露国に試されている外務省
http://www.47news.jp/CN/201109/CN2011091101000571.html
▲47NEWS(共同通信):ロシア要人が国後、歯舞訪問 首相側近、インフラ視察
シロヴィキ(ソ連国家保安委員会=KGBの出身)の有力者として、露国のウラジーミル・プーチン首相(前大統領)の側近中の側近と言われているニコライ・パトルシェフ安全保障会議書記が11日、北海道国後島と歯舞群島の水晶島に上陸しました。
昨年11月にもドミートリー・メドヴェージェフ大統領が国後島に上陸していますが、これは同年9月に沖縄県石垣市尖閣諸島沖で中共漁船が海上保安庁巡視船に当て逃げし、民主党菅内閣が法を曲げる対応をした後のことだっただけに、領土問題で「民主党の腰抜けぶりが招いた災厄」と指弾されたほどです。
私はこの時、実は台湾の帰属確定闘争が及ぼした影響であることを指摘し、私自身が米国で訴訟を起こした台湾人活動家と面談した上で、林志昇氏の帰属問題提起を数人の露国人(恐らく露国政府職員)が警戒して盗み聞きしに台北まで来ていた事実を暴露しました。
台湾の帰属が国際法上未定である一方、千島列島と南樺太の帰属は、桑港(サン・フランシスコ)講和条約にソ連が調印しなかったがために現在でもわが国にあり、この法理原則に気づかせる台湾の帰属確定闘争は、よって露国政府にとって対日領土交渉を難しくさせる要因になりかねません。ですから、彼らはこれを警戒したのです。
私がこの問題で堂々と露国政府に向かうべきだと主張出来るのは、この事実を知り、この事実の真っ只中に自分自身がいるためで、政治的解決という前提のもとに一度桑港条約で提示された統治範囲(いわゆる4島)の日本帰属の確定をし、残りを露国に帰属する旨の交渉をするよう、何度も提案してきました。
しかし、外務省はまるで動きません。そのことによる失望は、私だけではなくどうやらプーチン首相も大統領時代から味わっているようなのです。
彼こそKGBの出身で「強面」ですが、わが国との領土交渉を前進させようとしてきた形跡は大いに見られます。ところが、屈米の小泉内閣にはことごとく無視され、それでも話を進めようとする度に日本の政権が交代し、外務省の対応もその都度「元の木阿弥」になってきました。
メドヴェージェフ=プーチン政権は、もはや新しく発足した野田内閣の反応などに一切期待しておらず(ただし、戦略爆撃機を一周させたことと海軍艦艇20隻に宗谷海峡を通過させたことは新内閣の様子見)、直接外務省を試していると思われ、彼らを焦らせて「2島返還」の条件を呑ませようとしています。これを「段階的措置」と出来るか否かで常に交渉を停滞させてきた外務省が狙われているのです。後手に回せば回すほど、露国の全島侵略を許すことになります。
彼らは国後島と択捉島に空港を作ろうとしており、急激に社会基盤(インフラストラクチャー)の整備を進めているのも、いわば露国にとってあれほど狭い島に特に必要ではないことを中共人や朝鮮人、韓国人を使ってまで行ない、わが国を揺さぶっているのです。本当は「日本と組んだほうが得」と思いながら。
外務省がこの試練に打ち勝つには、先述の法理原則に基づくしか(決して2島返還では)ありません。それが日露完全講和の唯一の道です。少し視点を変え、どうか「今度こそまともに交渉して下さい」と、日露交渉を応援しようではありませんか。その声が起こらない限り、わが国は2度敗北して講和は消え、露国は侵略国という悪名を背負って日本との経済連携が消えるのです。