ついにチャイナリスク炸裂

皇紀2670年(平成22年)6月1日

 或る大橋巨泉さんと親しい方がこう言うのです。巨泉さんが今までおやりになったTVCFの中で、もっとも「やってよかった」と思っておられるのは、パイロット萬年筆株式会社(現 株式会社パイロットコーポレーション)のCFだった、と。

 それは昭和44年のもので、当時パイロットが社の起死回生をかけて製作したのですが、当初広告代理店から出された3案を巨泉さんが「これじゃ当たり前すぎて社を再興させるほどの力にならない」と突っぱね、ぶっつけ本番でやったのが「はっぱふみふみ」でした。

 今見ても「みじかびの きゃぷりきとれば すぎちょびれ すぎかきすらの はっぱふみふみ」とは、何とも大胆なものです。で、なぜ巨泉さんがこれを「やってよかった」と今でも思っておられるかと言えば、実は放映ののちパイロットは業績を上げ、現在に至るのですが、巨泉さん宅にわざわざパイロットの労働組合代表がお礼に来たというのです。「これでまた私たち社員は皆ごはんが食べられます」と。

 労働組合とは、このような組織であるべきです。巨泉さんは、ご自分の芸能活動が他人様の生活のお役に立てたと実感できたことが、とても嬉しかったのだそうで、春日大社の葉室頼昭宮司(昨年1月3日没)が自著に「はたらく」とは「はた(周囲)をらくにする(楽しませる)こと、と日本民族は説いてきた」と書いておられたことの実践でしょう。巨泉さんは政治思想を社会主義に置いておられますが、言っておられることは実に保守主義的なのです。

 私はもう2年ほど前から「中共の労働者賃金はすでに高騰しはじめている」と指摘してきましたが、そのような傾向に係る混乱、いわゆる「チャイナリスク」の一端が日本企業を襲い出しました。

 http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2010060100329

 ▲時事通信:ホンダ工場で数百人乱闘=スト参加者と政府系労組が対立?中国

 労働者の賃金が適性に上げられていくのは当然のことですが、ここでは共産党系労組がそれを阻止し、私企業社員・従業員の権利としてストライキに打って出た労働者がさらにそれを阻止しようとして乱闘になっています。同じことは、韓国企業の現代自動車に対しても起こりました。

 貧しい環境からたちあがった温家宝首相は、死に体化した鳩山由紀夫首相との日中首脳会談を無事に終えましたが、このような問題にうまく対処しなければなりません。

 一方で中共は、鳩山政権の弱体化を狙って人民解放軍の動きを活発化させ、東シナ海のガス田開発に於いても、鳩山首相から(日本にとっては不利なことこの上ない)妥協案を示させ、温首相は喜んで帰ったようです。

 共産主義国は、民主主義国の弱点をよく分析しています。日本は、小沢一郎幹事長ともども民主党へ政権交代したことで弱体化している、と見積られていることでしょう。すなわち民国連立政権の存在自体が国益を損ねているのです。たとえ鳩山首相を近日中に辞めさせてそれで済むという問題ではありません。

 日本政府が中共のような国家とまともに対峙できないのは、共産主義を自覚しないまま占領憲法によって「個人単位の尊重」をうたい、実質的には共産主義国であるという化学変化を起こしつつあるからで、本当は巨泉さんのように、自らが「反保守」を標榜しつつ「日本民族であること」を隠せないのなら、まだわが国の保守主義の基本哲学は決して滅んでいないのです。

 「左翼」を自覚しながら実は巨泉さんのような日本人が多いのも、私の目から見て事実であり、さればこそ労組が政治運動に奔るのと同じくらい「改憲・護憲の政治闘争」は莫迦らしく、真正護憲論こそがその下らない左右の垣根をぶち壊して日本を再興させます。そんな国家の基軸があるのだということを知って下さい。

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