マレーシア航空の悲劇

皇紀2674年(平成26年)7月20日

 http://www.afpbb.com/articles/-/3020876
 ▲AFP:ウクライナでマレーシア航空機撃墜か、295人全員死亡の情報

 まずは、衷心よりお悔やみを申し上げます。

 マレーシア航空(MH)では、本年三月にもクアラ・ルンプール(KL)発北京行きが消息を絶ち、行方不明のままです。私もKLへ行くために利用したことがありますが、MHは三年連続で赤字に転落しており、経営難に陥っています。

 昨日記事で少し触れましたが、墜落現場の様相は、地対空弾による空中爆発ではなく、まるで不時着に失敗したようであり、AFPが報じているほど多くのご遺体はばらばらになっていません。

 ウクライナ東部ドネーツク州では、反政府派(親露派)がウクライナ軍用機二機を撃墜したばかりで、しかしながら彼らが宣言した「ドネーツク人民共和国」は、州全体の掌握にまで至っておらず、組織としても極めて脆弱です。

 それでも地対空弾の発射装置「ブーク(BUK-M2)」を保有していたのは間違いなく、目下露国軍に慌てて返却するような動きも見せていますが、おそらく露政府の激しい怒りを買ったのではないでしょうか。少なくとも本件にウラジーミル・プーチン大統領は関係していません。

 「反政府派による民間機への誤射」という報道は、力づくの体制変更後に就任したペトロ・ポロシェンコ大統領による「撃ったのは反政府派」という断定に基づいており、状況は確かにそのように見えるのですが、私たちがそう思い込むのはまだ早いでしょう。

 と申しますのも、あらゆる情報戦と武器弾薬を駆使してウクライナの体制転覆に成功した現政府は、それほど露政府より信用できる存在なのか、ということです。露国への不信を隠さない方もおられますが、あまりにも都合よく民間機を犠牲にされたようにこそ見えませんか?

 MH十七便(ボーイング777-200ER)は、左翼側のターボファン・エンジンから火を噴いているため、熱源探知の赤外線誘導弾によって撃墜された可能性があり、ならば必ずしもブークが「犯人」ではなくなります。

 露国からの情報をすべて信じるわけではありませんが、彼らはウクライナ管制による不審な動きを指摘しており、MH十七便のすぐ近くをウクライナ軍戦闘機二機が飛んでいたという情報を得ているようです。これが事実であれば、赤外線誘導弾を犯人とする説明がつきます。反体制派は、自分たちが誤射してしまったと思い込まされているかもしれません。

 大切なのは、一時の激情で外交判断を誤ってはいけないということであり、陰謀の類いを妄信するのでもなく、まずあらゆる可能性を排除せずに事実を特定していくことです。

 二百九十八名もの人の夢も希望も奪い、革命や紛争の正当化を図られるのは我慢なりません。決して許してはならないのです。

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