派遣法改正…選択の剥奪

皇紀2675年(平成27年)6月20日

 http://www.sankei.com/economy/news/150619/ecn150619……
 ▲産經新聞:労働者派遣法改正案、衆院通過 民主など3党は退席 同一労働・同一賃金法案も

 週末に陰鬱な話はしたくないのですが、さまざまな議論があることを承知で簡単に申せば、安倍内閣は「人間倉庫」「売労置屋」こと人材派遣屋の某取締役会長を利する政策には無気力に従うのか、ということに尽きます。

 ただ決して竹中平蔵氏だけが諸悪の根源というわけではなく、一般社団法人日本経済団体連合会(経団連)が労働者派遣法の改正を後押ししてきたのは、今や大企業のほとんどが派遣法施行のおかげで人材のアウトソーシングをグループ内子会社にやらせているからでしょう。その種の子会社をわざわざ作って事実上のインソーシングのくせにアウトソーシングを装い、いわば二重に儲けているのです。

 正社員(正規雇用)と有期・パート・派遣労働(非正規雇用)に格差があるのは当たり前であり、さもなければ正社員は浮かばれません。竹中氏が「正社員という既得権益」などと吐き捨てたことに従ってこの格差を無理矢理是正するのはおかしいわけですが、同一労働・同一賃金のさらなるおかしさは、時給換算にするとパートより正社員のほうがはるかに安い場合があることではないでしょうか。

 一方、非正規雇用のほうが働き方として都合がよいという個別の声は確実にあり、以前にも申しましたが、政府が数値目標を掲げて何が何でも女性の管理職を増やそうとしたり、担当や役職(責任)によるという修正は入ったものの同一労働・同一賃金と言ってみたり、わざわざ有期の非正規雇用を無期限にしてみたりするのは、前出のような大企業の「二重のぼろ儲け」に規制をかけるのではなく国民の自由な選択に規制をかけたようなものです。

 私がかねてよりわが国の最低賃金(独国で約千二百円に対し、東京水準で八百八十八円)を引き上げるよう求めてきたのは、デフレーション脱却目標にそれが全く含まれていなかったからで、もし仮にもギリシャ破綻を端緒に再び円高へ突入した場合、安倍内閣の経済政策(アベノミクス)など木端微塵に吹き飛んでしまいます

 わが国の成長戦略有効期限は間違いなく東京夏季五輪開催の五年後までです。開会式の直前で日本経済は停滞基調に入るでしょう。それまでに何としても基礎体力をつけておかなければ、再び「失われた二十年」がやってくるのです。

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