マックに見る企業の迷走

皇紀2675年(平成27年)12月20日

 http://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ17HHH_X11C15A……
 ▲日本經濟新聞:マクドナルド社長、全都道府県で消費者の意見聞く会合
 
 日本マクドナルドのサラ・カサノバ社長は十七日、六人の母親が参加するタウンミーティングを開き、意見交換したということです。

 現在放映中のマックのテレビCMには、四人家族が登場し、幼い子供二人がチキンマックナゲットを注文しているさまが描かれています。このコンセプトといい今回のタウンミーティングといい、もはやマックに復活の芽はないと申して過言ではないと判断できるでしょう。

 なぜならマーケティング・リサーチを完全に誤り、それを修正しないまま暴走しているからです。これにはさまざまなご意見があることを承知で申しますが、実は現在放映中のテレビCMのほとんどがかつてほどの面白みを失っていることとも関係しています。

 端的には、まず誰に買わせたい商品なのかということと、企業イメージをどう創り上げてしまうかということに於いて、全く明確でないか或いは見誤っているのです。

 例えば、男性用髭剃りの商品広告として美肌の若いタレントを起用するのは、多くの本来購買層に美しい仕上がりを連想させるよりも「自分には無関係な商品」と思わせてしまう逆効果が上回ります。

 つまり、平成の御代に至ってなお食事のためにマックに家族で出かけ、企業側が提供するイメージとしての「子供たちがポテトやチキンナゲットをねだる」という構図は、あまりにも前世紀的で本来購買層だったサラリーマンや学生たちを遠ざけてしまいました。

 これは一つの提案でしかありませんが、マックはただちに「不健康かもしれないが安くて早くて喫煙も可能な店」という開き直りに転じるべきです。今のまま「ベジタブルバーガー」といったヘルシーメニューを展開しても、そのような商品を求める購買層は、そもそもマックを利用しません。業績の回復など見込めないのです。

 テレビ創世記から成熟期のCMがなぜよくできていたかと申せば、朝に髭を剃ってももう昼には伸びていそうな壮年サラリーマンたちを登場させ、実際に剃らせて見せたり、主婦層に向けて「亭主元気で、留守がいい」と唱和させたり、または凝りに凝った退廃的映像を見せることでコピー機商品を展開する企業イメージを定着させるといった、企業側とCM制作側とで確認済みの意思、意図が明確だったからに他なりません。

 広告代理店の能力というよりは、企業自体が「失われた二十年」で文字通り多くのことを失っているのです。

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『マックに見る企業の迷走』に2件のコメント

  1. きよしこ:

    昨日、就寝前にふと「最近テレビCMなんて観てないなあ」と思ったので、今日の記事に勝手に運命めいたものを感じてコメントします。
    先日、そのマックのCMを偶然にも観たのですが、「子供が可愛らしいなあ」と思いつつも、「結局のところ何が言いたいの?」という印象が拭えませんでした。
    マックそのものは、仕事の帰りに時々ドライブスルーを利用するくらいですが、どの店舗にも共通して言えるのは(特に地方部)、男が一人でゆったりと食事できる空間ではないということです。

    ただ、先生の上げ足を取るわけではありませんが、本当に煙っぽい不健康な店舗が増えれば、それこそ私はもう二度と利用しなくなるでしょう。結局のところ、無軌道に計画性もコンセプトも持ち合わせないまま店舗ばかり増殖させて「業界NO.1」の座に甘んじたツケが出てきたのでしょう。そこに、明らかに日本人を下に見ているとしか思えない社長なんざ登用したものだから、ご指摘の通り自ら復活の芽を摘んだのです。

    昔の面白いCMと言って思い出すのは、あの「私はコレで会社を辞めました」ですね。あれも、ごく普通の「オッサン」が主役でした。個人的に一番「好感度」の高いCMは「フツーのオバサン」がその人生を最大限に謳歌している「虫コナーズ大集合篇」「クモ用ハンター蝶おばさん張りつけ篇」です。あれほどシンプルで分かりやすくて、「ターゲット以外の視聴者などどうでもいい」という、清々しいまでの開き直りを見せているCMはありません。何が魅力的なのかサッパリ不明なケータイ会社のCMなんぞより、よっぽど企業としての謙虚さや誠実さが感じられます。
    いま挙げたCM以外にも、面白いのが当該企業のHPで観られますので、先生も読者の皆様も是非ご覧になってください。年末に向けて「日本人のツボを押さえた笑い」で気持ちを楽にするのも悪くありません。

  2. miku:

    「不健康かもしれないが安くて早くて喫煙も可能な店」www
    仰る通りですよね。マックにヘルシーさは誰も求めていない。

    思えばマックの業績低迷は原田氏が行った
    「100円マック」が起点のように思います

    確かに100円マックにより客数10倍となり、売り上げは曝アゲしましたが、
    一度100円でマックを買った客は
    2度とそれ以上の金を支払う気にはなりません

    同じことはミスドにも言えますが・・・(もはやドーナツ=100円がインプットされて
    160円や140円は割高に感じる)

    安売りする⇒利益が減る⇒サービス低下⇒
    お客が減る⇒安売りする・・(以下エンドレス)

    まるでデフレに悩む日本のようですねえ
    結局誰も幸せになれない