民主が遺した防衛大綱の難

皇紀2673年(平成25年)9月19日

 http://sankei.jp.msn.com/politics/news/130916/plc130916……
 ▲産經新聞:自衛隊で内紛勃発 対中有事めぐり四分五裂

 産經新聞社が「防衛オフレコ放談」と題する連載の十六日配信分で暴露した通り、防衛省・自衛隊の内部では目下、年末に予定する「防衛計画の大綱(防衛大綱)」改定を巡って揉め事が起きています。

 防衛大綱の改定は、昨年末の第二次安倍内閣発足直前から言われてきたことで、前民主党政権下の平成二十二年十二月に策定されたものは、この時から「間違いなくごみ箱行き」と省内でも目されてきました。「国家十年の計」といわれる大綱が、たった二年で用無しになったのです。

 その背景には、民主党の大綱がいわば「ど素人」の介入によって策定されたものだったという、特に制服組(現場自衛官)の怒りと呆れがあり、防衛相と財務相を中心とした関係閣僚会議に国際大学の北岡伸一学長のような安全保障を専門としない政治学者をわざわざ潜り込ませ、彼らの言うなりにまとめさせたということがあります。

 ところが安倍晋三首相は、盛り込むべき戦略の内容を議論する有識者会議の座長に、またもや北岡氏を充ててしまいました。これには制服組も愕然としたでしょう。安倍首相の真意は今もって分かりません。

 いずれにせよ、北岡氏が再び前の大綱の「動的防衛力」を口にし、自衛隊の編成や装備に口を出せば、それが本来は運用と機能の「夢物語」でしかないため、議論が全くかみ合わなくなるでしょう。

 安倍政権が改定で示す基本方針はやはり「統合運用」であるべきで、それに基づいて必要な部隊編成と装備の数量をはじき出すのが筋です。

 しかし、ここへ来てかつての陸軍省と海軍省の対立という悪夢を彷彿とさせるような内紛が、陸上自衛隊と海上・航空自衛隊で起きています。沖縄県石垣市尖閣諸島に代表される領土・領海・領空防衛に於いては、当然海自と空自が主戦力であるにもかかわらず、陸自は大綱での過小評価に伴う予算分配の縮小などを予想して「陸自も入れろ」と怒っているらしいのです。

 制服組は「統合防衛戦略」を策定し、第一級の戦略文書とするつもりですが、今度はそこへ背広組(内局の防衛官僚)が制服組の権限拡大を嫌って反対してきました。背広組はかねがねこの調子であり、田母神俊雄元航空幕僚長もこの原理で嫌われて組織を追われたようなものです。

 「わが国にとってもはや朝鮮半島は重要でなくなった」ということをご説明した時にも申しましたが、現在は陸戦が中心ではなく、中共の人民解放軍が侵略してくるのも艦船や戦闘機が中心で、防衛の概念としては海自と空自で対処します。

 一方、上陸でもされれば、或いは同時多発的侵略行為で破壊活動(テロリズム)を仕掛けられでもすれば、陸自は私たち国民に最も近いところで私たちの身の安全を守るために行動することになるでしょう。

 私はそこまで大綱に入れても、統合運用を目指すのであれば差し支えないと思います。大東亜戦争下の過ちを繰り返さないためにも、統合運用の方針を明確にすべきであり、一刻も早く占領憲法(日本国憲法)の有効状態から私たち国民と防衛省・自衛隊を解放すべきではありませんか。

 このような内紛が起きるようでは、中共のとてつもない謀略に決して勝てません。昨日記事では外務省のはたらきを取り上げましたが、防衛省こそ現場の役割を果たすべきであり、占領統治体制の継続のまま防衛権の議論をしのごの始めるのか、そこからの脱却を実現させて自動的に防衛権を手にするのか、安倍首相は「戦後レジームからの脱却」を胸に秘めた為政者です。必ずや後者の自然な道を歩むものと期待し、且つ要望します。

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