従すれば、再び交戦権の回復を危険視する論調が支配的になり、必ず憲法論議の前進を断念せざるを得なくなります

 景気回復でさえ占領憲法(日本国憲法)の無効を確認しなければ出来ない次元に突入しているのに、このままでは安倍晋三首相までも「口先だけは勇ましかったが、結局は護憲の首相」ということにされてしまうでしょう。それを望む悪しき者が国内外に大勢いるに違いないのです。

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日米同盟の暗然たる将来

皇紀2673年(平成25年)8月29日

 http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_30&k=2013082800894
 ▲時事通信:アサド政権は退陣を=安倍首相「関係国と連携」

 昨日記事に引き続き、本日も皆様と共に叙国(シリア)のことを私たちの問題として提言します。安倍晋三首相は中東歴訪中の二十八日、「アサド政権は道を譲るべきだ」と述べました。

 私はいたずらに安倍首相を批判するつもりなどありませんが、一体どの情報を根拠にこのようなことを言ってしまったのでしょうか。何度も申しますが、占領憲法(日本国憲法)を有効とする「護憲」下のわが国は、独自の情報収集能力に限界を有し、明らかに米政府からもたらされた情報に基づいて為政者が政治決断する非自立国家に過ぎません。

 悪い場合は、新聞社や放送局の報道によって政策が揺さぶられていくのです。安倍首相がバッシャール・アル=アサド大統領の退陣を要求した根拠はどこにあるのでしょうか。根拠もなく自身が他国の為政者や報道企業から退陣を要求されたら、私たち国民も含めて一体どう思うのでしょうか。

 未だ占領憲法下のわが国報道企業があたかも居丈高に「気に食わない政権は潰せる」と思っているのは、今回の安倍首相のような発言を歴代首相が繰り返し、米政府に隷属してきたからです。かつてテレビ朝日の椿貞良報道局長による日本民間放送連盟(民放連)会合での発言によって発覚した偏向報道事件などは、その悪しき好例でしょう。

 安倍首相こそがこの種の偏向報道によって潰されそうであったにもかかわらず、そして「護憲」を掲げる朝日新聞社らこそが、私たち国民のいわゆる「避戦力」を根底から奪っているということに気づかない致命的な矛盾に覆われているのが、現下の日本の姿なのです。

 叙国で化学兵器(サリン)が使用された可能性はほぼ間違いないとされていますが、もう一度お断りしますと、アサド政権が国民に対して使用した証拠は何もあがっていません。イラクを焼け野原にした時と同様、米政府は全く説明しきれていないのです。

 もうこれ以上わが国が占領憲法のまま自分たちで情報を収集出来ない状態を継続していくことは許されません。経済的な思惑が絡み、損得を考えなければならない目下の国際情勢を前提としながらも、私たちの為政者が自立した政治判断も出来ないようでは、「民意」などという言葉も虚しく響くだけです。

 今月二十一日に関西テレビ放送の報道番組で、独立総合研究所の青山繁晴氏が、中共や韓国の最終目標が中共系・韓国系の米大統領を誕生させることにあると警告したことが、読者の方から寄せられたコメントの中にありました。

 それは私が八月十四日記事で申した通りで、特に中共人民の発想は既成の発展を利用するというより、いわば「我田引水」を計略する種のものであり、太平洋進出の障害である日米両国を口説き落とすよりも、そこに自らの社会を形成し、時間をかけてでも自分たちから為政者を輩出して国家まるごと乗っ取ってしまえばよいと考えるのです。

 つまり、近い将来に初の中共系大統領が誕生した米国に依存する日本は、もうその時点で中共に何もかも乗っ取られてしまいます。私は太平洋防衛について、極東のわが国と極西の米国とで担わなければならないと主張してきましたが、真の日米同盟関係を築く頃にはこの同盟そのものが危険なものになっているかもしれないのです。

 中共の深遠なる謀略に対し、わが国はあまりにも無防備であり、米国も国務省や民主党の姿勢を見る限りやはり同じと批判せざるを得ません。昨日記事の最後に「叙国問題への対応は、わが国が自立するか、どこかに隷属するかの雌雄を決するもの」と申したのは、このような暗然たる将来への警告の意味もありました。

 だからこそ中共の隠された本音は、繰り返しになりますが、英仏米の叙国への軍事介入を歓迎しているはずです。既成の先進各国が中東で足をすくわれ、よしんば疲弊してしまえばよいと思っているでしょう。

 私たちはもう一度、わが国政府に対応の再考を進言すべきです。結果が伴うかは、何しろ非自立国家ですから極めて厳しいですが、安倍首相こそがアサド大統領と「電撃会談」し、調停介入の可能性を模索すれば、米国への説明にかなりの時間を要するとしても、現実的な憲法の議論が進み、副産物として露国との講和交渉も進むではありませんか。

シリア攻撃へ、日本は?

皇紀2673年(平成25年)8月28日

 http://sankei.jp.msn.com/world/news/130827/amr130827……
 ▲産經新聞:米、シリア攻撃準備へ 化学兵器使用断定、「責任取らせる」

 米国のジョン・ケリー国務長官は二十六日、オバマ政権として、叙国(シリア)の首都ダマスカス郊外でアサド政権側が化学兵器(サリン)を使用したと断定しました。早ければ今月中にも叙国内への空爆に踏み切る方向で調整中だとの情報もあります。

 この問題は私が何度も警告してきましたが、果たして日本国民の興味をひいているでしょうか。開戦前夜になって、改めて私は皆様に問いたいのです。本当にこれでよいのか、或いは私たちにはよく分からないし、あまり関係がないようにも思えるのでどうでもよいのか、と。

 化学兵器を使用したのは、実はアサド政権側ではなく反政府側ではないかとの調査報告が厳然と連合国(俗称=国際連合)内に存在し、それでも潘基文事務総長は私事にご執心で何もしません。バラク・オバマ大統領もケリー長官も「何もしない人」と各国から揶揄されてきただけに、米国に対する中東への介入圧力は日に日に増していました。

 出来るだけ平易に簡略化して申しますと、バッシャール・アル=アサド大統領が早早に失脚しなかったのは、欧米各国が想定していたよりも国民的支持があったからで、そもそも世襲の彼は、それでも父親の政策とは全く違う世俗的な(自由な)国家を目指していたのです。

 それが米国での同時多発的破壊活動(テロリズム)の発生以降、アルカイーダやムスリム同胞団に狙われ始め、またしても監視国家的な政策へと逆戻りするほか治安を維持する方法がなくなりました。まずここで私たち日欧米が叙国に救いの手を差し出すべきだったのです。

 英仏米はその結果だけを見てアサド政権を非難し始め、茉莉花革命では反政府派を形成して遠隔操作し、彼らに武器を提供して小国を次次と好き勝手に壊してきました。壊された小国はいずれも「国民が圧制に苦しめられていた」といいますが、義国(イラン)に関するものと同様、この情報こそ極めていかがわしいのです。

 露国は地政学的に叙政府側を支持して米国の介入に反対していますが、わが国はどうすべきでしょうか。「中共も反対しているから、逆に日米関係を重視して賛成にまわったほうがよい」と考える人が多いかもしれません。

 しかし、中共は米国が中東に手をかけてくれたほうが、太平洋が手薄になって助かると考えているはずです。露国と共に叙国への制裁決議に拒否権を行使したのは、単なる外交上の手続きに過ぎず、北太平洋条約機構(NATO)軍らが安全保障理事会の承認なく空爆する可能性など想定内に違いありません。

 だからこそ、北京政府にとって中共へ手を突っ込みたがったヒラリー・クリントン前長官より、ただただ民主党的なだけのケリー長官のほうが都合がよいのです。そして、まんまと米国は介入圧力に屈しました。

 占領憲法(日本国憲法)が有効な「護憲」のままでは、私たちに拒否権はありません。叙国民が殺されていくのを、湾岸戦争などでもそうだったように、ただ見ているだけに終わります。いわば「九条教」の連中は大量虐殺の傍観者でしかありません。

 占領憲法を改正すれば米国の戦争につき合わされるという批判も、確かにそうなるでしょう。私たちが開戦の危機を目前にして「待て」と言えるのは、占領憲法の無効がただちに国会で確認(可決)され、自立憲法(大日本帝國憲法)を取り戻した時からです。

 アサド大統領は米国に対して疑心暗鬼になっています。先日申した通り、米国は刹那的に同盟国や友好国を見捨て、サッダーム・フセイン元大統領をも血祭りにあげたからです。これでは叙政府が海外から調査団を受け入れず、外交調停の介入余地を与えないのも無理はありません。

 本来わが国のような中立な立場の大国が発言し、行動することです。それを恐れたまま「日本は平和国家」などと口にすることは一切かないません。あくまで理想かもしれませんが、叙国民の真の声に耳を塞ぎ、煽られた反政府側のののしりだけを聞いて、他国を勝手に改造することに加担するとは、到底わが民族のすることではないのです。

 反政府一派から武器を取り上げよ! 叙国問題への対応は、わが国が自立するか、どこかに隷属するかの雌雄を決するものなのです。

潘氏は史上最悪の事務総長

皇紀2673年(平成25年)8月27日

 http://sankei.jp.msn.com/world/news/130826/erp130826……
 ▲産經新聞:国連事務総長が日本に異例の注文 「歴史顧みること必要」 韓国訪問し

 わが国では消費税率の引き上げの是非を問う議論が政府内で具体化し始め、安倍晋三首相は中東歴訪に向かいましたが、叙国(シリア)の内戦や埃国(エジプト)の内乱状態に何ら対処しない連合国(俗称=国際連合)の潘基文事務総長(元韓国外交通商長官)は呑気に「里帰り」し、外交通商部での記者会見で一方的にわが国を非難する発言に及びました。そのようなことをしている場合なのでしょうか。

 それは、わが国政府の歴史認識を明らかに中韓のみの立場に寄って非難したもので、連合国憲章第百条「事務総長および職員は、この機構に対してのみ責任を負う国際的職員としての地位を損ずるいかなる行動も慎まなければならない」に違反しています。

 連合国が(戦後新興の中共を除いて)第二次世界大戦の戦勝国によって組織されたものでしかないことを前提としても、事務総長が自身の出身国政府に有利になるよう不当な誘導をはたらき、紛争または政治的対立に介入して、出身国政府と敵対する国家が不利になるよう意図的に陥れてはなりません

 常任理事国という戦勝国群の「建前」によって、事務総長は事実上発展途上国から選出されてきたため、先進各国から勝手なほど「歴代の全員、程度が低い」と揶揄されることもありますが、韓国から選び出された潘氏の評判は突出して最悪です。

 彼の憲章違反行為は、今回だけではありません。機構の主要な地位に韓国人や自身の親族関係を起用し続け、平成十九年十二月に職員たちがそれを批判する文書を提出して採択されていますし、同年十月の記念日(事務総長主催)にはソウル・フィル・ハーモニーを式典の演奏楽団に指定して、その場で韓国観光を促す冊子を出席者にばら撒かせ、その冊子では日本海の表記が「(韓国政府が無根拠に命名した)東海」に書き換えられていました

 このような潘氏に対して、米ニューズウィークは「世界中で名誉学位を収集して歩いているだけ」「無能」と酷評し、米フォーリン・ポリシーも英エコノミストも「歴代事務総長の中で特に指導力や存在感を欠く」と批判しています。

 また、諾国(ノルウェー)のモナ・ユール元次席大使も「潘氏は癇癪持ちで周囲の手に負えない」などと自国政府に公電で伝えており、米国の人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチに至っては「人権侵害を繰り返す国に対して、国際的な地位が決して高くない国には強い批判を口に(弱い者虐め)するが、中共のような大国には何もしない」と批判したほどです。

 なお、内部査察室のインガブリット・アレニウス事務次長が退任した三年前、ここでも扱ったと思いますが、いかに潘氏が卑劣なまでに機構の私物化を図ってきたか、アレニウス氏が五十項にも及ぶ文書で明らかにしたこともよく知られています。

 政府はただちに潘氏の発言の意図を事務局に問い質す予定であり、安倍首相が出席する九月の総会では改めてわが国の立場を説明するようです。加えて彼の解任を発議するよう各国に要請したいところですが、確か連合国には事務総長の解任や懲罰に関する規定がありません。

 しかし、いわば世界中から「阿呆」と思われているような人物から出たことによって、その発言の内容は意味を持たなくなりました。彼はもはや韓国国民にとって「お国の恥さらし」ではないでしょうか。

映画:終戦のエンペラー

皇紀2673年(平成25年)8月26日

【映画評】

 http://www.emperor-movie.jp/
 ▲映画『終戦のエンペラー』公式サイト (平成二十五年七月二十七日より公開中)

 平成二十四年製作の米国映画である。しかし主題は、大東亜戦争に於けるわが国初の降伏宣言から桑港講和条約の発効まで続いた連合軍による占領統治で、果たして先帝陛下の戦争責任を問えたか否かだ。

 ダグラス・マッカーサー司令官(トミー・リー・ジョーンズ)が厚木の飛行場に着いた時、日本軍兵士たちが彼らに銃口を向けることはなかった。それは、軍の一部が宮内庁職員たちを殺害してでも収録盤を奪い去ろうとまでした天皇陛下の玉音放送によってかなえられた連合軍に対する安全だった。

 この最初の場面が実は占領統治の全てを物語る。民意によって始まった戦争が、政治決断への介入はなさらないものと決まっていたはずの陛下の尋常ならざる御発言でついに終えることができ、そこへボナー・フェラーズ准将(マシュー・フォックス)の言葉が「われわれは支配者ではなく、解放者として見られるようにしなければならない」とかぶっていた

 だからこそ、天皇陛下の処刑を企む米政府中枢に対抗したマッカーサーの命を受け、フェラーズは陛下を処刑しなくて済むよう調査することになるのだが、同時に彼は自分たちを「解放者」にするべく、日本国民に対する「ウォー・ギルト・インフォメーション・プログラム(戦争への罪悪感を意識的に植えつける計画)」の策定に関わる。これが今日の「自虐史観」の誕生だ。そして皇室典範と憲法が連合軍によって勝手に書き換えられる。

 本作は史実を基にした創作の娯楽作品でありながら、占領統治の本音と建前を明るみにし、日本民族の本音と建前を紹介して、天皇陛下と、例えば神聖ローマ帝国などの皇帝陛下とでは、同じ英語で「エンペラー」と訳されるものの全く異質の存在であることを丁寧に描いた。

 私がかねてより申してきた通り、欧州の皇帝は権力者であり、ゆえに専制啓蒙なる建前を口にする者も現れ、しかしながら天皇陛下は祭祀を司られる「祈り」の御存在なのだ。それを本作では「信奉」と言っている。

 『ラストサムライ』などにも関わった奈良橋陽子さんのおかげで、皇居での撮影にも成功し、日本人役者の起用も進んだ。特に亡くなられた夏八木勲さんと、西田敏行さんが素晴らしい。夏八木さんの役は宮内次官の関屋貞三郎であるが、本作は関屋一族の取材協力を得たものと拝察すれば、なんとプロデューサーの奈良橋さんが関屋次官のお孫さんにあたるのだとか。

 英国出身で『真珠の耳飾の少女』などのピーター・ウェーバー監督の演出も的確で、同じく英国のスチュアート・ドライバーグの撮影は色彩設計から何から実によく出来ている。彼はジェーン・カンピオン監督の『ピアノ・レッスン』でアカデミー賞にノミネートされたキャメラマンだ。

 偽善的に登場する近衛文麿(中村雅俊)の描写は、本作と私とで歴史解釈の相違もあって気に食わないが、演出の見事さと言えば、まるでサスペンス映画のように原題の天皇陛下(片岡孝太郎)をラスト・シークエンスまで登場させず、やっと最後の最後であの歴史的な場面を再現し、陛下から「一切の責任は私にある。処刑するのなら私だけにして欲しい。日本国民が悪いのではない」との御言葉があったことを強く観る者に印象づけた点だ。

 米国はこの日本統治以降、一度たりとも占領統治に成功していない。最近ではイラクでの失敗が未だ遺恨を残し、わが国でのことが唯一の成功体験である。本作が製作された背景には、それを振り返る必要に迫られた米国の厳しい現実があろう。

 なぜあの時うまくいったのか。私たちにとって国家国体のそれ自体である天皇陛下を冒さずに済ませたことこそ、米国にとってうまくいった最大の理由のはずだ。しかし、皇室典範の書き換えや戦犯処刑の日付、十一宮家の臣籍降下がわが国をどのようにしてしまったかは、私たちが今現在見ている通りである。

 文=遠藤健太郎 (真正保守政策研究所代表)