ストロスカーンと中川昭一

皇紀2671年(平成23年)5月16日

 http://www.jiji.com/jc/ws?g=world&k=WorldEurope236364
 ▲時事通信:IMF専務理事を性的暴行で逮捕=米当局

 国際通貨基金(IMF)のドミニク・ストロス=カーン専務理事(代表)が14日、性的暴行容疑で米国のニュー・ヨーク市警察に逮捕されました。以前から注意申し上げておりますように、事件報道ほど信用出来ないものはありませんから、この容疑内容については論評しません。

 まず、ストロス=カーン氏がどのような人物だったか、改めてご紹介しましょう。彼は仏国の社会党に所属する政治家、経済学者であり、本場の左派は徹底した自国民保護政策を打ち出しますから、低迷していた内需を回復させた実績を持つ元蔵相です。よって、次期仏国大統領の最有力候補とも言われていました。

 わが国に於いて彼の言動が重要視されたのは、実はメディア各社が全くと言ってよいほど取り上げなかった2つの発言であり、1度目は平成20年1月、2度目は21年2月のことです。

 平成20年1月のダボス会議でストロス=カーン氏は、俗に「IMFは”It’s mostly fiscal.”(常に財政再建)の略」とまで揶揄されてきた中、「世界各国が財政出動すべきである」と述べました。これを「恐るべき外圧」にしたくなかった財務省の財政再建方針に寄ったのか、わが国では全く報じられなかったのです。

 そもそも国際通貨基金の設立に難色を示していた米国が妥協したのは、世界規模での「合成の誤謬」の発生を避ける目的を持つはずだった機関(英国のジョン・メイナード・ケインズ案)を、ただ貿易赤字国を救済するだけの機関(米国のハリー・デクスター・ホワイト案)として設立させることに成功したからでしょう。

 それを踏まえた上で、平成21年2月の先進7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議での出来事を思い出して下さい。ここで中川昭一財務相(当時)が、わが国の外貨準備金1000億ドルを拠出して財政破綻寸前の国々を救済すると発表し、ストロス=カーン氏は「日本による融資は、これまでの人類史上で最大規模のものだ」と絶賛しました。ところが、またもやこの発言はまるで報じられなかったのです。(画像左がストロス=カーン代表、右が中川財務相/国際通貨基金の該当記事より)

 この時メディア各社は、わが国の資産である外貨準備金を「自分たちのカネだ」くらいに考えてきた米国財務省が激怒していたこと(よってわが国財務省は、資産を度外視した現金主義で帳簿をつけ、財政再建を唱えさせられている)との因果関係が指摘されるほど、中川財務相の体調不良による会見を「酩酊会見」「中川は泥酔の常習犯」などと誹謗中傷することに全力を注いでおり、結果として中川氏が政界を去り、この世からまでも去ってしまわれました。

 ストロス=カーン氏も、平成20年に女性職員との不適切な関係を指摘され、外部調査を受けています。この時は問題がなかったとされましたが、彼をよく思わない勢力は、同様の醜聞をもって叩き潰す機会を狙っていたでしょう。

 彼は昨年の12月2日、国際通貨基金の代表人事について「欧米以外から選出すべき」とする認識を表明していました。これは米国か欧州からしか選出したことのない世界銀行総裁人事も含め、過去例のないことを実現させようとするものです。

 ちなみに、前述のG7会議終了後会見で、様子のおかしい中川元財務相の横で平然としていた不思議な随行官僚・篠原尚之財務官(当時)は、この不始末を問われて失職させられていてもおかしくなかったにもかかわらず、まるで米国から褒められたかのように平成21年11月、国際通貨基金副専務理事に就任し、ストロス=カーン氏の直下にいました。

 つまり、篠原氏の上にいた2人の政治家が、人生最大の災厄を味わわされたことになります。報道やその周辺の誹謗中傷をそのまま信じるならば、中川氏は「右翼の泥酔魔」、ストロス=カーン氏は「左翼の暴力犯」ということになりますが、事実はどうであるか、私も含めて今後よく自分の目と耳で確かめましょう。

 その作業をしないなら、初めから一切他人を信じないことです。ただし、よほど哀しく淋しい人生を歩むことになるでしょうが……。

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『ストロスカーンと中川昭一』に5件のコメント

  1. 枯れ葉:

    はじめまして。

    中川昭一氏のことを思い出し、なるほど今回のストロスカーン氏の逮捕にも
    何か裏があるかもしれないと思いました。

    例の「泥酔会見」一食の報道のなかで、我が国内でストロスカーン発言を
    取り上げたのは、関西テレビ(「スーパーニュースアンカー」および「ぶったま」)での
    青山繁晴さんの解説だけだったと記憶します。

    報道姿勢が国民の意識付けをしてしまうおそろしい風潮のなか、
    青山さんや、今回の貴ブログのような指摘は誠に貴重と感じます。

    今後ともがんばってすぐれた情報を発信してくださるよう期待しております。

  2. tom-h:

    >この時メディア各社は、わが国の資産である外貨準備金を「自分たちのカネだ」くらいに考えてきた米国財務省が激怒していたこと

    「自民党はアメリカの言いなりだ」とか「小沢様はアメリカに楯を突くことができる唯一の政治家だ」とか日頃反米を煽っているブロガーがなぜ中川氏に関してははマスゴミと一緒になって、中川叩きをしていたんでしょうかね。中には死んで良かったなどと言う下品なこと書いてた輩もいました。

    結局彼らは民主党ageも小沢ageもアメリカsageも彼らは単にある目的(中国主導による共産革命)を成就するためであり、日本の国益なんぞに興味ないんでしょう。

  3. 鳥肌:

    今回のストロスカーン専務理事の件は、咄嗟に嵌められたな~と思い、そしてすぐさま、我、愛してやまない中川昭一氏を思い出したので、そんな風に妄想を働かせた人って他にいるかな~と思い、Yahooにて「ストロスカーン 中川昭一」と入力し、検索してみました。そしてこちらのブログに飛びました。鳥肌がまだ治まらないです。どうしても解せなくて、謎だったことがなんとなく繋がってきそうな予感がします。

  4. 相場は予測するものではなく、定点観測するもの。:

    まともな思考能力を持つ方で、本件を額面通りに捉えている方はいないでしょう。

    カーラ・ブルーニの妊娠発表が重なっており、サルコジサイドの次期大統領選対策の一環という要素が半分。米国系金融資本の逆鱗に触れることが何かあった可能性が半分。と、考えます。

    サルコジよ、ド・ゴールが泣くぞ。

    米国系金融資本様、債務上限問題の対応に忙しい中、通常業務ご苦労様です。

  5. やはり:

    今回のストロスカーン氏の事件から、中川昭一事件との関連を疑っている人はいないかと思い、「中川昭一 ストロスカーン」で検索して、このブログの存在を知りました。タイミング的にともに出来過ぎだと思っていました。冷静に観察されている方もいるのだなと、心強く感じた次第です。
    篠原尚之財務官の出世話は全く知らず、裏ではそういうこともあるのかと驚きました。
    部外者である私が断言できる話ではありませんが、こういう可能性も当然疑っておくべきですよね。