民主党の「脱官僚」はウソ

皇紀2670年(平成22年)6月23日

 全体主義による官僚主導型社会システムが人間を疎外するというテーマは、これまでも文学や映画に於いて数多く描かれてきましたが、昭和60年製作・61年日本公開の英国映画『未来世紀プラジル』は実に秀逸です。英コメディ集団「モンティ・パイソン」でアニメーションを担当していたテリー・ギリアム監督が、前作『バンデットQ』以上に強烈な視覚イメージを炸裂させています。

 建物を張り巡らせるダクト(管)のメーカーCFが流れるテレビモニターを大写しにし、それらが爆発するという場面から始まる本作は、情報省職員の叩き殺したハエの死骸が混入するせいでテロ容疑者の名をタイプミスしたことに起因する不当逮捕をきっかけに、或る男(『エビータ』『パイレーツ・オブ・カリビアン』のジョナサン・プライス)の人生と夢(妄想)が動き出すさまを描いています。

 パイソンズのマイケル・ペイリンが出演しているほか、映画版スーパーマリオを演じた経歴を持つボブ・ホスキンスや『ロード・オブ・ザ・リング』のイアン・ホルム、そしてロバート・デ・ニーロが驚くべき役で出演しており、いわゆる大作映画とは違う趣ながら豪華キャストです。

 本作(の監督オリジナル版=米ユニヴァーサルスタジオによる不当な編集版ではない方)は、はっきり申し上げてその終わり方にまったくの救いがありません。どうも私は『ダンサー・イン・ザ・ダーク』や『マッチ工場の少女』など、この手の終わり方をする欧州映画に好きな作品が多いのですが、単なる偶然です。

 ギリアム監督が本作の由来と認めたジョージ・オーウェルの小説『1984年』では、平和省が戦争を継続させており、豊富省が食料自給を抑えて配給を統制し、真理省はプロパガンダを、愛情省は尋問と拷問を担当しています。こうした官僚機構による統制国家は、決して旧ソ連や現在の中共、北朝鮮のみならず、日本や米国にも部分的にそうと言える性質が見られると皆様は思われませんか?

 民主党は、昨夏の衆議院議員総選挙で「脱官僚依存」「脱官僚主導」を掲げて政権を奪取しました。公務員改革を約束し、行政のムダを徹底的に削除して社会福祉財源に充てると胸を張ったのが彼らでした。

 しかし、いざ政権交代が実現すると、民主党は公務員系労組を支持母体とする政党の間違いを露呈させます。事業仕分けは見せかけの政治主導に始まって財務官僚主導に終わり、官僚機構の集金・蓄財システムにほぼメスを入れないまま自民党とともに消費税率の引き上げを口にしてしまいました。

 その挙げ句、22日に菅内閣が閣議決定した「国家公務員退職管理基本方針」は、独立行政法人などに公務員が出向する「現役の天下り」を容認するものだったのです。

 http://mainichi.jp/select/seiji/news/20100622ddm001010002000c.html

 ▲毎日新聞:国家公務員 再就職指針、現役の天下り容認 改革に逆行 近く閣議決定

 私は、すべての「天下り」を「悪」とは申しません。懸命に公に尽くした者が定年退職時に退職金を受け取るのも当然だと思います。ところが、これらを全否定しているのが民主党であり、そのくせ「天下り」だけは、むしろその枠を拡大させました。

 このような方針を決定しておいて、デフレスパイラル(消費低迷で物価が下がり、私たちの給与が上がらない・下がったことによる、さらなる消費低迷の悪循環)にもかかわらず増税するという理由を菅直人首相は明解に説明してみなさい、と指弾せざるをえません。その指弾は闘いの夢(妄想)ではなく、官と民・中央と地方を対立させ続けて日本を分国化するような政治との現実の闘いなのです。

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『民主党の「脱官僚」はウソ』に3件のコメント

  1. yutakarlson:

    ■<公務員退職管理>「現役の天下り」を容認 改革に逆行―空想科学小説なみの幼稚な考えでは政治主導など実現できない!!こんにちは。民主党、結局は政治主導を実現できないようです。それは、当然といえば、当然です。ドラッカーが語っているように、官僚の優位性はほとんどあらゆる先進国で一般的です。アメリカといくつかのあまり人口の多くない英語圏の国、すなわちオーストラリア、ニュージーランド、カナダのほうが例外です。そうして、これらの国がなぜ、政治主導を実現できるかといえば、大規模な政策決定案、法律案を設定できる有能なシンクタンクを時間をかけて養成していることです。これなしに官僚抜きの政治主導などできません。このようなシンクタンク日本でもつくってもいいかもしれません。しかし、養成には時間がかります、やはり、それまでは、官僚を活用する形の政治主導の制度設計をするしかないです。詳細は、是非私のブログを御覧になってください。

  2. yutakarlson:

    未来世紀ブラジル、私も大好きで何回も見ている映画です。本当、官僚主導はよくないですね。しかし、官僚を活用しないと、うまくいかないので、きちんとした制度設計をすべきだと思います。

  3. ストリートマン:

    官僚を痛めつけ・排除するのが「脱官僚」と考えているのでしょう。幾ら威張っても能力の無い人間は能力以上の仕事は無理、人を使う事を知らない政治家が「脱官僚」自分で自分の首を絞めているだけ、大所高所から国家を見て官僚を動かすのが政治力、民主党の連中は基本から「勘違い」をしているのです。