皇統の将来と危機で大論争
多くのいわゆる「特撮映画」で特技監督だった中野昭慶氏が先月二十七日、亡くなっていたことが分かりました。最近、著名人の訃報が相次いでいますが、衷心よりお悔やみを申し上げます。
中野監督は、昭和四十八年公開の映画『日本沈没』、『連合艦隊』や昭和五十九年公開の『ゴジラ』などを手がけました。特撮映画好きの間では「爆発の中野」といわれ、一瞬青い閃光が走ってから大きな火球が炸裂するといった演出をします。
先人の円谷英二監督が亡くなり、映画産業が斜陽化してから、本来予算のかかる特撮を任されることになった(そもそも特撮志望ではなかった)中野監督ですが、その圧倒的表現力は、燃え盛り崩れゆく街や、沖縄防衛に後一歩届かず鹿児島県坊ノ岬沖に散った戦艦大和を主人公にしてしまうほどでした。
また、北朝鮮が怪獣映画『プルガサリ』を製作すべく、中野監督率いる当時の東宝特撮班を招聘した話も有名です。ちなみに、本作の申相玉監督は、韓国から北朝鮮に拉致されて製作させられ、撮影終了後に米国へ亡命しました。よって監督の名義変更がなされています。日本人拉致事件の主犯である金正日軍事委員会書記(当時)が製作総指揮した作品でした。
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さて、前回の衆議院議員総選挙でもさんざん申しましたが、ほとんどの選挙区で公明党(創価学会)は、もはや自民党公認候補の応援などしていません。政権維持のために連立を組むべき相手ではなくなっています。
特に「創価学会の支援などいらない」と腹を括った小野田紀美候補(岡山選挙区)に対しては、露骨な対立候補への応援を仕掛けているほどです。集票力が低下しているともいわれる創価との「縁切り」こそ、自民党の課題かもしれません。
そのような選挙戦の最中、読者からのご質問にもありましたが、参政党の神谷宗幣候補(元大阪府吹田市議会議員)に対し、竹田恒泰氏が「女性天皇」の是非を問うて議論になっています。
私の答えは以前から申していますように、まず現行典範(占領典範)ではなく皇室典範を天皇陛下に御返しすることが先です。
その上で、首相程度が議長の皇室会議ではなく、皇室のことゆえ天皇陛下に御決めいただく皇族会議を復元し、国史に従って、皇統は男系男子を原則としながら(親王殿下が御即位になる適時の宝算まで待たねばならないなどの事情により)男系女子の御即位を可能とするかどうか御議論いただかねばなりません。
男系女子の天皇陛下は、過去十代八方おわします。すなわち神谷氏らが「女性天皇」を認めたからといって、何かとんでもなく国柄を壊すようなことをいったわけではありません。
国柄を壊すのは、俗に「女系」と「天皇」という結びつかない言葉を結びつけた存在(女系男子? 女系女子?)を容認する態度です。これでは、神武天皇以来の皇統ではなくなってしまいます。
竹田氏は、今上陛下にあらせられましては愛子内親王殿下の御即位を願われているのではないか、或いはそこから皇統が文字通り崩壊し、日本が消滅する将来を危険予測しているのではないでしょうか。その危機感はごもっともです。
つまり、お二人とも間違ったことは何もいっていません。ただ、竹田氏は皇室破壊工作の危機を述べ、神谷氏は、国史の事実に従って将来可能な選択を述べたまでで、ご本人曰くの「それ以上でもそれ以下でもない」と思います。
一つ予測するとすれば、「女系」「天皇」と「女性天皇」の違いも分かっていない人びとに向け、参政党がその認識を改めるよう議論を喚起しているのではないかという気がするのです。
また、皇統にまで持ち込まれる「男女平等」という無関係な権利闘争を払いのけるべく、典範改正の選択として男系女子を挙げたような気もします。
とにかく非常によくないのは、こうした議論でいちいち参政党の揚げ足を取り、どうせすべて思い通りの理想的政党も政治団体も存在しないのに、保守層の投票行動が散漫化(仲間内対立で消耗)することこそ、極左・対日ヘイトスピーチ(日本憎悪差別)層がほくそ笑むことはありません。経済も外交・安全保障も何もしない岸田政権に喝を入れる(政権は自民党でも「おまえじゃないよ」と示す)こともできないでしょう。
ちなみに、高市早苗政務調査会長も女性天皇の議論を可としています。皇統の存続によってわが国を護り抜かねばならない今、神谷氏も指摘している通り旧宮家の皇統復帰は必須です。旧華族の皇位継承権者の御子息にも、再びそれを明記して御控えいただくべきでしょう。
それだけいわば「手数」を拡げてなお男系女子に御即位願うような状況は、実はどなたも想定していないと思います。それなのに「女性を認めるようなやつらには投票しない」といい出してしまえば、保守層に対する世間(特に男女平等だと勘違いさせられている人びと)の一方的あらぬ誤解を招き、あるべき皇統護持の議論さえ失いかねません。
創価の支持など「いらぬわ」と構えた小野田女史のごとく、私たち国民ももっと大きくドーンと構えて「女系? 君は阿呆かね」くらいいい放って国を護りたいものです。
追伸)以前に竹田氏と何度かお会いしていますが、その場に神谷氏もおられました。国史研究に於いてそう違った認識をもって対立しなければならないことはないと思います。どうか皆さんも穏便にご対処願います。