民主党に拉致解決意志なし
昭和62年に発生した大韓航空機爆破事件の実行犯だった金賢姫元工作員の来日(23日午後に韓国へ帰国)を語るに於いて、この映画は欠かせないでしょう。それは、平成18年製作・公開の米国映画 『めぐみ?引き裂かれた家族の30年』(クリス・シェリダン監督)です。
北朝鮮による拉致事件の存在をまったく知らない世界中の人々に、戦時下でもないのに拉致された横田めぐみさんのご家族の様子をただ見せるだけで、事件そのものの非道さを訴える(啓発する)ことに成功しています。むしろ本作は冷静なまでにそれだけを映し、製作者の主観として政治色を一切排しました。上映時間も短く、見やすく作られています。
むろん日本人が拉致事件を知らないわけはありません。或いは、知らない・忘れたでは困ります。同じく拉致被害者の田口八重子さんのご家族や、横田さんのご家族が、金元工作員の20年以上も前の古い情報にさえすがりたい気持ちは分かりますし、今回の来日が拉致事件の解決(拉致被害者の全員即時帰国という原状回復)を目指す国民的意志を再興させる機会になったかもしれません。
しかし、やはり新しい情報は何もないのです。今回どうしてもこれを書かなくてはならないと思ったのは、特定失踪者問題調査会の荒木和博代表が22日、中井洽拉致問題担当相の呆れた行状を公表したためでした。
http://sankei.jp.msn.com/world/korea/100723/kor1007230054003-n1.htm
▲産經新聞:【金元工作員来日】「のんびり食事、許されるのか」特定失踪者の調査団体代表
金元工作員の来日について、日韓両政府が確認し合ったのは本年2月の鳩山前政権下でした。このときから、拉致事件の解決に関心がないとされる菅直人首相の誕生とは何の関係もなく、民主党主導のこのほぼ意味のない見せ物が計画されたのです。民主党による韓国政府との政治的結託と申してもよいでしょう。
民主党内で拉致事件の解決に関心が高いほうとされてきた中井担当相がこの程度の見せ物しか計画できずに威張っているのですから、もう無理です。もはや大韓航空機爆破事件からではなく、今回の来日合意から金元北朝鮮工作員が実は韓国の国家安全企画部(現・国家情報院)の工作員だったかもしれないと勘ぐられるのではないかとも思えます。
このようなことでは、かえって拉致事件解決への国民的意志がそがれかねません。拉致被害者を取り返すべく北朝鮮のどこの誰と交渉すべきか、目下日本の政治家や外務官僚は把握できていないのです。いわゆる「北朝鮮が焦っている」とか「米国が怒っている」と言ったときの、「どこの実務責任者?」という疑問に外交レヴェルで答えられません。
まるで警察が交渉していた犯人グループの主犯を見失って拉致・誘拐の原状回復ができなくなっているようなものです。子供を拉致・誘拐された親の身にもなって下さい。それで昔の犯人グループをよく知る人物とやらをメディアに登場させ、公費で遊覧飛行させて何になりますか? 警察に対してなら「けしからん」とお怒りで、民主党になら「これも1つのやり方」とご納得ですか?
日本政府は、北朝鮮が思わず交渉人を差し向けてくるような致命的な対朝制裁を今すぐ行うべきです。現在までの制裁を可能にした「対話と圧力」という虚構はもう通じません。二度と北朝鮮が弾道弾発射実験などできなくなるような、本当はもう皆がよくご存知の物流を完全に遮断して下さい。中共や露国も、そこで初めて日本政府の覚悟を思い知るでしょう。思い知らせるのです。