自民党よ、どこまで国売るか
自民党の党紀委員会は四日、所属議員三十九名に対して政治倫理に係る事案の処分審査を決定しました。最も重い離党勧告は、清和政策研究会(清和会)の塩谷立前座長と世耕弘成前参議院幹事長、一年間の党員資格停止は、下村博文元文部科学相と西村康稔前経済産業相、六か月の党員資格停止に高木毅前国会対策委員長などとなっています。
党則で最も重い処分は「除名」ですが、離党勧告であれば次の選挙で無所属になるものの、他党へ移る、或いは新党を立ち上げない限り当選後に復党できるでしょう。ただ、このような処分を受けた者が党総裁選挙に立候補することは難しくなります。
三月十八日記事で申した世耕参議院議員(和歌山選挙区)を潰すための党内工作は、将来の首相を目指して衆議院への鞍替えを模索した世耕氏からその目標を奪いました。工作側にすれば、二階俊博元幹事長(和歌山三区)に引退宣言で先手を打ってもらい、まんまと世耕氏を潰し終えた、というところでしょう。
これで岸田文雄首相は、既に私たち多くの国民から見捨てられた自身の政権をさらに延命してみせたのです。もうこの者に、かつて党内でも「よい」とされた人柄さえ残っていません。何の取り柄もない「残りカス」です。
自民党本部では同日、その岸田総裁の直属機関である「安定的な皇位継承の確保に関する懇談会」が開かれ、前回出た女性皇族御成婚後の皇籍維持論に続き、その上で今回、旧皇族男系男子の皇統復帰案が議論されました。
会長は麻生太郎副総裁(末妹は寛仁親王妃信子殿下)ですが、事務局長は、あの悪名しかない木原誠二前内閣官房副長官です。まさに「どこの馬の骨ともわからぬ者」が皇族について議論していること自体が(占領統治以前なら)不敬罪でしょう。
自民党自体の党紀は一体どうなっているのか、と指弾したくもなります。誰も「皇室会議(莫迦でもなれる首相が議長)ではなく元の皇族会議(天皇陛下が議長)でお決めになること」「いや、そもそも正統典範(元の皇室典範)を天皇陛下に御返しして、話はそれからだ」とは言いません。
さらに同日、衆議院総務委員会では、三月二日記事で「内情複雑な」と言及した日本電信電話株式会社等に関する法律(NTT法)の改正案が通ってしまいました。このまま成立してしまう見通しです。
何が「内情複雑」なのかと申せば、甘利明元経済産業相に特命委員長を任せていたNTT法改正の党内審議そのものが「総務省を経産省が監視する」ような意味合いの強いもので、来年の通常国会でNTT法廃止を決めることが既定路線になっています。
一方で、NTT以外の通信事業者は、軒並みこうした党の動きに反対しており、こうした声を背負って総務省がどう巻き返すか、といったところです。彼らが注目している問題の焦点は、NTTが外国人に操られるか否かではありません。
NTTに課されている重要な通信設備の譲渡制限(現行法)がなくなれば、他の事業者が電気通信事業法(総務省)に基づく公正な貸し出しを受けられなくなり、携帯電話事業もままならなくなります。また、電電公社時代からの「全国一律の電話サーヴィス(現行法)」がなくなれば、不採算な地方から電話が消えるかもしれません。
その電電公社から引き継いだ洞道などの国家的資産といい、全国一律サーヴィスといい、外国人役員が「維持ハ不採算デスネ」「日本人ニハモッタイナイアルヨ」などと言い出せば、先人たちが二十五兆円(KDDIの指摘による)もかけて築いたものが一瞬で崩れ去るのです。
そもそも国有鉄道といい昭和の民営化が正しかったのか、実は平成の郵政民営化を見ても大間違いだったのではないか、といった検証が党内で何一つされていません。
その先を急ぎ始めた岸田政権の背後には、防衛費のために資産を売却するという聞こえのいい言い訳につきものの「米民主党政権」がいます。国際金融資本に狙われていることが明白なまま、NTT法の廃止に賛成するわけにはいかないのです。