中共vs泰緬という事態

皇紀2671年(平成23年)10月19日

 http://sankei.jp.msn.com/world/news/111016/chn1110161……
 ▲産經新聞:中国人船員殺害 高まる緊張

 目下、泰王国(タイ)では例年より遥かに酷い洪水被害で300人以上もの死者が出ており、在泰日本国大使館に問い合わせますと、首都のバンコク都内13区15カ所が極めて危険な状態にあるといいます。また、南部プーケット県でも大雨が続き、もはや国土の3分の1が水没しかかっているほどです。

 バンコクからパタヤーに向かう途中には、大規模な工業団地があり、わが国企業も多く進出していますが、本年はつくづく私たちが自然とどう向き合うか、厳しい現実を突きつけられることが多いように思います。自然祭祀を忘れた机上の市場競争原理だけでは、わが国企業の持つ生産力を次世代へと継承していくことなど決して出来ません。

 さて、そのような泰王国にもう一つの禍がふりかかろうとしています。今月5日、メコン川流域で商船の中共人乗組員12人が緬国(ビルマ=ミャンマー)の麻薬密売グループに殺害されるという事件が起きました。

 問題は、事件に対する中共人(実態としては現役の人民解放軍人)の反応が激情化し始めていることであり、泰王国と緬国に人民解放軍の特殊部隊を派遣して報復せよという声まであがっていることです。

 自国民が他国で武装勢力に殺害されたり、工作員に拉致されれば、当然「特殊部隊を派遣してでも」という対処法が検討されるでしょう。中共人の怒りはごもっともです。

 しかし、この問題は産經新聞社記事が書く以上に根深く、確かに中共の覇権拡大の手がメコン川流域に及ぶ可能性を一つとして、中共と通じてきたタクシン・チンナワット元首相の実妹であるインラック首相の対中「忠誠」度が問われており、最も緬国現政権の変化があります。ともすれば泰王国は悪いことの全てを(これまで通り)緬国のせいにして、中共の怒りを回避することが可能なのです。

 メコン川沿岸に人民解放軍が常駐すれば、間違いなく越国(ヴェト・ナム)が黙っていませんが、彼らは一党独裁体制の変化に向けた過程研究のため、以前わが国を代表団が訪問しており、実は緬国のワナ・マウン・ルウィン外相も20日、何と緬国外相として16年ぶりに訪日します。やはりその目的は、民政移行したとはいえ軍事政権からの本格的脱却過程に日本の支援と協力を求めることですが、その奥には中共と距離を置きたいという真意があるのです。

 中共は、周辺にいわゆる「衛星国」を置こうと計画してきた節があり、ここでも何度か指摘したように、泰王室を貶めるタクシンの旧タイ・ラック・タイ党を中共が北京に支部を置いてまで支援してきました。かつての涅国(ネパール)も、まんまと3年前に王室を奪われ、2つの共産党に政権を担当させています。わが国も対岸の火事では済まされません。

 緬国現政権の昨今の変化(政治犯の大量釈放や中緬協力事業だったミッソン発電所の建設中止など)は、媚中政策からの脱却という国家的転換を意味している可能性は極めて高く、中共の現役軍人たちがこれほど苛烈に今回の事件を取り上げるからには、北京外交部を無視した緬国への軍事的恫喝を目的としている可能性もあるのです。

 わが国は、こうした東南亜の情勢を黙って眺めていてはいけません。海底資源開発にも関わる沖縄県の防衛について、越国や比国(フィリピン)、緬国、そして印国(インド)との関係強化によって大きく前進させる絶好の機会を迎えています。「日中戦争」の火種を抱え続けることは、先々わが国の弱点にもなりかねません。亜州の多くの支持を得て一気に強攻策に出ておく必要が今こそ、あるのです。

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