中露爆撃機と北のミサイル

皇紀2682年(令和4年)5月26日

中ロ爆撃機が共同飛行 クアッド首脳会議けん制か―防衛省:時事ドットコム

防衛省は24日、中国とロシアの爆撃機計6機が日本周辺を共同飛行したと発表した。東京で開かれた日本、米国、オーストラリア、インドの連携枠組み「クアッド」の首脳会議を意識したけん制行動の可能性がある。ロシア国防省は同日、中国機と「共同パトロール」を行ったと主張した。…

(時事通信社)

 米民主党のジョー・バイデン大統領が初来日し、安倍晋三元首相提唱の日米豪印戦略対話(クアッド)について、訪韓には随行しなかったアントニー・ブリンケン国務長官を交えて話し合われた日米首脳会談等を経て、中露がそれぞれの反応を示しました。

 中露が機を一にしてわが国周辺を軍機や軍艦に徘徊させるのは、これが初めてではありません。以前から中露それぞれに思惑が違うのです。

 まず太平洋侵略を長期目標に掲げる中共は、自分たちが新南群島(南沙諸島)近海で東南亜諸国に対するとんでもない侵略行為を実行していることに日米が合同軍事演習等で牽制してくることへの対抗を目的としています。

 しかし、露国はこれと全く関係がありません。ウラジーミル・プーチン大統領は一貫して、現行憲法(占領憲法)下のわが国が米国の安全保障体制に依存し続けることを警戒している(打破したい)のです。

 彼が安倍元首相と二十回以上も首脳会談を重ねたのは、当初「自主独立派」のような主張をしていた安倍氏に期待したからであり、途中で安倍氏の「対米従属」が見えて突如日露講和交渉から身を引きました。(いちいち対話が噛み合わなくなった)以降の会談は、いわば安倍氏への牽制目的だったでしょう。

 そこへ北朝鮮がまたも長距離弾道弾を発射しました。平壌直轄市北部の順安から大陸間弾道弾(ICBM)を含む三発だったと分析されています。

 これに絡む報道のほとんどが「対露に追われるバイデン大統領へ『北朝鮮のことも見て』のアピールか」などとまとめていますが、まるで的外れです。もし本当にそれが目的であれば、米韓首脳会談の前に発射したでしょう。今回は何といっても訪韓が先でしたから、そこに焦点を絞る絶好の機会でした。

 ところが、実際には日米首脳会談が終わった後の発射であり、しかも北朝鮮の弾道弾開発が中共ではなく露国と連動してきたことにウクライナ侵攻中の今回こそ注目しなければなりません。

 二十四日記事前段で触れたように現下の北朝鮮は、突然の武漢ウイルス(新型コロナウイルス)騒乱さえ中共ではなく露国との何らかの思惑で動いています。仮にもウクライナ侵攻による疲弊で露国が弱体化すれば、中共の覇権は大きく拡がり、北朝鮮にとっても不愉快を超える脅威になりかねません。

 北に弾道弾発射を促した露国は、露国の目と鼻の先から「米国は出て行け」という国是的怨念があると共に、わが国に対して「露国と交渉しろ」という記号を送っています。早い話がカネで日露講和(領土問題解決)の席につくという意味でしょう。

 外務省も首相官邸も、この記号に気づいていますか?

 知床遊覧船の事故発生から断続して申してきましたが、自発的捜索や逐一の報告など日露の海難救助等に関する協定以上の対応を見せる露国に対し、岸田文雄首相自らが何も述べないという体たらくは、現政権が日露講和に全く関心がないことを示しています。

 これでは、北海道はいつまでも一部の行政区域を欠いたままです。日米の太平洋防衛を前提としても、いわゆる「北方領土問題」は、わが国自身が解決しなければなりません。それを妨害する米国の思惑にやられ続けるか、思い切って飛び込むか、その決断もできない岸田首相に為政の力はないのです。

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