集団的自衛権、閣議決定へ

皇紀2674年(平成26年)7月1日

 http://www.afpbb.com/articles/-/3019144?ctm_campaign
 ▲AFP:シリアとイラクの武装勢力、イスラム国家樹立を宣言

 六月十四日記事で、私は「回教スンニーの過激派『イラクとレバントのイスラム国(ISILまたはISIS)』が新しい回教国家を建造してしまうかもしれない」と申しましたが、本当にそのとおりに彼らは宣言しました。

 米軍が大規模派兵できなかったのは、こうなることを知っていたからです。だからこそ「中共は『米国弱体の隙に……』などと勘違いしないほうがよい」とも申しました。

 また、「これをイラク国内の問題と思ってはいけない」「いわばシリアで鍛えられた戦力がいよいよイラクを掌握しようというところまできた」とも指摘し、彼らはこれまたそのとおりに建国範囲を設定したのです。

 少し前に読者の方が、安倍晋三首相とイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相との首脳会談を取り上げ、イランを怒らせた外交交渉を批判されましたが、このとき安倍首相の頭は、露国のクリミア半島問題に対処するよい方法を探ることで一杯で、米国と距離をとってでも対露制裁に加わらなかったイスラエルとの諸合意は、利口な策だと考えられました。

 しかし、事実としてイラン(義国)に対日非難をさせる口実を与え、私がかねてから「米国と距離を置いてでも守れ」と主張してきた日義関係に亀裂が走ったのです。

 そのことと、本日閣議決定される予定のいわゆる「集団的自衛権」行使容認(解釈改憲)問題は繋がっており、今やすっかり一例として定着したホルムズ海峡の機雷除去作業に自衛隊が戦時から関わる可能性を、自ら創出してしまいました。

 自衛隊は、必ずイラン軍に殺されます。独国軍も、アフガニスタン攻撃に「治安維持活動」として独国基本法の解釈変更で臨みましたが、そこは兵士五十人以上の戦死者を出す戦場だったのです。この「戦場に派兵」という事実を、アンゲラ・メルケル首相は四年間も隠蔽しました。

 安倍首相は、おそらく自衛隊員にも同じことをするのでしょう。占領憲法(日本国憲法)のままでそうすることは、まさしく自衛隊員を、私たち国民を騙す行為にほかなりません。「やむをえない」ではすまないのです。

 わが国政府は、現段階で中東情勢を見誤っています。この新しい「イスラム国」の登場にも決して対処できません。

 いつまでも占領憲法政治をやっていると、中東諸国にまで弱みを握られ、原油輸入もままならなくなるでしょう。そのとき、米国政府はわが国を助けません。「個別」も「集団」もない自衛権の行使で、国際情勢と向き合わねばならないのです。

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『集団的自衛権、閣議決定へ』に4件のコメント

  1. ゆき:

    ガイドボランティアで、オーストラリア人を案内した時に、子供は兵士としてアフガンにいると言った。当然のように。太平洋戦争時、母は豪州軍は怖いと言っていた。彼ら英豪米などの国は常に一体である。昔も今も変わらない。イランは今でこそ野蛮なテロ国家のように考えられているが、パレビー時代、テヘラン大で政府の諜報組織に急襲され、行方不明になった学生が大勢いると「パレビー恐ろしや」とクルド留学生から直接聞いたことがある。この時代は三笠宮様が会長で、道楽のようにペルシア文化を勉強する殿様出身の方や学者で構成される学会が幅を利かせていた。米国は革命が起きると傀儡がつぶれて、米国の顔をつぶされたことが許せないのか、ことあるごとくイラン=テロ国家を強調してきた。女性は革命後、プラス面で、ホテル官庁観光業で活躍し、大学生も多く、自動車も運転する。知識層などの弾圧は米国との蜜月時代にも盛んに行われていたことだ。シリアはアラビア語が公用語だが、首都ダマスカスではペルシア語が通じるらしい。イランの影響力が強いわけだ。同時にサウジアラビアからテロリストに資金が流れているのも事実だ。タリバンとの関係も良好らしい。これを米国がそのままにして解決などできるわけがない。
    中東は戦火が絶えない。このような時に米国によって日本がオ‐ストラリアのように忠犬ハチ公にされたら、口実ももはやなく、後戻りもできない。
    日本の政治家は自分の子息を率先して戦地に出す覚悟があるのだろうか。嘘の多い安倍さんは信頼できない。米国がしたたかすぎる。故後藤田さんのような政治家がいないものかと思う。

  2. みやこわすれ:

    我が国を徹底的に、名実ともに、アメリカに売り渡すという宣言のようにも聞こえます。
    正当防衛の権利すら認められず、竹島・尖閣・千島が奪われたままで、自衛隊だけはアメリカのために利用される。
    経済のみならず、軍隊もアメリカの鎖に繋がれる。 これを『トモダチ』というつもりでしょうか。

    少子化の原因も、武装しない国では安心して子育て出来ないという不安が根本にあると思います。
    いざという時に守ってもらえないところは、難民キャンプと同じではありませんか。
    家族を守らないお父さんには存在意義はありません。国家も同じです。

  3. まいこ:

    遠藤先生の情報量と分析力にはつくづく敬服しますゞ
    ご存じですか?遠藤先生のWikipediaが保守派編集にカラんでくる変な人に急に削除依頼され
    中国が東宮批判工作してると先生が都議会で発言されたことが書き加えられたとたん
    不合意のまま削除されたんです!!
    腹立たしいったらありゃしない!

  4. ゆき:

    今月号の文春に載っている池内氏の大戦後の米国や同盟国についての意見は面白いですね。日本は45年は敗戦国であったが、(ソ連崩壊)89年は勝者に成り代わった。米国のドル、英語、国際法、軍事同盟などの世界を優位に支配するシステムに乗って最大受益国になったのは独日であると。米国に取り、ウクライナやイラクはさして重要ではないが、この周辺にいる友好国が米国の動きに不満を持ち、離脱するのを防ぐために面倒を見てやる必要があると述べている。イランは米国の価値観から脱し独自のイスラム規範による国家を樹立した結果、湾岸諸国、イスラエルが脅威を覚えるようになった。そのまま放置できない。イラクの国境線を引き直そうとする過激派ISISの存在を容認すれば、米国の描く中東の秩序は崩れる。ロシアも中国も米国と違うシステムを取り、反目していても米国に代わり、世界的標準と言えるシステムを表示することはまだできない。やはり米国にはまだ敵わないのだと。

    戦火の絶えない中東に日本が軍隊を出すのを米国は今か今かと待ちかねているように私は思う。
    米国に基地を貸し、軍隊維持費を負担し、多量の債権を買い、日本は随分貢献しているのに、なぜここで一気に米国に寄ってしまうのか。イスラムという国境のない集団を敵に回した米国と心中するつもりなのか。中国もウィグルとの確執でテロの標的になったと思う。イスラム圏で手を汚していない日本は軍事進出に手を貸すのはやめてほしい。