伊勢の神宮だけじゃない!
わが国にあって(明治時代に廃止されましたが)朝廷が神階をつけなかった神宮は三つございます。律令制下の『延喜式』神名帳や明治の近代社格制度の(神にまで位をつけた)是非はともかく、それは伊勢の神宮、日前神宮、國懸神宮です。神宮は「伊勢神宮」「お伊勢さん」と親しまれ、大変有名ですが、皆様あとの二つはご存知でしょうか。
日前神宮は「ひのくまじんぐう」と読み、和歌山県和歌山市にあり、私たち地元では「日前宮=にちぜんぐう」と親しまれ、徒歩一分圏内に和歌山電鐵貴志川線の日前宮駅があります。この和歌山電鐵は最近、猫の駅長で有名になり、「たま電車」や「いちご電車」「おもちゃ電車」などが走る楽しい路線です。JR和歌山駅から乗車できます。
もう一つの國懸神宮は「くにかかすじんぐう」と読み、実はこれも和歌山県和歌山市にあり、しかも日前神宮と同じ境内におわします。正確には、この二社を総じて「日前宮」と呼んでいます。
http://www10.ocn.ne.jp/~hinokuma/
▲日前神宮・國縣神宮(日前宮)公式サイト ※ 画像はこちらから
日前神宮の御主祭神は「日前大神=ひのくまのおおかみ」で、一説には「天照大神」の別名とありますが、さはともかく「日神」をお祀りした特別な神社なのでした。國懸神宮の御主祭神は「國懸大神=くにかかすのおおかみ」です。
両社の御神体は「日像鏡=ひがたのかがみ」と「日矛鏡=ひぼこのかがみ」で、これは天照大神が天岩戸に御隠れになった際、「石凝姥命=いしこりどめ」が作ったとされる「八咫鏡=やたのかがみ」(神宮内宮に奉安)と同等のものと言われています。
太陽が生命の維持に欠かせないことを当時既に明確に認識していたわが民族の書『日本書記』には、日像鏡・日矛鏡が八咫鏡より先に鋳造され祀られていたことが書かれていますが、これほどの別格社が規模を小さくしてしまったのは、天正13年の豊臣秀吉による紀州征伐で、破壊されてしまったためでした。
その再興は、元和5年に徳川頼宣が紀州藩五十五万五千石の初代藩主となるのを待たねばならず、大正8年から15年の大改修で現在の姿になったそうです。
毎年夏には「薪能」が神楽殿にて催され、当然初詣の人出は県下最多ではなかったかと思います。皆様も是非、和歌山へお越しの際には、かわいい「たま電車」に乗ってわずか二駅、日前・國懸神宮に参拝されて下さい。