山の郵便配達
平成13年日本公開の支那映画『山の郵便配達』は、日本で言えば昭和50年代後半の湖南省西部を舞台に、山岳の村落に手紙を配り続ける年老いた配達人が、跡を継ぐ息子と共に最後の配達に赴く様子を描いた秀作です。
のちに香川照之主演『故郷の香り』や『ションヤンの酒家』を発表した霍建起(フォ・ジェンチィ)監督は、この父子の微妙な距離感とその変化を、手紙を受け取る人々との交流を交えながら、実に見事に描いていきます。
見終わったあとの、何とも言えぬ幸福感は、親から子へと魂が受け継がれていく美しさに、人間の本能が反応することによって得られるのでしょう。これは、かつて毛沢東の文化大革命が、子が親を共産党に売り渡すよう家族を引き裂くことから始めたのに対する静かなアンチテーゼであり、人間普遍の情愛(生命の継承)を描いて日本でも高い評価を受けました。
驚くべきことは、山岳地域に於ける中共国内の郵便配達制度でありましょう。まるで前近代的な様子でありながら、重ねて断わるが日本の昭和50年代後半にまだこのような郵便配達をしていた国家の、近年のめまぐるしい経済発展は何かということです。
http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/100510/plc1005101302003-n1.htm
▲産經新聞:中国人観光客のビザ発給を緩和へ 「ゴールドカード」保有でOK
日本政府(鳩山政権)は、ごく単純に中共からの観光客増加を目指してさらなるビザ発給の緩和に踏みきるようですが、公称13億人の国家に富裕層がわずか1?2億人しかおらず、残る圧倒的多数が貧困層で、もはや明日の食い扶持を稼ぐためなら「食の安全も環境保護もない」という彼らの現状を、共産党政府と同じように目を伏せていてはいけません。
或る中小企業経営者の方に伺った話では、中共国内でのビジネス展開に欧米企業を一枚咬ませるとうまくいくが、日本企業単独で、例えば現地企業と合弁会社を設立すると、大抵は日本人のほうが何らかの酷い目にあうと言います。
霍監督は、今や共産党政府も(非公然ではあるが)失敗を認めている文化大革命的なるものを否定しても、決して自分たちの国家を否定していません。しかし日本の場合は、或る種のポピュリズムとして文化人も政治家さえも反権力をうたって反日本を説いてしまうのです。そして、安易に米国や中共など他国の価値観に迎合してしまうものですから、そうはしない欧米企業は強くても、日本企業はどうしても弱くなり、現場ではたらく私たちが最も酷い目に遭うのでしょう。
中共政府のゆがんだ経済政策が拡大すればするほど、山の郵便配達のような暮らしは否定され、生命と自然の継承などお構いなしの暮らしへと人々が奔らざるを得ません。日本に渡るためならゴールドカードの偽造も辞さないでしょう。そうした傾向は、なり振り構わぬ資源外交で取り込んだアフリカ諸国にも影響を及ぼし始めています。
果たして、このような国家から大量の観光客や移民を政策的に受け入れて、日本政府にどのような歓迎の準備ができているというのでしょうか。山の郵便配達の父子はその生き様から、日本人の私たちにさえも力強く問いかけているような気がします。
皇紀2670年(平成22年)5月11日 5:03 PM
日本の政官財の人達の思考に国家が無いのが恐ろしい事。アジア諸国は日本に遅れる事40年にして国家意識に目覚めてきたのに日本は崩壊の方向に向いている。