宇宙と向き合えない日本

皇紀2670年(平成22年)5月21日

 思わず「これこそ報道の捏造ではないか」とわが目を疑いました。それは20日、国際宇宙ステーションでのミッションを終えて帰還した宇宙飛行士の山崎直子さんに向かって、鳩山由紀夫首相が「日本は(有人宇宙船の開発を)やらないのか?」と質問したというのです。

 http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/100520/plc1005202117016-n1.htm

 ▲産經新聞:「日本は有人宇宙船やらないの」 首相、山崎さんに質問???

 産經新聞社も時事通信社もこれを報じて、ともに「人ごとのように」と指摘していますが、もはやそのレヴェルではありません。第93代日本国内閣総理大臣としての自覚、いえ、日本人としての自覚すら、この鳩山首相にはないのではないでしょうか。

 思えば、科学技術立国のはずである日本に宇宙開発の驚くべき功績がほとんどありません。実は、このことも占領憲法の問題と無縁ではないのです。

 日本映画界を見渡しても、残念ながらロクな宇宙SF映画がありません。昭和32年、東宝が『地球防衛軍』(昭和29年に世界を震撼させた『ゴジラ』の本多猪四郎監督・円谷英二特技監督)をクランクアップ(撮影終了)させたとき、旧ソ連が人類初の人工衛星スプートニクの打ち上げに成功し、米国を屈辱の海へ叩き落としました。

 その姉妹作品として発表されたのが昭和34年の『宇宙大戦争』(同じく本多猪四郎監督・円谷英二特技監督)であり、その月面着陸のシークエンスの見事さは、米国が躍起になって成功にこぎつけたアポロ11号の月面着陸(昭和44年)以前のことですから、まさに東宝映画が先を行っていたのです。

 しかし、結局はジョージ・ルーカス監督の『スターウォーズ』(昭和53年日本公開)に日本映画が後追いするようなことになります。その末路の哀れは、究極的に東宝の『惑星大戦争』(福田純監督・中野昭慶特技監督)と、東映の『宇宙からのメッセージ』(深作欣二監督・矢島信男特撮監督)に表れてしまいました。特に前者は『スターウォーズ』の公開に少しでも先駆けようと製作期間わずか2ヶ月の安物であり、後者は下手に深作演出と当時公称15億円の製作費が一定の功を奏し、中途半端に「観れてしまう」映画(当時世間の不評を買ったらしい成田三樹夫のガバナス皇帝も悪くない)なのがかえって悲しいものです。

 さらに、東宝から『惑星大戦争』の原作を依頼されながらも見事に断わってみせていた小松左京氏が、昭和59年にオリジナル企画の『さよならジュピター』(予定していた『日本沈没』の森谷司郎監督が死去 橋本幸治監督・川北紘一特技監督)を発表しますが、精巧な特撮映像にこそ見応えはあるものの、物語に大した独創性がなく(そもそもの「木星太陽化計画」に必然性・緊迫感を感じさせない展開にしかなっておらず、敵対する環境保護カルト教団との闘いも陳腐で)、これまた不発に終わります。

 以来、GHQが『ハワイ・マレー沖海戦』(昭和17年)の真珠湾攻撃の特撮を本物と見間違えて(戦意高揚映画に関係したともされ)円谷監督を公職追放せしめ、昭和27年のサンフランシスコ講和条約発効からわずか2年後に発表され世界各国を驚かせた『ゴジラ』の、日本映画界に於ける優れた特撮・発想の系譜は途絶え、完全に米国映画に譲ってしまいました。

 宇宙開発も米国がほぼ掌握しています。先を行ったはずの露国はソ連共産主義を打ち負かしたことでかえって遅れ、昨今強引に横槍を入れ始めた中共は、まったく独自に且つ未だ共産党一党独裁であるからこそ比較的容易に参入しました。

 日本は米軍の統治から今もって外れず、占領憲法を無効にもせずに放置し、米軍ありきで自衛隊を第9条に於いて合憲などと解釈改憲を続けていますから、日本人をスペースシャトルに搭乗させても独自に開発など、米国にでも許してもらえないというわけでしょうか?

 そこへ鳩山首相のまるで寝とぼけたような発言です。在日米軍普天間飛行場の移設問題なども、この程度の感覚で話してきたのでしょう。まったく呆れたものです。しかも、JAXA(宇宙航空研究開発機構)に対して事業仕分けで予算削減したのは民主党ではありませんか! 広報施設建設の廃止まではともかく、飛ぶものも飛ばないですよ、これでは

 もう約2ヶ月後に迫った参議院議員選挙では、是非とも民主党に惨敗していただきましょう。それでなくとも、わが国の宇宙SF映画を観ているとみじめな敗北気分になりますから。

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『宇宙と向き合えない日本』に1件のコメント

  1. ストリートマン:

    自分の立場を未だに理解して居ないのでしょう、愕然とする言葉です。精神鑑定が必要ですね。