菅「最小不幸社会」の愚か

皇紀2670年(平成22年)7月19日

 民主党で社民連(社会民主連合)出身の菅直人首相は、就任会見で「最小不幸社会」を日本の目指すべき目標として掲げました。しかし、昭和59年製作・60年日本公開の米国(撮影はほとんどチェコ)映画『アマデウス』(ミロシュ・フォアマン監督)を見る限り、それは絶対に不可能な目標であり、そもそも定義不明な概念であることが分かります。

 本作は、私の最も好きな映画と申しても過言ではありません。ヴァイオリンを習っていた子供の頃に鑑賞して衝撃を受け、その後何度となく観ています。ほぼ全編に彩られるウォルフガング・アマデウス・モーツァルトの音楽と、初めて聴いたアントニオ・サリエリの音楽が交錯し、何と最後には、人間は皆おおよそ凡才であり、凡庸な人生をただ終えるだけだと言い放って終わるのです。

 史実とは関係なく、本作ではサリエリ(フランク・マーリー・エイブラハム)がモーツァルト(トム・ハルス)を暗殺したことになっていますが、実はモーツァルトが天才作曲家であることを音楽史上最初に認めたのがサリエリでした。音楽とは無縁な環境に育った彼はイエス・キリストに祈ります。「私を、歴史にその名を残す名作曲家にしてほしい」と。その祈りを粉砕し、神聖ローマ皇帝ヨーゼフ2世(ジェフリー・ジョーンズ)に擁護されて宮廷作曲家にまで登りつめたサリエリの人生を破滅させるかのように登場するのが、英才教育を受けた「神に愛されし子」モーツァルトだったのです。

 サリエリは、苦々しくキリストに問いかけます。「これがお前の答えか」「ならばお前の愛する者を葬ってやる。私の祈りを聞き入れなかったお前に復讐してやる」と。そして、彼は最も効果的な暗殺方法を思いつき、わずか36歳のモーツァルトを死に追いやりました。

 時は経ち、老いぼれて人々に忘れ去られたサリエリは、入所させられた精神病患者療養施設へカウンセリングに訪れた神父に、この世にもおぞましい真実を告白します。「神父さん、あんたも凡庸な人間だ」……そして、精神を病んで意味不明な行動を繰り返す入所者たちに向かって「私は凡才の王者だ。お前たちの罪を許そう」と言いますが、『カッコーの巣の上で』などの名匠フォアマン監督は、この人々こそ私たちであると描いてフェードアウトさせるのです。

 これほど恐ろしい映画はありません。一神教を信じ、一神教に見捨てられたと感じる一神教の個人主義者の「後がない」絶望或る1つの価値観として提示されており、それに基づけば私たちは皆まったく不幸です。唯一絶対の神は愛でし子を選別し、それ以外の者たちを創造しています。

 私たちは本当にそう考えるべきなのでしょうか。優れた才能を発揮する者は最初から唯一絶対の神に指名されており、それ以外の者に機会はない、と。そう考えればこそ、菅首相が述べた「最小不幸社会」の、できるだけ不幸な人間を生まないようにするという、まるで後ろ向きな言葉があるのでしょう。

 幸・不幸の価値観を一神教に求めて語ることに、祭祀(いわば多神教)の日本民族は本能的な抵抗があるはずです。賭博のような市場原理に奔ってでもカネを稼いで豊かになることが幸福である、としたり顔の経済評論家に説かれることにも、著しい違和感を拭えません。15万円を稼いで幸せに暮らす人を、150万円を欲しがって嘲り笑う者が決してよい人生を送るとは限らない、と説話ででも残してきたのが日本民族です。

 未だ菅首相の中に社会主義が生きていると露呈されたようなものでしょう。幸福の相対的価値がそもそも多様であることを前提としながらも、万民の幸福をうたうほうが遥かに一国の首相として健全でした。和歌山市出身の松下幸之助氏のように、丁稚奉公から松下電器(現パナソニック)を創業してみせたような、誰にでもいかなる機会がある前向きな社会の構築をうたって人材を育成することこそ、現下の日本の首相に求められていることなのです。

靖國神社みたままつりのご報告

 平成22年靖國神社みたままつりが16日、終わりました。真・保守市民の会は、会員皆様からのご寄付により、皆様の英霊への想いを込めて献灯させていただきました。18日付けで、当会ウェブサイトにてその模様を画像を交え、ご報告申し上げております。有難うございました。

                      真・保守市民の会代表 遠藤健太郎

スポンサードリンク

『菅「最小不幸社会」の愚か』に3件のコメント

  1. ストリートマン:

    最小不幸社会が目標、この標語だけで「萎えますね」。「最大幸福社会」と言うと「嘘」と言われることが本能的に判ってる「セコイ」やつの言う事はこんなものです。節約・節約、外交官大使はビジナスクラスで移動?こんな事を大々的に宣伝する事じゃない裏でやって置けば良い、外交官の「誇り」まで「政治家」が潰して仕舞う。男は黙って政策をやれ・・一々コマ―シャルをやるな。

  2. 人形焼:

    おっしゃる事同意です。麻生元総理が引用されたそうですが。フランスの哲学者アランの幸福論にある言葉です。「悲観主義は気分によるものであり、楽観主義は意志によるものである」   「人間は、意欲し創造することによってのみ幸福である。」「幸福になるには、幸福になるしかたを学ばなければならない。幸福はいつでもわたしたちを避ける、と言われる。人からもらった幸福についてならそれは本当である。人からもらった幸福などというものはおよそ存在しないものだからである。」 アランに比べると「最小不幸社会」  なんて薄っぺらな社会主義的な言葉だとおもいましね。 

  3. 憲法無効:

    政治家は占領憲法が無効である事を自覚しろ/チャンネル桜 http://www.youtube.com/watch?v=A2d7pEUYKCo&sns=em>大日本帝国憲法が現存している!占領憲法を無効というならキチンと過半数で無効確認決議をしろ!それを行う時期が近づいた!大日本帝国憲法を改正して自主憲法を手にすべき!