日本一の高層ビルで黄信号
http://www.sankei.com/west/news/150307/wst150307……
▲産經新聞:ハルカス 期待された「孝行息子」スタートダッシュに失敗、近鉄グループの浮沈も左右
平成二十四年十二月十九日記事で、私は伊勢丹の大阪店(JR大阪三越伊勢丹)について「総新装開店した阪急百貨店梅田に勝てないのは一目瞭然」「あれでは人が物を買う気にもなりませんし、そもそも人は来なくなるでしょう」と申しましたら、本当に昨二十六年七月、十階のレストランフロアと地下二階の食料品フロアを残してすべて閉店してしまいました。
来月二日には、その跡地に「LUCUA 1100(ルクア・イーレ)」が開業します。JR西日本は、大阪駅北口で伊勢丹と並列営業中のショッピング・モール「LUCUA」のほうが好調で、事実上不採算の伊勢丹を潰してルクアを増床することにしたのです。
伊勢丹のJR西に対する不満は理解しますが、前出記事でも申した「誰に買わせたいのかまるで分からない陳列」を改めないから看板を外されたのであって、実は同じことが近鉄百貨店本店(あべのハルカス近鉄本店)にも申せます。
しかし、伊勢丹と近鉄の抱える本質的な問題まで同じではありません。それは、本体が流通か電鉄かということなどではなく、或いは産經新聞社記事で指摘されている阪急と近鉄の企業体としての性質の違いだけでもなく、はっきり申し上げて梅田と阿倍野という地域の違いです。
日本一の高層ビルに登ってみたいという客を下層階の百貨店に導けないでいるのは、恐らくついでの買い物を近隣の「Q’s(キューズ)モール」に取られているからでしょう。ここは「イトーヨーカドー」のほかに「渋谷109」を核としたファストファッション専門店がずらりと並んでおり、展望台目当ての観光客もろとも周辺購買層の日常的需要と合致しているのです。
ならば特別な買い物を近鉄でしたいかと申せば、わが国最大級の売り場面積を誇るといって開業したにもかかわらず、品数が極端に少なくむしろ狭く感じます。照明のメリハリを効かすなどはよいのですが、肝心の商品に何のメリハリもありません。
神奈川県川崎市で起きた島根県隠岐郡隠岐の島町から転校の中学生が殺害されてしまった事件でも、地域の特性が露わになったように、すなわち客層がその店を決定づけてしまうということはあります。
近鉄はわが国私鉄で最も含み資産を多く有しており、強い電鉄会社です。今や和歌山市内で唯一の百貨店を経営しているのも近鉄であり、もう一度売り場を見直して頑張ってもらいたいものです。