日露首脳会談、苦しい一歩

皇紀2676年(平成28年)11月21日

 十五日から十七日に来日していたマレーシア(馬国)のナジブ・ラザク首相兼財務相に対し十九日、首都クアラ・ルンプールで数万人規模の退陣要求デモが起きました。

 主導したのは、政治腐敗の一掃を掲げる非政府組織を束ねた「ブルシ(清潔)」ですが、ここでも何度か取り上げた親中派のナジブ首相の巨額の公金流用疑惑(政府系投資会社「1MDB」から首相へ約七億ドルの不正入金)が原因で、ロスマ・マンソール首相夫人の暴かれた贅沢ぶりと相まって未だに国民的不満がくすぶっています。

 また、1MDB(ワン・マレーシア・ディヴェロプメント・ブルハド)自体が資金洗浄(マネー・ロンダリング)などの疑いを米国やスイス(瑞国)の捜査当局から持たれており、財務相を兼任してこの公開会社(ブルハド)を私物化してきたナジブ首相とともに中共共産党並みの桁違いの腐敗が進んでいると考えられているのです。

 http://www.sankei.com/politics/news/161120/plt161120……
 ▲産經新聞:安倍首相、12月のプーチン氏来日に向け「いい話し合いできた」

 さて、まずわが国の東南亜外交に影響のある馬国情勢から述べましたが、安倍晋三首相は二十日午前(現地時間十九日午後)、亜州太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議出席のため訪問したペルーの首都リマ市サンボルハ区内に設けられた会場で、露国のウラジーミル・プーチン大統領と会談しました。

 米国のドナルド・トランプ次期大統領との非公式会談に同じく、こちらも予定の時間を超えて話し合われましたが、安倍首相の会談後発言からも日露講和(平和条約締結)が前途多難であることを示唆しています。

 十六日記事の前段で申したアレクセイ・ウリュカエフ前経済発展相の解任劇は、やはり日露交渉がよくないほうへ向かっていることを表し、プーチン大統領を取り巻く国内情勢、或いははっきり申しますと権力闘争にわが国が絡めとられているようです。

 産經新聞社が別の記事で指摘する政権内の「取り巻き」への警戒のみならず、対日融和派とそうでない派との対立の綱引きがウリュカエフ氏の身柄拘束に繋がりました。

 本年八月に就任したアントン・ヴァイノ大統領府長官は、在日大使館勤務の経験があり、ウリュカエフ氏と組んで対日経済協力をまとめていたとされる国営石油会社ロスネフチのイーゴリ・セーチン会長(元副首相)ともわが国政府が接触しておかねばなりません。むろんSVR(露対外情報庁)の日本担当と話し合いを重ねることも重要でしょう。

 これらの対策は、元外交官の佐藤優氏も指摘していますが、何度も申しますようにそもそも外務省が定石通りにしか事を進めないため、首相官邸主導だったはずが横槍を入れられてうまくいっていません。どこまで対策が練られるか全く不透明なのです。

 このまま来月の日露首脳会談が開かれても、安倍首相が繰り返し述べた「一歩一歩」の一歩の歩幅があまりにも短く、ほとんど前に進まないでしょう。来年一月の衆議院解散などできる状況にはないのです。

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