TPP交渉の激しい勘違い

皇紀2673年(平成25年)10月6日

 http://sankei.jp.msn.com/economy/news/131006/fnc131006……
 ▲産經新聞:日本、貿易ルールづくりで中国に対抗

 環太平洋経済連携協定(TPP)の話になると、産經新聞社もおかしな記事を書くものです。いえ、ともすればわが国政府がおかしなことを言い出しているので、それがそのまま記事になっているだけかもしれません。

 ともかく、TPPは対中牽制の道具にならないのです。なぜなら、中共はTPPが数ある貿易連合の一つに過ぎないと知っているからであり、自分たちの有利になる貿易圏を作ることにしか関心がありません。

 その恐るべき貿易圏構想とは、いみじくも産經新聞社が指摘している通り、日印中韓と東南亜諸国連合(ASEAN)の計十六カ国による東亜包括的経済連携(RCEP)です。

 わが国政府のようにあとから交渉に参加しても、自分たちの思い通りになる見通しが立たなければ意味がなく、私たちの思いのほか中共はTPPに関心などありません。

 安倍内閣の意気込みにも著しい違和感を覚えるのは、米連邦議会の混乱などを理由にバラク・オバマ大統領が今回の亜州太平洋経済協力(APEC)首脳会議に欠席したからといって、わが国が代わりに交渉を主導出来ると考えたことでしょう。

 確かに経済規模で日米は世界のいわゆる「ツー・トップ」です。しかし、TPPの成立過程から見て、日本はおろか米国でさえ本来は主導権を握れません。にもかかわらず、米国の交渉参加によって、国語訳の「環太平洋」が嘘である(「Pan Pacific」ではない)とばれているほどで、これはどういうことかと申しますと、米国主導になるのを嫌って環太平洋の一角である尼国らが参加していないからです。

 安倍内閣がTPP交渉への参加を決めてしまった限り、わが国の有利になるよう政府として努めるのは大変結構ですが、本当に対中牽制にも取り組むというのなら、時間と労力を無駄にしかねないTPP交渉を捨ててでも、わが国がRCEPの主導権を掌握するかいっそ脱退する以外にありません。

 また、自由貿易協定(FTA)に於ける日中韓という枠組みも不要です。わが国よりも法治の劣る発展途上国との協定では、世に言う「毒素条項」を相手国に呑ませる訳ですが、中韓は法治体制が未整備なのではなく、人治主義で遵法意識の次元が違いすぎます

 わが国側が協定に基づいて中韓各政府を訴えても、彼らは全く無関係な案件を持ち出して駐在の日本国民をいきなり逮捕、投獄、或いは正当な裁判を経ず死刑にしてしまう可能性すらあるのです。わが国政府は日本国民を人質に取られる度、つまらぬ妥協を強要され、結局は国益を損じるはめになるでしょう。

 RCEPの主導権をわが国が掌握しなければならないのは、参加する東南亜諸国を中共の独善から守るためでもあり、それがたとえ「右翼的だ」と批判されようとも、亜州の経済大国、責任ある大国はわが国日本であるということを示さなければならないからです。

 占領憲法(日本国憲法)下のわが国は対米交渉になると弱腰になり、今回の事態もまるで「鬼(米国)のいぬ間に」何とやらにしか聞こえません。この程度では交渉の主導権を握ることなど到底無理であり、本当はわが国に頼りたい案件を抱えている越国らを失望させるのです。

 安倍晋三首相が消費税率を引き上げないよう決められなかったことで、これら貿易圏の狙いは一層、日本国内の民間需要ではなく企業の持つ資産や技術のみになりました。つまり、私たちがどう生きるかより(技術者の引き抜きもあるが)作られたカネや物にしか関心を持たれない世の中になるということです。

 中共はRCEPで譲りたくないからこそ、わが国に向けた「日中友好」の喧伝を仕掛けてきます。何度でも申しますが、私たち日本国民がどこまで正気を保っていられるか、それが国家の命運を左右するのです。

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『TPP交渉の激しい勘違い』に2件のコメント

  1. Pin:

    中国の動きは早速のインドネシアへの訪問に表れていますが、中国にとってASEANは無視できません。
    その中で人口も多く経済発展の期待も高くしかも領土問題の無いインドネシアを味方につけたいのは正しい戦略です。
    以前からそうですが、一定の集団を分断するやり方は中国古来からの兵法です。
    一番分断したいのは領土問題のある強いベトナムと米国がバックについているフィリピンです。
    弱小国の政府には金を配ったりして懐柔し、Aseanという集団を分断していく。
    昔ながらのやり方ですが、正統派の戦略です。

    そして日本などに対しては日本の国内親中派を使い中国に有利な様々なことをします。
    政府が気に入らなければ政府を入れ替えようとします。
    しかもかなりの長期戦を考えています。
    最終的には日本には軍事力で言う事を聞かせるでしょう。

    インドも中国の敵国ですが、インドは日本ほどバカではありません。
    片手で握手もしますが、片手をグーにもしています。
    しかし、弱いです。

    アジアにおいて中華経済圏をどうするといっても現状既に各国には経済力を持って華僑がその国その国の経済を握っています。
    中国イコール華僑ではないですが、注意は必要です。
    タイにもいます。シンガポール、インドネシア、マレーシア、フィリピンにも。

    だからある程度の中華経済圏は今後作れるでしょう。
    しかし、どれほどの内実のある規模のあるものが出来るかには疑問を感じます。

    ただし、中国がアジアに本当の経済圏を作ることが出来るのは第二列島線まで掌握したらだと思います。
    それこそ軍事力で相手国をひれ伏せ中華経済圏を作るのです。

    まあ、自由主義陣営の経済圏構想が進んでいる中で中国の野望はそうそう出来るものではないのが現実ですが油断は禁物です。
    それと特にFTAは危険だと思います。
    中国に利益の出ることはかつての日本の中国向けODAと同じでやがて自分で自分の首を絞めるの喩え通り、日本の首を絞めるでしょう。
    そしてなりよりの危険性が安倍内閣以後の政権です。
    ご存じのように自民党であるから安心というものではないですから。

  2. ゆき:

    全国農業協同組合中央会(JA全中)出身で自民党の山田俊男参院議員は7日、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉を巡り同党の西川公也TPP対策委員長が重要農産品5分野の関税撤廃の可否を検討する考えを示したことを批判した。(産経)
    TPPは、やはり日本は交渉で太刀打ちできませんね。安倍氏はTPPに参加しないと選挙前に言っていたように思いますし、農業では折れないようなことも言っていたと思うのですが、彼は嘘つきですか。

    米グロ-バル企業が背後にいる米国の言いなりになるのは最初からわかっていたこと、TPPから撤退して欲しい。
    スーパーで売っている豚肉、牛肉はオーストラリアと米国が半々 位で入ってきている。以前はあまり目にしなかった光景だが。値段も国内産よりかなり安い。果物やブロッコリーも米国産が定着している。あれほど長い距離を経て、ブロッコリーは見た目が生き生きしている。薬がかけてあるのだろう。
    絶対私は買わない。しかし、普通の人は添加物や遺伝子組み換えのことを気にせずに買っている。国内農業の衰退や外国製品の危険性などを言ってみたところで、安い商品を前にした一般人には意味がないようだ。
    英語だけがうまいという鶴岡氏は何をやっているのだろう。ガッツのなさが透けて見える。
    腹立たしくてニュースを聞く気にもなれない。