維新の謀略か?公立の統廃合
本日は、私の職業に関わる専門的問題提起になります。高等学校受験(中学生向け)指導をしてきた私は、大阪府の吉村洋文知事(日本維新の会)が決めてしまった高校授業料の無償化に、実は反対してきました。
無償化するなら全国一律に、且つ公立の一条校に限り、この方針を打ち出すべきは、地方自治体ではなく政府であらねばなりません。
大阪府の受験事情としては、北野・天王寺・大手前を頂点とする公立志向であり、主に私立は併願、つまり、あくまで「滑り止め」として、最後の公立受験で合格を狙う生徒や保護者がほとんどです。
東京都内ですと、私立の開成を頂点としながらも、都立日比谷も頂点であり、均衡がとれているように見えますが、私の出身である和歌山県は、私立志向でした。よって私は、受験戦争の真っ只中で近畿大学付属和歌山に入学しましたが、大阪だけが授業料無償化してしまいますと、隣接するすべての府県の私立が運営上の大きな影響を受けてしまいます。
ちなみに、私が近和歌の卒業生だから自民党の世耕弘成前参議院幹事長(和歌山県選挙区)潰しの話に敏感なわけではありません。※ 世耕氏は近大の現理事長で、私たちの頃は世耕政隆元自治相が理事長でした。
話を戻しますと、吉村府政の影響は、府外の私立のみならず府内の公立を直撃するであろうことも目に見えていました。授業料無償なら私立のほうがよいのでは、或いは専願受験で合格を手にするのが早い、と考える生徒や保護者が増えると予想され、実際そうなった顛末がこの有り様です。
私が注意深く申してきたのは、授業料そのものは無償になっても、私立は在学中に何かとお金がかかり、その時になって「こんなはずじゃなかった」などと言い出さないか、ということでした。
府政に子供たちが振り回されるのは、今回のことだけではありません。長らく続いた九学区制が平成十九年に突如、四学区制に統合され、六年も経たないうちにいきなり学区そのものが廃止されました。
学区変更時、区内最難関校の入れ替わりが起き、これも実は、公立の弱体化が始まる「序章」だったのです。それまでの「最難関」という称号を奪われたいくつかの公立が人気を失速させ、廃止された今や「かつての熱気は何だったのか」というほどです。
はっきり申し上げて、いわゆる「維新政治」の典型である「公立は不採算」「どんどん統廃合」の術策に、教育までもが巻き込まれたと申して過言ではありません。
日本教職員組合(日教組)らに惑わされないとした橋下徹元知事や吉村知事の方針には、ほかはともかく好感が持てますが、例えば「通える学校を失う子供たちの問題」といういかにも左翼・極左らしい提起の仕方に対し、恐らく吉村知事は「公立がなくても私立がある」と答えるとして、ならば公立を潰しても私立に府が拠出し続け、その私立を支えるためのお金が利権化しないか、と。(注※↓)
吉村知事は、これも恐らくですが、今回の公立の定員割れと共に既に統廃合計画を見積もっているはずです。公立の跡地をどんどん売却していく腹積もりでしょう。
それをどこの誰が買収するのでしょうか。
教育に携わる者は、公立の在り方までを語りますが、そのもう一歩先を案じてみてほしいのです。私立受験は、そもそも綺麗事ではすまない世界ですから。(※ 教育のセーフティーネットを私立に依存していくことになる吉村府政は、極めて危険だということです)