「左翼とは何か」について

皇紀2683年(令和5年)6月4日

 上岡龍太郎(本名=小林龍太郎)さんが先月十九日、八十一歳で亡くなられていたことが米朝事務所より伝えられました。衷心よりお悔やみ申し上げます。

 確かかつて讀賣テレビ放送系「鶴瓶・上岡パペポTV」で、「九十三歳までは生きる」「死んだら剝製にしてや。口だけ動くようにして」とおっしゃっていたのを思い出します。五十八歳できっぱり引退されたのち、大阪市内の某ホテルラウンジでお見かけしたことがありましたが、やはり「街中で僕に気づいて近寄ってくる奴は、目で殺す(声をかけて来んように威嚇する)」とおっしゃっていたので、そっとしておいたのも思い出しました。

 しかし本当は、多くの人びとから「上岡さーん」と声をかけられるのを望んでおられたようにも思います。本当は、それにいちいち応えてしまうようなところがおありだからこそ、テレビで「来んなよ、来んなよ」と睨むふりをして笑いを取っておられたのではないか、と。

 そのような鎧の下に、確かに存在したのが、京都府内で有名だった人権派の小林為太郎(旧姓が上岡で、小林家の養子に入られた)弁護士の遺伝子でした。日本共産党に入党しての氏の主義主張には、首を傾げるようなものもありましたが、戦前戦中戦後の左翼人は、真に人が人として生きる権利の追及があり、不当な権力による弾圧と闘うという主目的があったものです。

 上岡さんは、そうした政治思想とは「お笑い人」として距離を置いていましたが、非戦の誓いを求めて論じたり、権力に対する疑いの目を語ることはありました。

 その中で今でもよく覚えているのは、「そもそもテレビなんちゅうもんは、嘘ばっかり言うてるもんやと思ててちょうどええねん」と。「うん? それホンマか?と。常に疑いの目を向けとかないかん」というのは、権威化した報道権力にまんまと呑み込まれないようにする上で、私たち国民が留意すべき間違いのない態度なのです。

 当時のテレビ番組でこれを言えたのは、上岡さんくらいでした。のちにフジテレビ系「上岡龍太郎にはダマされないぞ」という番組まで作られましたが、大抵報道権力が「みんなが言っています」というように伝えることを「いや、ちょっと待てよ。その話はおかしいやないかい」と突っ込むところに笑いを起こし、時には真剣に怒って帰ってしまう珍事が発生、見る者をハラハラさせたのです。

 その予定調和ではない、いわば何が起きるか分からないところにテレビの面白さがあることを、大橋巨泉さんなんかはよくご存じで、三十分番組だったTBS系「クイズダービー」の収録を、毎回ほぼ三十数分で終えていた(珍事もそのまま放送した)といいます。現下のテレビ番組が面白くなくなったのは、コンプライアンスを厳しくして、報道番組さえ自ら予定調和のドツボにはまっているからにほかなりません。

 この「自分の思い通りにならん、っちゅうことがほとんどや」という姿勢が或る種「矛盾の塊」と言うべきまた別の笑いを生みました。禁煙運動を冷笑して突如禁煙したり、マラソンを毛嫌いして「上岡マウイマラソン」を主宰するほどハマったり、ゴルフを莫迦にしてプロゴルファーを目指したり……よって引退宣言もいつか覆してくれるものと待ち望んでいました。

 が、その望みは、とうとう叶いませんでした。私たちの心の中にはただ、「上岡さんの笑いは、間違いなく今も通用したはずだ」という根拠なき確信であり、願望であり、引退から二十三年もの月日を経てなお、上岡さんの立て板に水のごとしの話芸が多くの人びとの心を捉えて離さなかった所以です。

 上岡さんの関西弁は、美しい京都弁でした。耳にも美しい国語でした。これが現下の私たちの周りから最も失われた文化です。

 そして、昭和の高度経済成長期を経た現下の左翼言論が方向性を見失った今、真の左翼とは、決して対日ヘイトスピーチ(日本憎悪差別扇動)に興じることではない、と。国民の安寧な暮らしを守るため、権力が不当なことをすればいち早く闘うことである、と思い知らねばなりません。

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『「左翼とは何か」について』に2件のコメント

  1. きよしこ:

    目下「オリエンタルラジオ」の中田敦彦さんがダウンタウンの松本人志さんをYouTube上で名指しで批判したことが話題になっていますが、上岡さんが引退し、島田紳助さんが引退し、もし松本さんも引退ということになればテレビというメディアは完全に終了です。上岡さんも紳助さんもあっさりと引退したのは(一生分稼いだからという背景もあるでしょうが)テレビや芸能界などというものは命を粗末にしてまで執着する価値のあるものではないという確信があったからではないでしょうか?

    その当時に比べてもテレビの劣化は目を覆いたくなるものであり、著名なアイドルや芸能人が個人事務所を立ち上げたりYouTubeに活動拠点を移したり引退したりするのもテレビの中身の無さと表には出ない醜悪な実態に辟易したに違いありません。おそらくジャニーズ事務所の醜聞も上岡さんならとうの昔に知っていたはずです。そしてその実態に触れようともしないテレビ界の忖度体質も。

    奇しくも本日ガーシー氏が逮捕されましたが、元々彼を議員にしたのもテレビ界や芸能界に対して強い不信を抱いた有権者が膿を出すことを託したからでしょう。結果的に議員としては何の役にも立たなかったガーシー氏ですが、個人的には異常に見えた新聞テレビによる彼への批判は既得権益にしがみつくための稚拙な抵抗に見えました。「常習的脅迫」なんて新聞やテレビが毎日のように国民に対して行っているくせに。

  2. 日本を守りたい:

    安倍さんが消されたのは、中共や白人支配層の手下すなわちバイデン政権に対して「日本の国益を守る意志」を示していたからだ。岸田は それをよーく知っている。安倍さんのもとで外務大臣をやらせてもらうなどして 安倍さんの考えも実際の仕事ぶりも 見て来たからだ。安倍さんのように消されてしまう事は言うまでも無く、総理の座を失う事も絶対に避けたい岸田は、安倍さんとは真逆に「中共や白人支配層の手下すなわちバイデン政権に対して絶対服従」を決め込んだ。だからこそ、昨年の秋には「もっと中国人留学生を増やせ」と官僚に命令し、このたびのLGBT法も絶対に成立させると決め込んでいる。バイデン政権から命令されているからだ。これが 実に単純な事実なのである。保身第一 それが岸田。