「褒めて伸ばす」の勘違い

皇紀2672年(平成24年)11月12日

 http://www.rbbtoday.com/article/2012/11/09/97501.html
 ▲RBB TODAY:「褒めて伸ばす」を科学的に証明…生理学研究所、米国科学誌に掲載

 自然科学研究機構生理学研究所の研究グループが、他人から褒められると脳の線条体が活発に働き、運動技能の習得が上手に促されることを科学的に証明したという報が先週末、わが国を駆け巡りました。

 そこで私が危惧するのは、もうそれこそ一斉に「そうだ、そうだ。褒められると伸びるんだ」「俺を褒めろ、私を褒めろ」「子供たちをとにかく褒めて伸ばすんだ」と皆が言い出し、物事の本質を見失ったまま一方向に集団で暴走することです。

 褒めて伸ばすということは、つまり最も難しいのが「叱り方」だということを隅に追いやってはなりません。児童や生徒への教育のみならず社員・従業員への指導に於いても、褒めることと叱ることは同じ「評価すること」なのです。

 他人を評価することは「見ている」ということであり、見ていなければ何の評価もできません。ですから評価のない組織はすなわち機能不全を意味しています。

 恐縮ながら私の経験で申せば、生徒に対して偏差値や試験の点数を基準に褒めてもほとんどよい成果は得られません。子供でも狡猾な手段を発明することがあり、ただその手を使っただけで褒められる(事なきを得る)状況に甘んじさせれば、その子の成長は止まってしまいます。それどころか周囲の大人を軽く見るようになり、次第に態度が個人主権的になって他人の気持ちを顧みなくなるでしょう。

 これは自分が正しく見られていないことに気づき、明らかに不満を抱くためです。叱ることはとても大切であり、子供のうちは「親や先生の機嫌が悪いから怒られた」としか理解できないであろうことを決して大人が恐れてはなりません。そのうち理解できるよう子供をよく見て育てるのです。

 ひたすら「よくできましたね」「がんばりましたね」と笑っていればよいだろうなどと皆が安易に考えていたならば大間違いであり、この報道に対する議論は必要だとはっきり申し上げておきます。

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『「褒めて伸ばす」の勘違い』に2件のコメント

  1. 読者:

    仰せの通りで、褒めてしまうとそこで止まってしまうんですね。
    さらに厄介なのは元々「うぬぼれ」「自己愛」の強い子供の場合です。
    この場合は往々にして悲惨な結果を招くものです。
    なお参考ブログは11/10の記事を御一読下されば幸いです。
    戸塚宏先生の業績を讃えています。
    (コメント2件のうち2番目で「求道者」のハンドルネームを使い
    感想も書きました。昭和の終わり頃の高校時代を想い出したもので・・・)

  2. 読者:

    ゆとり世代のガキに多い自分は褒めて伸びる子とか言ってる勘違い野郎。
    いるいる 笑
    ちょっと叱られると、即終了するストレス耐性全く無しの人、会社で言えば、すぐ辞める人ね