フィリピンまた政情不安へ

皇紀2676年(平成28年)5月11日

 実は今、欧州瓦解の「パンドラの箱」が開きつつあります。わが国での扱いがほとんどないのですが、オーストリア(墺国)のヴェルナー・ファイマン首相(中道左派の社会民主党)は九日、辞任を表明しました。

 その原因は、今月二十二日に決選投票を迎える連邦大統領選挙(第一回投票は先月二十四日)で、極右の自由党のノルベルト・ホーファー候補が首位に立ち、緑の党のアレキサンダー・バン・デ・ベレン候補と争う展開となったこと、すなわち難民・移民の大量流入に対する国民的不満から中道左派政党内部でさえ混乱が生じ始めたためです。

 政権与党の候補者が大統領選挙で惨敗した責任をとらざるをえなくなったファイマン前首相に代わって暫定首相となったのは、中道右派の国民党のラインホルド・ミッターレーナー副首相であり、もし自由党の大統領が誕生しても国民党は、そのまま連立政権(現在の社民・国民から自由・国民へ)に居座るのではないでしょうか。

 独国のアンゲラ・メルケル首相が広げた難民・移民に対する大風呂敷は、かくのごとく隣の墺国で政権崩壊を招きました。これは、恐らく欧州各国による難民・移民融和政策の終わりの始まりです。

 わが国では、墺国政治へのなじみの薄さからか、これをあまり重大視していないようですが、欧州各国は大騒ぎであり、英国の欧州連合(EU)離脱問題の来たる結論によっては、欧州経済にますますの混乱を招き、日本経済も著しく伸び悩みます。

 http://www.sankei.com/world/news/160510/wor160510……
 ▲産經新聞:フィリピン大統領選投票、ドゥテルテ氏が「当確」

 さて、これが配信される頃には「当確」ではなく当選と出ていることでしょうが、フィリピン(比国)の大統領選挙で、「比国のドナルド・トランプ」などと呼ばれることもあるロドリゴ・ドゥテルテ候補(ミンダナオ島ダバオ・デル・スル州ダバオ市長)が次期大統領になるようです。

 一月三十一日記事で、天皇陛下と皇后陛下の比国御行幸啓に接し、実に丁重だったベニグノ・アキノ三世大統領は、再選禁止規定により六年の任期を終えます。お疲れ様でした。

 私は、ドゥテルテ氏の大統領就任が、またも「ピープルパワーと称する単なる政治の混乱」を招くのではないかと危惧しています。この手の民意の反映の仕方は、危険な兆候です。

 彼は、対中政策に於いても全く発言に一貫性がなく、南支那海問題に対処できるか否か分かりません。また、国内犯罪の処理についても、ダバオ市でできたことを全国でできるとは思えず、次第にその中身のなさに国民が気づけば、あっという間に政権転覆暴動が発生しかねないのです。

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