三越伊勢丹の伊勢丹に問題

皇紀2672年(平成24年)12月19日

 http://biz-journal.jp/2012/12/post_1170.html
 ▲ビジネス・ジャーナル:アパレル業界で孤立する三越伊勢丹 セール時期を巡り社内反乱!

 三越伊勢丹ホールディングスが新春の特売時期の設定を巡って社内対立を激化させ、各種服飾企業からも嫌われ始めているという記事ですが、注意深くお読みいただければこれが三越ではなく伊勢丹の問題であることが分かります。

 わが国を代表する老舗百貨店である三越は、近年業績を悪化させていると言われて久しいですが、確かに老舗ゆえ若年層を掴めず店頭販売には苦心しているものの、外商は相変わらず好調のはずです。

 以前にも申しましたが、三越の顧客対応力はとてつもありません。取り寄せが難しいと思われる商品でも必ずと言ってよいほど持ち込める老舗の流通力こそが三越の底力です。

 ところが、伊勢丹にはこれがまったくありません。新宿店でもこれ見よがしの「伊勢丹バイヤー押し」で商品が店頭に並べられていますが、どれもこれも正直申して酷い感覚です。いえ、主観的に酷いのではなく、客観的に「誰に買わせたいのかまるで分からない陳列」になっています。このようなものを目利きの結果とは申しません。

 大阪店が、総新装開店した阪急百貨店梅田に勝てないのは一目瞭然です。例えば、食器などの生活雑貨部門ですが、阪急は筋のよい高級品を前列に展示し、手頃な商品を奥や端に混ぜて購買意欲を刺激します。しかし、伊勢丹の高級感を演出した売り場には堂々と安物が前列に並べられており、どこまでも安物で品数もあまりに乏しく、あれでは人が物を買う気にもなりませんし、そもそも人は来なくなるでしょう。

 自民党の安倍晋三総裁は政権交代で給与・物価下落(デフレーション)を解消させると言っていますが、本当にこれを実行しない限り金融のみならず流通の市場も現状より一層悪い反応を示すに違いありません。このまま消費税を増税すればますます私たちは物を買わず、将来に対する不安からわずかずつでも貯蓄にまわすでしょう。

 だから内需依存の百貨店業界が厳しいのは分かります。それでも外商で利益を上げていれば経営はもつのであり、伊勢丹はこの外商でも富裕な顧客に中途半端な品を持ち込む悪癖をやめられません。実のところ伊勢丹の弱点は、例の「誰に買わせたいのか分からないほど酷い感覚しか持ち合わせていない伊勢丹バイヤーが選び抜いたらしい特選品」そのものなのです。

 裏で「たいせいよう」と呼ばれている大西洋社長は伊勢丹出身であり、このこだわりをやめられないのでしょうが、このままでは三越もろとも経営を悪化させるでしょう。無意味で不毛なものを「こだわり」と言いますが、これをやめる決断が大西社長に求められています。果たして出来るでしょうか。

 外商の特売会の頂点に立つ宝飾品すらまともに売ることの出来ない百貨店は淘汰されます。伊勢丹の値打ちはもはや写真館にしかありません。富裕層に財布の紐を緩めてもらえなければ、わが国の経済が活性化するまで自分たちの給与が上がるのは諦めなければならないでしょう。

 ほとんどの国民はもう高級品を買う財力も上昇志向の気力も失っています。だから安倍「新」首相の責任は極めて重いのです。

 参考記事
 九月十六日のコラム「『ブランド』の終わり」

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