米国は対露から対中へ転換
結論から申せば、主に福建省などからやってきた客家系の華僑が多いタイ王国(泰国)が最も中共人にとって在留しやすい「第一位」というのは、当然でしょう。中共・共産党に通じているタクシン・チナワトラ元首相もその一人です。
外国人個人の不動産購入を禁じている泰国では、中共人が泰国人の協力者(ダミー)を使って合弁会社を立ち上げ、不動産を買い漁っています。目立って違法行為があれば時に逮捕者を出しますが、大抵は不問に伏され、特にバンコク都内や北部チャンマイ市内で高層マンションなどの価格高騰を招いてきました。
中には、資金洗浄(マネー・ロンダリング)に悪用される投資もありますが、タクシン氏の息がかかったプアタイ(泰貢献)党のセーター・タウィーシン首相は、中共に「甘い顔」をするばかりで厳正な対処を期待できません。
わが国については、法務省出入国在留管理庁の統計(こちらの項目2を参照)と数字が異なっており、記事の調査があくまで民間によるものであることを差し引かねばなりませんが、以前から何度も申してきた通り米国の「喰われ方」こそ大きく取り上げねばならないでしょう。
そこで、これまで「戦争扇動屋」「コワモテ外交官」などの異名をとった米国務省のヴィクトリア・ヌーランド国務次官・副長官代行が突如辞任することを五日、アントニー・ブリンケン国務長官が発表して以来、米民主党政権の内外が騒がしくなっていることを取り上げねばなりません。
あれから各方面より情報を得ましたが、共通しているのは「事実上の更迭」との答えです。彼女が対露強硬論の調整役だったのは事実ですが、彼女がウクライナ侵攻を主導して「いよいよ失敗が見えたから」というのは、少し違います。
米民主党バラク・オバマ政権下で、ヌーランド国務次官補(当時)がいわゆる「マイダン革命」を扇動してウクライナの親露政権を叩き潰しました。共和党よりも明らかに民主党のほうが「戦争ビジネス」を背景に政策を決めていることがよく分かります。
彼女はこのころ、通話を盗聴されて「クソEU(欧州連合)」とののしったことが暴露されましたが、ウクライナの「親米化」となかなか歩調を合わさない欧州各国に癇癪を起こしたほど、米政権内の「打倒露国」へ向けた調整役として強いストレスを感じていたはずです。
誕生したウクライナの従米政権にハンター・バイデン氏の不正・汚職事件を立件しないよう脅迫したのは、誰あろう現大統領のジョー・バイデン副大統領(当時)でした。この種の介入は、未だ現行憲法(占領憲法)下でさらに容易なわが国に対しても平然と行なわれています。
今月一日には、独国防軍空軍のフランク・グレーフェ准将が「クリミア大橋爆撃計画」についてオンライン会議で話しているところを、露国に傍受されてしまうという間抜けな事件が発生し、仏英米の各政権が「秘密のはずだったのに何をしているのか」と激怒したようです。慌てて独国のオラフ・ショルツ首相が火消しに奔走しました。
ヌーランド氏の突然の「更迭」は、この五日後だったのです。そもそも国務省は、副長官に三十五年以上の「外交畑」を誇る彼女ではなく印太平洋戦略で実績を積んだカート・キャンベル氏を任命したのが先月の十二日でした。
バイデン政権の方針が対露から対中へ交代(シフト)するのは、私が当初から「ウクライナを支援しても無益で(望むと望まざるとにかかわらず)露国が勝つ」と申してきたように、汚職の隠蔽と戦争利権に始まったバイデン氏とヌーランド氏を含むその周辺の失敗は、予想されたことであり、西海岸からどんどん中共人に喰われている米国として、対中強硬へ舵を切ることが必至だったのです。
ウクライナをめぐり、ここでヌーランド氏に一定の責任を負わせて(早い話が失敗と醜聞の責任をおっかぶせて)政権から去ってもらい、方針を一新して十一月五日投開票の大統領選挙で再選を狙いたいのでしょう。それがバイデン氏のやり方です。
しかし、ウクライナの現「従米お笑い芸人」政権になっても、中ウ友好協力条約(平成二十五年十二月六日締結)が無効化されていません。ヌーランド氏が吐いた「(言うことを聞かないなら)クソEU」は、北大西洋条約機構(NATO)を操縦したい米民主党バイデン氏としての紛れもない本音であり、中共を「NATOの敵」には仕立てられない以上、やはり対露強硬論は維持されます。
それでどう中共を叱りつけ叩きつけることに注力できるでしょうか。わが国は、一刻も早く自立した対中強硬外交を確立しなければ、日台共に極めて危険な状態にあるのです。
本日は、これを皆さんと共有したく、少し長くなりましたが申しました。