【明解】TPP阻止せよ!

皇紀2671年(平成23年)1月24日

 いよいよ第177通常国会が24日に召集されます。菅改造内閣人事の大きな特徴は、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)への参加に向けた強い意志を感じるものでした。菅直人首相は、これを「平成の開国」とうたっていますが、果たしてそうでしょうか。

 この問題については、昨年11月8日記事で明確に「不参加でよろしい」と申しましたが、国内では、TPPに参加しなければ「経済発展の一層の立ち後れを招く」と政治家や一部の文化人がメディア報道に乗せて発言しており、特にこれらへの批判は農業界からのみという現状にあって、時には彼らが「競争から逃げる既得権者たち」と揶揄されるほどです。

 では、本当にTPP参加は日本の得にならないのか、或いは農業だけが不利であり製造業は大躍進の機となりうるのでしょうか? この疑問に、京都大学大学院工学研究科の中野剛志助教に伺ったお話などを元にして明解にお答えし、提言することにしましょう。

 昨年記事でも申したように、TPPはいわゆる「経済小国」4カ国間の締結に始まり、その後に越国(ヴェト・ナム)や馬国(マレーシア)、秘国(ペルー)、米国、豪州が交渉に加わりました(未だ参加ではない)が、最も大きな国内総生産の値(67%)と内需の値(73%)を誇るのは当然米国であり、これに次ぐ豪州でさえ、それぞれ5%と3.7%の規模に過ぎません。残る7カ国を合わせても、たったの4%と内需に至っては0.1%です。

 これに日本が参加して、豪州と外需依存の7小国を合わせたわずか3.8%の内需に向かって、一体何を輸出拡大出来るというのでしょうか。製造業にとっても、何の旨味もない話であることがこれで分かります。

 では、日本は米国に売りつけることが出来ないでしょうか? バラク・オバマ大統領はTPPを自身の輸出拡大政策に利用すると明言しており、米国が物を買わせたい国は、萎んだと言っても国内総生産24%と内需23%を誇る日本に他なりません。残る参加国はまるでお話しにならないのです。

 講和発効と同時に無効のはずの占領憲法を放置して対米従属に甘んじているようなわが国政府が、この米国政府の猛烈な方針に対抗し、私たちの経済活動の防波堤を築いてくれると思いますか? その防波堤(関税)を産品の例外なく壊すのがTPPであり、昨年記事に並べた過去の所業を見直しても、日本政府を信用出来る要素などありません。

 わが国の関税は俗に高いと言われてきましたが、欧州連合(EU)各国のそれに比べて実は産品平均値で既に低く、関税撤廃効果などほとんどないのです。

 それでもTPP参加を目指す政府と、TPP参加の世論形成を目指すメディアがなぜわが国にあるのか、という占領統治体制の維持に端緒がある問題に、一切の疑問を呈さない「騙される」体質こそ、私たちの身体を蝕んでいます。

 対外不平等と戦って関税自主権を獲得した明治の開国以来先人たちの努力と、関税自主権を手放そうとする菅内閣の言う「平成の開国」は、呆れるほど異質であることを、お願いですから皆様、自覚して下さい。

——————————以下、10月24日追記記事より抜粋

 http://dl.med.or.jp/dl-med/teireikaiken/20101201_1.pdf
 ▲日本医師会:日本政府のTPP参加検討に対する問題提起(PDF)

 日本医師会と私の間にまさか何の利害関係もないことを前提としてお断わりしておきますが、このような角度から環太平洋経済連携協定(TPP)に反対する声は必要です。民主党の前原誠司政調会長が煽り続けているような農業問題だけが、決してTPPの障害ではありません。

 米国にはこの国民皆保険制度がなく、よって保険と金融が密接に結びついてきたことは、皆様もご承知の通りです。医療や保険の分野で、一方的にわが国政府の福祉政策がTPP参加国企業の不利益をもたらすと判断される場合、その防護壁は簡単に取り払われてしまいます。

 そうすれば、参加国企業の個人保険(プライヴェート・インシュアランス)加入が促進され、国民皆保険制度は解体、所得どころか生命の「格差」がわが国でも生じるでしょう。

 民主党野田内閣が参加を表明しようとしているTPPには、当初4カ国によって作成・発効した全20章から成る参加国合意文書(アグリーメント)が既にあり、章ごとに複数条文が存在しています。

 しかし、政府はこの英文原文を国語訳して公開もせず、私たちに何の情報も与えないまま、メディアもただ漠然と報じているような状態です。この現状に風穴を開けられたのが、分析家の青木文鷹氏でした。

 http://www.amazon.co.jp/dp/4594063683?tag=23ha……
 ▲Amazon.co.jp:TPPが日本を壊す(扶桑社新書)廣宮孝信、青木文鷹

 また、氏は「米国の思惑」だけに反対することは危険であり、米国政府が参加見送りを表明すればあたかも「日本の一人勝ち協定」であるかのように演出され、参加議論の障壁は取り除かれるが、日本参加の後に何食わぬ顔で米国に参加されればおしまいだとも警告しています。

 全くその通りでしょう。経済・金融に関する協定に於いて、多国籍企業群の動かす米国政府が「使える手は全部使う」ことは、北米自由貿易協定(NAFTA)の例を見ても全世界の知るところです。米国はそう出来るだけの基軸通貨を持ち、よって軍事力を有しているのですから仕方がありません。一方わが国には、円はあっても日本国憲法(占領憲法)によって軍はおろか交戦権すらないのです。

 それでいて経済規模の大きなわが国は、TPP合意にある市場開放を強制され、地方公共事業も日本人の雇用さえもその対象となり、ほとんど根こそぎ外国企業と外国人に持っていかれるでしょう。

 農家の皆様のみならず、会社勤めのそこのあなた、絶対にTPP参加には反対して下さい。もはや1億の国民が反対の声を上げるほか、参加を止めることは出来ない状態に突入しているのです。

 なお、TPP参加阻止が実現したあと、今度は日中・日韓の自由貿易協定(FTA)締結に血道を上げ始めるであろう「元TPP反対派」に誘導されないよう、気をつけましょう。

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『【明解】TPP阻止せよ!』に8件のコメント

  1. ストリートマン:

    平成の開国?日本は食料以外は、もう「フリー」状態、之以上何もすることはなし。
    FTA、ニ国間交渉は力が有るなら、ドンドン日本が必要ならやれば良い。何でTPPなのか?アメリカと日本の問題だけではFTAでも充分。

  2. mama:

    いつも拝読させていただいています。

    民主党政権、経団連、マスコミが、推し進めようとすることは、必ずと言っていいほど日本国の為にはなりません。
    関税自主権の放棄をすることになるなど、ひと言もいわず国民を騙そうとしているのですね。
    親米でも親支那でもなく愛国者の政党に政権を担ってほしいものです。
    50歳を過ぎても左翼の人って狂っているとしか思えません。

    これからも勉強になるお話をお願いいたします。

  3. 心神:

    時の明治政府は関税自主権回復に苦労せれたんですね。
    国内産業空洞化防止には必要な関税ですが‥各社一斉に、産経新聞までもがTPP容認姿勢。
    経団連の覇気のないボンボン狸顔米倉会長にいたっては、移民政策まで言う始末‥
    何か脅されてるんですかね?
    『てめぇ!とこがだらしねぇからョ~ズタボロドルになったんじゃねぇのかよう?よう・よう?てめぇのケツはてめぇで拭きなぁ~!』

  4. 宮澤雄二郎:

    TPPのお話、いろいろな方の説明を読んでおりますが、遠藤さんのものが一番分かりやすかったように思えました。ありがとうございました。

  5. ひろ:

    もし、NLCを購読されていたら、1/27号にて指摘されている、経済のグローバル化が進めば進むほど、国民各階層の世論が割れ、階層利害の分裂が起こる可能性も、TPPでラジカルな貿易自由化を行うことに伴うデメリットの一つとして留意されるべきかと思いました。
    バカでかいアメリカや、軍事政権ともいうべき中共ならいざしらず、それらに挟まれた日本で階層分裂が進めば、国としての弱体化を意味し、本当に取り返しのつかないことになるのではないかと危惧します。

  6. TPP反対:

    デフレ・失業を促進するTPPには大反対!!
    私達にとってのメリットが何一つないです。

    農業破壊、デフレ、失業以外で心配なのは医療・保険です。
    日本の医療・保険がアメリカみたいになるなんて、絶対いやです。

  7. :

    再び政権を交代しないと阻止はかなり難しいでしょう。これは戦争とおもってたたかうつもりになりましょう・。。

  8. 大阪府:

    苫米地英人・tppで検索してください。動画でわかりやすく説明しています。医療・水道・日本人の貯金1500兆・消費税増税のこと。拡散してください。