ペロシ氏訪台と安倍元首相
賢明な読者の方なら、日台交流について必ずといってよいほど取り上げる私が、超党派の「日本の安全保障を考える議員の会」から四名が七月二十七日から三十日まで訪台したのを静観したことに、ひょっとして首を傾げておられたかもしれません。
これを取り上げるのは、米連邦議会のナンシー・ペロシ下院議長(民主党)が本当に訪台するか否か、彼女が「台北の地を踏んでからだ」と決めていたのです。
これを書いている現在二日午後十一時四十三分、ペロシ議長は、本当に台北に到着しました。ニュート・ギングリッチ下院議長(共和党)が平成九年、米台断交後初の訪台を果たしてから、実に二十五年ぶりのことです。
私が自民党の石破茂元防衛相、浜田靖一元防衛相、長島昭久元副防衛相、日本維新の会の清水貴之参議院総務副会長が訪台したことを一旦無視したのは、本来あの日に台北の地を踏むべき人たちではなかったからです。
この面面を見て「わが国は腰砕けたな」と無念な想いに駆られつつ、ペロシ議長の訪台が実現すれば、その時こそ申さねばならないことがあると我慢してきました。
実は、三十日に訪台するのは、安倍晋三元首相のはずだったのです。
李登輝元総統のご命日に合わせ、安倍元首相が謝長廷台北駐日経済文化代表処代表(駐日台湾大使に相当)の招聘を快諾したのが、暗殺されてしまう一週間前のことでした。
これを「何としても潰せ。絶対に安倍の訪台だけは許すな」と警戒、妨害工作に出たのが中共です。
そして安倍元首相は、公安も把握していたこの事態の中、奈良県警察の異様なまでに手薄な警備体制によって暗殺されてしまいました。読者ご指摘の「元任期付き自衛官との警察発表が異常に早すぎる」のも念頭に、ついに私も七月二十八日記事で、逮捕された容疑者単独の凶行ではないようなことをほのめかしました。
実は、統一教会(世界平和統一家庭連合)は、台湾でも盛んに活動しています。創価学会が公明党を作り、今やまんまと与党に収まったがごとく、台湾の統一教会は平成二十六年七月二十日、天宙和平統一家庭党という政党まで作っているのです。
創設者の文鮮明前総裁が北朝鮮と繋がっていたことから、軍事政権下で「反共」を掲げただけの詐欺カルトは、共産党以外の「宗教」を認めないはずの中共とも大いに繋がりがあります。
やはりあの暗殺事件は、関係を切った安倍元首相をそもそも恨んでいた統一教会自体が喜んで工作員を動員した可能性を否定できません。或いは、中朝の工作員が統一教会を利用したか、とにかく中共が「絶対指令」とした安倍元首相の訪台阻止は、確かに実行されてしまったのです。
安倍元首相の訪台計画が全くの出鱈目でないことは、加賀孝英氏のこの記事でも明らかで、もう一つ、国会で予定されていた安倍元首相の追悼演説に与野党揃って異論を唱えて騒ぎ、これが阻止された経緯も書かれています。
恐らくペロシ議長の亜州歴訪に間に合わせるよう、岸田文雄首相が人選を急いだ(野党人選案を待てずに甘利明前幹事長に決めた)ことが仇になったのかもしれません。
しかし、それとは無関係なまでに騒ぎ立て、中共から「国葬上めろ」を掲げにやってきた低級工作員がなりふり構わないのも、まさに前出の「絶対指令」に駐日工作員たちが従っているからなのでしょう。「上めろ」の正体も理由も、これではっきりしました。
中共の共産党人民解放軍が台湾を侵略することは、絶対に許されません。
そう簡単に手を出せない習近平国家主席の焦りが、米中の緊張と安倍元首相の訪台を妨害したことに表れています。
私たちの元首相を殺したのです。もう中共そのものを許してはなりません。岸田首相は腹を括って、まず林芳正外相と福田達夫総務会長の首を斬ってください。
それは小さな一歩にすぎませんが、もはや私たち国民は、安心して夜も眠れない状態に陥っているということを、私たちの首相が正しく認識しなければならないのです。