TPPは不参加でよろしい

皇紀2670年(平成22年)11月8日

 TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)を巡る議論について、菅直人首相は6日、当初意気込んでおられた参加表明を見送り、明確な方針を提示しないままAPEC(亜州・太平洋経済協力会議)に突入します。

 このTPPは、自由貿易に頼りたい星国(シンガポール)、文国(ブルネイ・ダルサラーム)、新国(ニュージーランド)、智国(チリ)の4カ国が平成18年に発行した協定であり、日本政府が突然参加を言い出した背景には、米国の参加協議開始表明がありました。

 しかし最も忘れてはならないのが、日本の食糧自給率は致命的に低いという現実です。少しでも多く見せかけるために農林水産省が工夫を凝らした「熱量基準(カロリーベース)」計算に於いても、たったの4割しかありません。

 経済産業省は不参加の損失を約10兆円と算出し、農水省は参加した場合の損失を約11兆円と予想しています。財界からは参加要望の声が上がり、農家からは不参加要望の声が上がっていますが、この対立は一体何なのでしょうか。

 それは、日本がいざと言う時にすべて国民の食糧をまったく自給出来ないから起こるのです。財界は「そんなものはカネで他所から買えばいい」と言ってきました。大手外食産業も「安く仕入れられるから買えばいい」ということに違いありません。確かに経済力があり、日本が信用されているうちはよいでしょう。

 ところが、あらゆる事態を予測して対応出来るよう兵站を練ることもなく、日本政府はいつも一方通行なのです。国内で天候不順などによる不作が起きた場合に海外から輸入するくらいを基本にしておかなければ、無関税化などの貿易自由化をして日本が得をする、つまり輸出出来る農作物はあるのでしょうか?

 いえ、本当はあります。日本産の米や野菜は上質で需要があり、自民党農政の失敗さえなければ今ごろ日本中に休田・廃田があふれることはなかったのです。自給を確保し、さらなる開拓の地を求めるならTPPは利用の価値があったでしょう。

 これは決して自動車や電化製品などのみで議論してはならないことで、私は、日本が国家存立の大前提である筈の食糧自給を確立しない限り、はっきりと不参加を表明するべきだと思います。どうも米国は日本の参加を「協議の遅延を招く」として嫌っているようですし、米中などが加わって出来上がった規則が気に入らなければ、別の協定を日本が作ってしまえばよいのです。何も慌てる必要はありません

 農業ではなく農協(農業協同組合)を守ってきただけの自民党と、労組(労働組合)的発想でカネをバラ撒くしか思いつかない民主党のいずれも、もう農家の信用を得ていないようです。主としてGATT(関税・貿易一般協定)宇柳具多角交渉(ウルグアイ・ラウンド)をしても分かるように、この手の国際協議に対する日本政府の取り組みをまったく信用することは出来ません。

遠藤健太郎講演会 動画2

 当日お越しいただきました皆様に、まずは心より御礼申し上げます。

 

 http://www.youtube.com/watch?v=2Uq0-QQKpb0

 景気対策、貧困問題を声高に叫ぶ同じ口で、なぜ日本は無邪気に「中国進出」を語れるのでしょうか。食糧自給という国家存立の大前提を見逃して「他国から安く買えばいい」と言ってきた日本は、いつか皆が飢えに苦しむ日が来るのではないか、と私は気が気ではありません。

 いえ、そのような不測の事態は絶対に起こり得ないと誰が言い切れましょうか。中共が平成22年7月より施行した「国家防衛動員法」は、いざ対立する国家に対して全人民が敵兵となり、外国企業の財産をすべて没収するというものです。これでもあなたは、日本の内需回復よりチャイナマネーこそ重要だと思われますか?

【続報 関連記事】
http://endokentaro.shinhoshu.com/2011/01/post1815/

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『TPPは不参加でよろしい』に5件のコメント

  1. LINEAGE:

    はっきり書いてもらってすっきりしました。そうだよ!TPPなんか参加しなくても、そっか!日本が協定を作っちゃえばいいよね。そんな根性ないから困るんだけど・・・。動画見ました。国防動員法の危険に触れた企業セミナーとかないもんね。よく解りました。この動画、友人にも薦めます。

  2. 素浪人:

    そもそも、農業を、工業・商業などの他の産業と同一に論ずることには、無理がある。特に日本の如き、農業が滅亡の淵にある国に於ては。一言で言えば、自給自足が国家の大原則だ。工業原料など、国内で賄えないものを例外として、輸入すれば良い。また、日本の産業界と言うのは、本当に腐っていると思う。本当に考え方が刹那的で、国家百年の大計などなく、拝金主義にまみれ、売国行為を平然と行っている。身近な一例を挙げれば、秋葉原の量販店は、焼き討ちにしたい位のおぞましい連中だ。私は、最早かの地に足を運ぼうとも思わない。

  3. OnmyF:

    食料自給率については生産額ベースで70%という報告もあります。http://www.maff.go.jp/j/zyukyu/fbs/pdf/21slide.pdf減反をやめたり、小麦、大豆など自給率をあげないといけないと思いますが、極度に日本の自給率が悪いという決めつけはいかがかと思います。「大嘘だらけの食料自給率」という書籍もありますし、日本の食糧危機を否定する側の意見も見るのも面白いかと思います。

  4. ストリートマン:

    国防動員法・・・左翼の人間なら最初に中国に抗議してもおかしくない様な問題ですが、日本で「大反対」とやっても中国・ソ連には言わない。戦後左翼の法則だけは律義に守ります。日本人もいい加減に「日本」が無ければ中国も韓国もない事を知るべきでしょう、日本の大きさは日本人が考えている以上に大きいのです。

  5. knnjapan:

     ご存じだとは思われますが、生産額基準で算出された食糧自給率は、記事でご紹介申し上げた熱量基準よりもっと誤摩化された実体のない数字です。