中東難民に見る日本の課題

皇紀2675年(平成27年)9月6日

 http://jp.wsj.com/articles/SB10327460236075474355904581213……
 ▲ザ・ウォール・ストリート・ジャーナル:ハンガリーで足止めの難民、オーストリアとドイツが入国許可

 トルコ(土国)の観光地ボドルム近郊の砂浜でシリア(叙国)難民の男児がご遺体となって発見された悲劇は世界中を駆け巡り、独国やオーストリア(墺国)、それまで慎重だった英国らが大規模な難民の受け入れを表明するに至りました。

 難民受け入れに反対するハンガリー(洪国)が墺国へ移送を始めましたが、その墺国では先月末、東部ブルゲンランドの高速道路路肩に駐車された冷凍車から七十一人もの叙難民のご遺体が見つかっています。

 私たち日本人の興味をほぼ引いていない間にも、彼らは地中海を粗末な手製の船で渡り、ロイター通信によると二千人以上もの人たちが海上で亡くなっているのです。

 祖国を捨てるという行為はよほどのことがなければできません。周知の通り叙国は、四年前から内戦が続き、破壊団体「ISILまたはISIS」に入り込まれてからは混乱に拍車がかかりました。

 米国がバッシャール・アル=アサド大統領を武力介入で引きずり降ろそうとした際、私は「絶対に日本は賛成すべきでない」と繰り返し主張し、安倍晋三首相が米政府に注文をつけて諦めさせたと知った時には救われた気がしましたが、それはあくまでわが国にとってであり、米国はその後もまとまりを欠く反政府組織を陰から支援、ついにはISをのさばらせるに及んだのです。

 間違いなく米国はISを攻撃しながらも意図的に存続させています。イラン(義国)らがISとの闘いで消耗するのを楽しみにしているのでしょう。その犠牲が目下の叙難民であり、引き受けさせられた独国や墺国なのです。

 しかし、今日の中東の混乱の元凶はかつて英国の無責任にあり、英米が責任をもって対処すべきだと申しておきますが、そのさらなる裏の原因は、米石油メジャーが露国のユダヤ系新興財閥と組んだ謀略をウラジーミル・プーチン大統領によって叩き潰された十二年前の事件にさかのぼります。旧ユコスのミハイル・ホドルコフスキー氏(ユダヤ人)が逮捕されたいわゆる「ユコス事件」です。

 ここから阿大陸北部を含む中東で「武器・弾薬による革命の嵐」が吹き荒れ、グルジアに始まりエジプトもリビアも国が壊されていきました。ウクライナ革命といい、これらは露国への報復です。

 難民・移民は、その人たち自身も受け入れる国の人たちもほとんど誰も幸せになれません。移民を推進するような政治家は、明らかに人道上の罪を犯していると申せます。やむにやまれぬ難民の受け入れは、容易ではないのです。

 安倍首相がホルムズ海峡の話ばかりすることへの不信感を私が何度も申してきたのは、このようなこともあるためで、確かに難民・移民に強硬な姿勢の東欧諸国は少子化が進んでいますが、それは経済との因果関係が大きく、まずわが国の課題は経済の立て直しです。

 「そのためには大量に移民が要る」というのは(このまま推移した場合の未来の予測ではなく)現状に於いて信憑性のない論調であり、一方自ら中東の悲劇に手を貸すようなことも言うべきではありません。

 人間にとっていわば「受動的な難民・移民」を生まない世界を作る努力が、私たちに求められているのです。

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『中東難民に見る日本の課題』に3件のコメント

  1. きよしこ:

    男児の遺体が砂浜でという事件はネットニュースで目にしましたが、冷凍車から71人もの遺体がという件は初めて知りました。内容の凄惨さからか、それとも難民の死亡事案があまりに多いからか日本のメディアはまともに報道することを避けているような気がします。

    義国を摩耗させるために米国がISを意図的に跋扈させているというのは目から鱗。米国の行いはまさしく鬼畜の所業そのものではありませんか。表現が不適切かもしれませんが、こんな目論見のために危険に晒され、命を落としては祖国を追われた難民は死んでも死にきれないでしょう。

    難民・移民に関する報道が過熱する中で一部ネット上では「日本にも大量に流入してくるのではないか」といった論調が見られますが、そもそも日本は幸か不幸か、世界的にも珍しい「英語音痴で、しかもそれを大して恥と思わない国家」であり、精一杯「おもてなし」をしようとするサービス精神にあふれる一方で、いきなり不躾に英語で話しかけてくる外国人には「日本語しゃべれや」と「おことわり」できる民族なわけですから、「英語が話せない、話せるようになろうとも思わない日本人の国には移り住めない」と、むしろ難民が日本への移住を嫌がると思います。

    とはいえ、(経済界を中心に)移民を大量に受け入れねば日本は破滅するという論調を力ずくでも主流にしたがる者たちが大勢いるのも否定できない事実です。もちろん米国のように、敵国としている国家を摩耗させるためにテロ組織を意図的に存続させるということにはありえませんが、人をまるで使い捨てのモノのように認識し、無計画・無軌道に受け入れを行おうものなら、そう遠くない将来、「東の果ての鬼畜国家」として永遠に非人道国家としてのレッテルを貼られ続けることになるのでしょう。

    先生が何度もおっしゃっている通り、10月からの、内需回復のための経済対策はまさしくこの先の日本を占う分水嶺となることは間違いありません。戦争法案反対などと言って朝から晩まで中国共産党の走狗でしかいられない野党(野盗?)の連中はそのあたり、分かっているのですかね?

  2. 心配性:

    >安倍首相がホルムズ海峡の話ばかりすることへの不信感

    誤解を招いていますよね。
    日本政府は現在イランとの「投資協定」の締結を目指して7日からイランで協議を開始させますし、外務大臣も近く訪問するはずです。

    「難民」ではありませんが、日本も景気の良い時代には、イランイラク戦争で荒廃したイランから、何万人も労働者を受け入れる事ができました。

    当時我が家の近所の小さな建設会社では、3~4名のイラン人を雇っていましたが、彼らは当時手取りで20万円以上の給料をもらっていたようです。
    当時イランの物価は激安でしたから、何年か真面目に働けば故郷に家が建ったそうです。

    しかし、日本は経済的に、そして高齢化も進み、もうそんな呑気な時代じゃないですね。
    「日本も避難民を受け入れろ」と国際機関から責められているようですが・・・。

    シリアの人々は元々教育レベルが高く、英語を始め外国語がペラペラな人も多く、比較的豊かでしたから、ヨーロッパ社会で生きていく事は比較的容易でしょう。
    内戦前の暮らしに満足し、「将来は故郷に帰りたい」と願っている人も多いようですから、受け入れも一時的なもので済むかも知れません。

    日本人ジャーナリストの中には、「反アサド勢力」に好意的なあまり、あたかも「フルスペックの集団的自衛権の行使」さえ容認し、自衛隊もアサド攻撃有志連合が結成されたらその列に加わるべきだと言わんばかりにけしかけるおっさんもいますが、さすがに飛躍が過ぎると感じます。

  3. ゆき:

    中東はわけがわからん状態に。この頃思うこと、それは新聞の投稿欄がごく身近な話題ばかりで、しょうむない。町内の爺さんおばさんがどうしたこうした、井戸の中の蛙の会話。郵貯や年金株式運用に米証券が参入してきたとか、企業の内部留保が300兆円!とか年金がこれから先、削られてゆくなどそんな投稿は見たことがない。シリアの溺死男児のニュースが欧米で一面に載ると日本も載せる。もっと独自の視点で新聞を構成できないものか。テレビも新聞も同じニュースばかり。欧米は年配の女性でも戦地のレポをさせられるようで、日本女性とはレベルが違う。男性も欧米の受け売りが多い。言葉の事もあるが。シリアはロシアがバックにいる限り、どうしようもないだろう。安倍氏は江戸時代の三井ら御用商人のように米国に尽くす。幕府に踏み倒されて破産した商人の顔と2重写しになる。