これは攻撃の合図なのか?
http://www.jiji.com/jc/a?g=afp_cul&k=20120227028459a
▲時事通信:「アーティスト」が作品など5冠=主演女優賞はM・ストリープ−米アカデミー賞
二十六日に開催された米国のアカデミー賞授賞式(主催:映画芸術科学アカデミー)で、最優秀外国語映画賞に義蘭(イラン)の『別離』が選ばれました。義蘭国民で初めてこの栄誉を手にしたのは、『水曜日の火花』でシカゴ国際映画祭ヒューゴー金賞、『彼女が消えた浜辺』ではベルリン国際映画祭の銀熊賞 (監督賞) を受賞したアスガル・ファルハーディー監督です。
本作は、やはりベルリン国際映画祭で金熊賞および二つの銀熊賞 (女優賞と男優賞) を受賞しており、この賞の最有力作品といわれていました。わが国では今春から公開予定です。
しかし、義蘭との緊張関係を維持する米国の、その最高位にある映画賞が、一切の政治的要素を排除して純粋に義蘭の作品を讃えたりなどしません。映画人が選出するこの賞にせよ、新聞社記者らが選出するゴールデングローブ賞にせよ、これは過去何度も私たちのような映画研究に取り組んだ者、或いは映画好きによってひそかに指摘されてきたことです。
はっきり申し上げて受賞した理由は、ファルハーディー監督が義蘭の回教文化指導省から映画製作禁止令を受け、政府の援助をまったく受けずに活動を続けてきた経歴にあります。
本作も、首都テヘランで比較的よい暮らしをしている中年夫婦の、破滅的な離婚劇に始まるそうで、義蘭社会が抱える男女と親子、信仰と正義の問題に鋭く迫っており、確かに早く観てみたい一本ではあります。
そのような作品であるからこそ、アカデミー賞は義蘭のこの作品を決して無視しなかったのです。代理店や代理人を使った民主党(米国)による政治介入が審査にあったはずであり、今回の受賞はすなわち、米国政府が義蘭政府を「叩く(攻撃する)」合図にほかなりません。
この分析が外れてくれることを切に願いますが、わが国政府が親交の深い義蘭に何もできない、英仏米ら政府に何の注文も出せずに原油輸入量を段階的に減らすと発表してしまったことが、まさしく占領憲法(日本国憲法)下の「何事にも指導的役割を果たせない日本」そのものであり、アザデガン油田の件といい、私は悔しいのです。
くしくも、これは単なる偶然でしょうが、最優秀作品賞と監督賞、主演男優賞を仏国の『アーティスト』が独占し(伊拉久戦争の前後であれば絶対に考えられなかったことで、主要部門なのに米国映画が選ばれず)、最優秀主演女優賞を受賞したメリル・ストリープさんが演じたのは、英国のマーガレット・サッチャー元首相とは、あまりにもよくできた話ではありませんか。