菅直人VS小沢一郎

皇紀2670年(平成22年)9月1日

 どうやら菅直人?仙谷由人体制のほうが「負け」を認めなかったようですね。左翼弁護士(仙谷官房長官)が左翼活動家(菅首相)を担いだまま民主党代表(首相候補)選挙に臨むところを見ますと、小沢一郎前幹事長が勝とうが負けようが、年内に衆議院の解散総選挙があるかもしれません。

 なぜなら、菅首相が勝ったとしても、もし小沢一派が党を割って出ればそうせざるを得なくなりますし、小沢前幹事長が勝ったとしても、既に本人が「俺でよいのかを問う」と言ってしまっています(ここで仙石一派が出て行く? 小沢民主党と創価学会=公明党の連携?)。昨日、赤坂1丁目の某ホテルに集合した小沢一派の議員たちはそれも覚悟の上でのことでしょうか。

 恐らく早期解散で腹をくくっているのは小沢一派のほうに違いありません。選挙資金は必ず小沢氏が配ってくれます。だからこそ、悔しい仙石一派……ではなくて菅一派……いや、やっぱり仙石一派は、以下のような醜い行ないに出ています。これだから自民党のように「権力闘争」ではなく、中核派の「内ゲバ」に見えるのです。

 http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20100829-OYT1T00075.htm

 ▲讀賣新聞:小沢代表当時の資金配分を調査…菅氏側

 不透明な「組織対策費」なんぞと言いますが、小沢氏の集金力に頼って民主党がメシを食ってきたのは周知の事実ではありませんか。そうじゃないという民主党議員は、自分にまったく集金力のないまま歳費や政党交付金からの分配金でメシを食ってきたのですから、卑屈になる必要は全然ありませんが威張れるものではないでしょう。

 ならば仙石一派は、どうして小沢幹事長の秘書から寄付をするよう強要された(産經新聞)ことなどは追及しないのでしょうか。これは青木愛衆議院議員だけに留まらない話であるから、多くの新人当選組に汚泥を被せ(→政権交代を可能にした昨夏の大勝をぶち壊し)かねないことはしたくてもできない、というわけですか。これだから菅首相では勝負にならないのです。

 こんなことで一国の首相が決まってしまうのでしょうか。3年で3人の首相を誕生させ、かえすがえすも真打ち(麻生太郎元首相)を出すタイミングを間違えた(明らかに安倍晋三・福田康夫両元首相は要らなかった)自民党ともども、わずか1年と少々で3人の首相を誕生させるかもしれない民主党に何を期待してよいのか分かりません。

 したり顔で「最近の若者は内向的」なんぞとテレビで発言しているお歴々に私が申したいのは、かくも国家を語らない、すなわち世界に向かって日本がどういう国になるかも示さない政治家たちだらけで、誰が理想を語り、理想に憧れるものかというのです。

 8月27日記事「民主党ただいま内ゲバ中」で取り上げた『スタートレック』の世界とは、原作のジーン・ロッデンベリー氏による冒険への憧れ、理想への憧れによって構築されており、米国人の氏が何をその基軸としたかについては憶測を論じませんが、地球人が国家間の対立を克服して異星のヴァルカン人らと惑星連邦を設立した世界観への私の憧れは、まさに世界平和を理想とする本来のわが國體にあるからに他なりません。

 そのような未来の地球人に、機械生命体のボーグによる侵攻ドミニオン戦争(惑星連邦+クリンゴン帝国+ロミュラン帝国VSドミニオン+カーデシア連合)を体験させることで、物語は現下の地球上にあふれる数々の問題への提言をしています。

 日本は世界平和を目指す国家ではないのですか? ならば平和を乱す好戦的な国家や組織と戦って勝たねばなりませんが、仙石官房長官に手綱を握られた菅首相に出来るとお思いですか? 輿石東参議院議員会長や山岡賢次副代表らに囲まれた小沢首相に出来るとお思いですか? 戦って勝てもしない国家の経済、国民の生活が自力でよくなったりはしないのですよ!

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移動する権利を与える?

皇紀2670年(平成22年)8月24日

 今回は映画・映像作品ではなく、一冊の本をお薦めしたいと思います。英国の哲学者であり演説家でもあったエドマンド・バークが著し、半澤孝麿が訳した『フランス革命の省察』(みすず書房刊)です。「あ、難しそうだな」とおもわず逃げないで下さいね。

 私が何度となく取り上げてきたものではありますが、これが保守主義の基本哲学を最も容易に知ることができる書物ということになるでしょう。しかし、天皇陛下によって司られる祭祀を知ることのほうが最も容易とも言え、ゆえに「保守」なる文言は政治思想の道具に非ず、人間が人間として地球に生きる基本を指すのみであると私は書き続けてきました。

 バークは、本著で社会契約論に於ける契約の欺瞞を指摘し、批判しています。そのため、政治について多く触れられていますが、よく読み解けば基本哲学がはっきりと浮かび上がってくるはずです。

 現世の者のみの理性や意志、心情によって何ごとも変えられるとする革命思想が否定されるのは、受け継がれるものをないことにして現世の者のみですべてを貪れば、仮にも地球は不毛の星と化し、生命という生命が絶滅しかねないからに他なりません。そのような「やりたいようにやる」或いは「やりたいようにやらせろ」という個人主権を認めてはならないのです。

 さてさて、書きたいことが山のようにあって、つい長くなってはいけませんから、まず今回のお話しに絞りましょう。

 在日韓国・中共人のみ地方参政権付与法案(通称=永住外国人地方参政権付与法案)の賛成派でもいらっしゃる前原誠司国土交通相は、民主党の基本理念とも言える「国民の移動する権利を基本的人権の1つとする交通権」をべースに、交通基本法なる法案を成立させようと目下、省をあげて準備しています。

 http://business.nikkeibp.co.jp/article/manage/20100129/212456/

 ▲日経ビジネスオンライン:「交通基本法」がやって来る

 http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20100822-OYT1T00744.htm

 ▲讀賣新聞:交通基本法 問題はらむ「移動権」の保障

 自由で平等な状態を最大化すべく、個人が社会契約を締結することによって国家が成立し、その個人や集合体の人民こそが主権者という考えならば、奇遇にもまたぞろ仏国の「交通権」を模範とすればよいでしょう。

 そうすれば、讀賣新聞社の社説が指摘するように、地方の公共交通機関の不採算路線が廃止された場合、住民が権利の侵害を理由に相次いで訴訟を起こし、行政が混乱をきたすのも、何らかの革命を起こして更地にすることで乗り切るのでしょうか。

 いえ、これは地方に限らず、東京メトロの最寄り駅から徒歩3分の住民と、徒歩15分の住民では「交通権の格差がある」などと言われ、15分の住民が「うちから3分圏内まで地下を掘れ」と言い出せば、カネがいくらあっても足りません。

 いわゆる道路族の利権政治にも困ったものですが、これは新たな利権を創出するだけのものだとの指摘もあります。直言すれば「交通の自由はカネをバラ撒いて保障します」という新手の福祉利権であり、(本当に生活に困窮して助けねばならぬ者ではない)生活保護対象者や部落解放同盟らと組んで「鳩ポッポ小沢ナイナイ」(笑)する企画だったりするのでしょうか。是非とも前原国交相にお尋ねしたい。

 そもそも交通行政を含めた街づくりの権限を地方自治体に移譲するというわりには、予算は国交省が掌握し、地方の役所はただ煩雑な仕事をやらされるだけに違いありません。このような基本法によらず、例えばコンパクトシティ化を実現する知恵の集積と予算の確保があればよいではないですか。地方議員の皆様、ともに法案成立阻止に向けて立ち上がりましょうよ!

 というわけで、ついカネのお話しをしてしまいましたが、私は、個人の交通権なるものが社会契約の中で保障されることにより、国家が正当化されるなんぞという薄気味の悪い思想には、どうしても組することができません。この思想でない限り、交通権という言葉も概念も出てこないはずなのです。民主党政権は、やはり革命政府を生み出したということになるのでしょう。

 交通基本法というのは、これはとんでもないですよ。

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旧千円札の初代首相

皇紀2670年(平成22年)8月23日

 伊藤博文初代・第5代・第7代・第10代大日本帝國内閣総理大臣(ちなみに、現在の菅直人は第94代)が日韓併合に反対していたことはよく知られていますが、このほど、当時の大韓帝国を保護するのは「韓国の富強の実を認むるに至る迄」という伊藤公爵によって書かれたメモが発見されました。

 http://www.nhk.or.jp/news/html/20100822/

 t10013492101000.html

 ▲NHK:韓国併合 伊藤博文のメモ見つかる

 22日で日韓併合条約(韓国併合ニ関スル条約)が寺内正毅統監と李完用首相によって調印されてから100年を数えましたが、伊藤公爵が山縣有朋第3代・第9代首相らと対立して、前述のように併合に反対していたことはすでに周知の事実です。

 日露戦争終結後の第2次日韓協約(明治38年11月17日締結)による韓国の保護国化に伴い、日本政府は韓国皇帝(当時は高宗皇帝)の下に統監を置くこととなり、伊藤公爵は初代統監に任命されます。これについても、外交官の任命を良しとしてきた伊藤公爵が交渉難航の末に自ら務めるほかないと決意したことが、このメモから分かりました。

 伊藤公爵は、初代統監として韓国の民族衣装を身に纏ったり、李垠皇太子が日本への留学を希望した際には扶育をかって出ています。くしくも、李垠皇太子は伊藤公爵の反対した日韓併合に伴って日本のご皇族に準ずる待遇を受け、殿下の敬称を受けた上、梨本宮の方子女王殿下と結婚しました。

 このくだりは、平成18年にフジテレビが『奇跡の夫婦愛スペシャル』の第一夜で、『虹を架ける王妃』(方子女王殿下=菅野美穂、李垠皇太子殿下=岡田准一)と題してドラマ化しています。日本が目指した内鮮一体(→植民地支配ならありえない)のための政略結婚に始まりながら、真の日韓友好にその身を捧げられた方子女王殿下を描いていたように記憶しています。

 しかし、扶育した李垠皇太子が結婚するころ、伊藤公爵はもうこの世におられません。明治42年10月26日、露国蔵相との非公式会談のために訪れていた満洲国のハルビン駅で、安重根によって暗殺されてしまうのです。日韓併合条約は、まさにその翌年の8月22日に調印されました。未だ山縣公爵ら陸軍閥による謀略、すなわち韓(朝鮮)民族活動家だった安が併合強硬派にそそのかされて殺人の凶行に至ったとする説が根強いのは、こうした歴史の流れによるのでしょう。

 その真偽はともかく、安が併合反対派の伊藤公爵を殺害してしまいながら、併合を「不当な植民地支配だった」とする韓国で英雄扱いを受け続けているのは実に滑稽です。

 http://sankei.jp.msn.com/world/korea/100817/kor1008172149003-n1.htm

 ▲産經新聞:フランスは返還拒否 韓国からの“略奪文化財”

 この黒田勝弘記者による記事は、菅首相が宮内庁所蔵の朝鮮半島由来の文化財を「韓国に返還する」と言ってしまった問題について、仏国は韓国の返還要求を拒否し続けており、本来そのようなものなのであるから、日本も返還の必要はないと主張したいようです。

 産經新聞社のこの論調が最も間違っているのは、日本に所蔵されているのは併合条約の調印によって始まった皇民化政策・内鮮一体下の大正11年に日本本土へ移管したもの、或いは民間によって購入されたものであって、仏海軍艦隊が江華島に侵攻して王室文庫から奪っていったものとはわけが違うという点でしょう。

 かくして、文字通りの強奪品でも返さない欧米に対し、日本は「分け隔てない」ことを目指した皇民化で共有していた財産、民間で取引された財産でも本土にあれば返すというのですから、収奪を繰り返してきた欧米に向かって日本は「よく見ておけ!」と言ってもよいのですが、返還を言い出した菅首相にそのような信念も気迫もないからまるで無意味な行いに終わりそうです。あれでも「政治家」でしょうか。

 内閣総理大臣が自衛隊の最高指揮監督権を持つこと、防衛大臣は自衛官でないという当たり前のことを、ごく最近知ったばかりだと19日に吐露して平然としていられる呆れた菅首相には、まず植民地化と皇民化の違いを誰か教えてあげて下さい。

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ほ?ら出た!小沢待望論

皇紀2670年(平成22年)8月20日

 6月11日記事で、私は日本映画『善人の条件』(ジェームス三木監督 津川雅彦主演)をご紹介しながら、末尾に、今夏の参議院議員選挙結果がどうなろうと小沢一郎前幹事長待望論は噴出する、と書きました。

 メディア各社が、これほど分かり易く小沢待望論をそのままの文言で報じるとは……。

 http://www.fnn-news.com/news/headlines/articles/CONN00182910.html

 ▲FNN:民主党代表選の告示まで2週間 小沢前幹事長、鳩山グループの懇親会に急きょ出席

 http://sankei.jp.msn.com/politics/situation/100819/stt1008191213002-n1.htm

 ▲産經新聞:小沢氏、代表選出馬検討へ

 http://www.asahi.com/politics/update/0819/TKY201008190486.html

 ▲朝日新聞:小沢氏「互いに力合わせ」 鳩山氏研修会に160人参加

 小沢前幹事長が9月14日投開票の民主党代表選挙(1日告示)に出馬するかどうかは分かりませんが、たとえ出馬せずとも、待望論が出たように演出し、それをメディアが報じたことで目的は達成されています。もはや彼が「政治とカネ」の問題を無視して首相の座に駆け上がれるかどうかなんぞ、まったく話題の焦点ではないのです。

 いずれにせよ、菅直人首相はすでに「骨抜き」にされています。このような政党を与党にすべく、私たちが昨夏の衆議院議員総選挙から間違った投票行動に出ていたと、はっきり認めねばなりません。

 昨日記事に書きましたように、よもや「民主党にだまされた」では、今後も何度でも何処かの政党にだまされるでしょう。そもそも「自民党にだまされた」で始まったにすぎない政権交代でした。私たち自身が一体どの国の首相を選ぶべきなのか、その当たり前のことを真剣に考える時がとっくに来ているのです。

 だからこそ、皆様の選挙区に立った人物が何を国家政治の基軸としているか、それだけでも聞き取って下さい。決して難しくはありません。そこから、私たちがともに力を合わせて日本を素晴らしい国にしましょう世界平和は、すべての国家の安定がはかられねば達成しません平和を語るからこそ日本を愛するのです。まず自国を踏みにじるような「平和」は絶対にありえません。

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 「日本よ、立ち上がれ!」決起集会のご報告【追加】

 お待たせしました。では、どのような政治家が実は皆様の周りにおられるのか、そのほんの一例をご覧下さい。北山順一神戸市議会議員、白國高太郎神戸市議会議員、平沼グループ衆議院議員候補でいらした石原修三前兵庫県議会議員、たちあがれ日本参議院議員候補でいらした三木圭恵元兵庫県三田市議会議員の主張です。

 http://www.youtube.com/watch?v=j9n534rZGh4

 ▲「日本よ、立ち上がれ!」遠藤代表3 (約8分)

 http://www.youtube.com/watch?v=dJLZpHoJZOM

 ▲「日本よ、立ち上がれ!」4 三木けえ氏 (約3分)

 http://www.shinhoshu.com/2010/07/post-145.html

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今後も何度でもだまされる

皇紀2670年(平成22年)8月19日

 

 今回は『マルサの女』などの伊丹十三監督のお父様に関するお話しが出てまいります。ちなみに、この画像は糸井重里氏のほぼ日刊イトイ新聞?伊丹さんに。のものです。糸井氏による「伊丹十三特集」は非常に面白いですから、是非お読み下さい。

 今夏はとても暑い日が続きますね。

 先日、残念ながら私の親しい友人が熱中症にかかってしまい、肝を冷やしました。メディア各社は増加する熱中症患者を現象として報じ、意外に多い室内での発症を警告して、水分と塩分の十分な補給と、冷房を効かせるよう伝えています。

 ところが、昨夏までは「クールビズ」を推奨し、いわゆる地球温暖化の原因とされるCO2(二酸化炭素)の排出権なるものを設定してこれをカネに換えた「エコ」活動を礼賛して、冷房を効かせてはいけないと伝えてきました。ということは、目下のところ地球を守ることはどうでもよいようです。

 では、地球を守ろうとすると人間の生命を犠牲にしなければならないのでしょうか?

 実際、大いなる地球の自然環境を語る上で、産業構造の進化以前(約200年前)に比べておよそ0.01%しか増加していないとされる大気中のCO2濃度が、地球の自然環境そのものを狂わせてしまっていると結論づけられるかどうかについては、諸説あります。

 しかし、私たちはCO2の大量(?)排出こそが地球温暖化の主因だと聞かされてきました。これがもし、ウソだとしたらどうしましょう。また、化石燃料の大量消費に何の問題もないという説のほうが実はウソで、気づいた時には地球がとんでもないことになっていたら、どうしましょう。

 このような漠然たる不安は、人間と自然、すなわち地球とのかかわりに対する考え方に於いて何らの基軸を持たない人間であるからこそ発生し、つい「あっち」に振れたり「こっち」に振れたりするのです。

 日本民族は本来、祭祀によって人間と自然のかかわりを極めてゆるやかに説いてきました。当時初の対外公式文書とも言える『日本書記』もそこから始まっています。

 例えば祖先祭祀自然祭祀はまったく矛盾しておらず、ともに天皇陛下が司られるからこそ、鎌倉幕府だろうが室町幕府だろうが江戸幕府だろうが、ご皇室は決して排されなかったのです。

 天皇陛下を排してしまえば、自然を守ろうとすると人間の生命を犠牲にすることになってしまう、と本能的に日本民族は知っていたのではないでしょうか。物事を唯物的に、或いは善悪の二元論だけで定義づける発想であれば、地球の自然と人類生命の継承を保守することが互いに相容れない関係に墜ちてゆく、と。目下がまさにその時点なのかもしれません。

 では、なぜ日本民族はこの本能を衰退させてしまったのでしょうか?

 その答えは、ここで何度となく取り上げてきましたが、私の大好きな映画『赤西蠣太』などで知られる日本映画界の基礎を築いたお1人、伊丹万作監督が昭和21年4月28日に記された『戦争責任者の問題』(『映画春秋』昭和21年8月号掲載・『伊丹万作全集 第1巻』収蔵)にあるのです。

 近代戦に於いてわが国が初めて大東亜戦争に敗北したことを認めて以来、明治維新以降にも増して前述のような欧米の発想を取り入れ、それを新しく身に付けるべしとされたことから、次第に祭祀は古く無視してもよいもののように扱われ始めました。天皇陛下は、京都御所の外壁の高さからは想像もつかないほど臣民から遠い存在にされ、要・不要を公然と論じられるにまで貶められたのです。

 それでも「貶められた」という感覚を持っている人がどれほどおられるでしょう。大本営発表とそれに忠実だった朝日新聞社などの報道に触れ、大日本帝國軍の勝利を信じた先人たちと、現下の私たちは、まったく別のような存在だと誰が言いきれましょうか

 戦後「だまされていた」と言って平気でいられる国民なら、おそらく今後も何度でもだまされるだろう。いや、現在でもすでに別のウソによってだまされ始めているにちがいない、と問題を提起し、映画界の戦争責任者を炙り出すことに自分は一切関わらないと宣言した伊丹監督は、ゲートルを巻かなければ自宅の門から一歩も出られないようにしたのが政府でも官庁でもなく隣組や婦人会ら国民自身だったことを体験しておられたのです。

 一体どの口で、どの側に立って「戦争責任者」を言っているのか、と。私たちはこの時から、間違いなくもうすでに別のウソにだまされ始めていました。だからこそ現下の「日本国民」とされている人々は、エコを言えば冷房を切れと言われ、熱中症予防を言えば冷房を効かせろと言われるという、その1年越しの矛盾にも気づかず、何ら基軸を持たずに漂流するように暮らしているのです。

 私が「保守」「祭祀」「天皇陛下」を書き続けるのは、日本民族のみの優位性やら日本国家のみの全盛を期待して扇動しているのではなく、このような暮らしからの脱却、すなわち人間としての基軸を持つことでしか人間や地球が「だまされる」社会構造を打ち砕くことはできないと申したいのです。

 そう、現下の人間は人間をだまし、母なる地球をもだましているのかもしれませんよ。

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