妊娠中絶と野田聖子問題

皇紀2673年(平成25年)2月26日

 http://www.asahi.com/politics/update/0223/TKY2013……
 ▲朝日新聞:「少子化対策は妊娠中絶問題から」 自民・野田総務会長

 自民党の野田聖子総務会長は二十三日、佐賀県武雄市での講演後記者団に対し、少子化対策として堕胎(人工妊娠中絶)を禁止する法案作りに前向きな考えを示しました。

野田聖子問題 第二弾
 第一弾「夫婦別姓と野田聖子問題 二月十八日記事

 野田代議士の政策的問題は、まず夫婦別氏(姓)制度の導入に前向きであり、卵子売買と代理出産の合法化を目指していること(その危険性は前回指摘)にあります。特に後者を違法とした厚生労働省生殖補助医療部会報告書に基づく法案を握りつぶし、自ら国内の脱法状態を創出して米国で卵子売買に手をかけたのが野田代議士ご本人でした。

 そして、今回はいわゆる「堕胎罪」の法整備の必要性を少子化対策に絡めて発言したと思われますが、これは本来刑法二百十二から二百十六条で犯罪行為として規定されているものの、占領憲法(日本国憲法)施行後の昭和二十三年に制定された「優生保護法」以来、医師会の指定する医師による堕胎は罰せられないことになっています。

 この背景には強姦などにより妊娠した母親を救う目的があり、極度の貧困がまだなおあった時代とも無縁ではないでしょうが、例えば森村誠一氏の小説『人間の証明』に登場する八杉恭子が占領統治期の闇市で米兵たちに強姦された場面は当時同様の事実として多発していたことであり、物語はこれと全く別に展開しますが、結果として父親を特定できない懐胎をしてしまう場合が多多あったそうです。

 優生保護法は平成八年に「母体保護法」へ改組されましたが、世界的にも大東亜戦争以前の科学的認識として一部に優生学は存在しており、わが国でも優生保護法以前に「国民優生法」がありました。しかし、天皇陛下の祖先祭祀に基づき家族を大切にしてきたわが民族は、結局この法律の目指す「劣性遺伝の強制断種」という恐るべき健常者の傲慢には馴染まなかったのです。この点から、野田代議士の今回の指摘は的外れとは言えません。

 ところが、彼女はここで大きく二つの「悪魔的仕掛け」とも申すべき発言をしたとされています。もし朝日新聞社の報道が間違っているのならば、野田事務所は即刻訂正を求めるべきでしょう。

 一つは、堕胎を禁止する代わりに養子縁組の法律を作るとの発言です。これはすでに存する民法の規定を全て「更地」にするという意味でしょうか。野田代議士が養子縁組ではなく米国で卵子を購入して懐胎に及んだ当時、彼女は盛んに養子縁組制度と係る団体に対する負の印象操作をした形跡があります(「代理出産を問い直す会」調べ)。

 それは、恐らく子供を欲しがる大人の目線では実に不自由に見えたからでしょうが、はっきり申しまして、現行制度は何らかの事由によって親の保護を失った子のための制度なのです。ここを吐き違えてはいけません。

 もう一つは、生まれた子供を社会で育てていける環境整備が必要との発言です。これはもうあからさまに新たな「福祉利権」の創出を示唆しています。子を育てるのは家族であり、養子縁組のようにたとえ血が繋がっていなくても家長のもとで子が育つ「無縁回避」の社会を、むしろ占領憲法施行の以後破壊してきたのが現行の政治ではありませんか。

 あくまで子を欲する大人の(決して全てではないが)利己的側面から物を言って、卵子売買と代理出産の合法化へ議論を誘導しようという野田代議士の思惑があけすけです。再度申し上げますが、彼女の今後の言動には十分注意してください。

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『妊娠中絶と野田聖子問題』に1件のコメント

  1. matu:

    >「劣性遺伝の強制断種」という恐るべき健常者の傲慢には馴染まなかったのです

    昭和15年にできたこの『国民優生法』は、「戦争」の産物であったのではないかとも思います。遺伝性疾患の国民を増やさないという目的自体に問題があるということ、それが祭祀の民のわれわれには馴染まないというご指摘は一つの整理になりました。   
    占領下の昭和22年姦通罪を廃止させた(性道徳の破壊)うえで、米兵士などの強姦(日本女性の性奴隷)を合法化させるかのような『優生保護法』とは全く異質のものと思いましたが、確かに両者に通ずるものがあるのだと考えさせられました。

    しかし、野田聖子総務会長は祭祀の民としてではなく、この「健常者の傲慢」で、堕胎を捉えているように思われますね。プラス「不妊患者としての傲慢」でしょうか。。
    『母体保護法』(=胎児殺人の合法化)と同様に、われわれの本能を狂わせる方向になりそうで要注意ですね。
    「堕胎の禁止」を総務会長が取り上げたことは大きな前進だと考えたいところですが・・。