込められた権力批判が…

皇紀2670年(平成22年)5月18日

 昭和62年製作・公開の日本映画『竹取物語』は、わが国最古とされる(平安時代前期?)の古典をベースに、かぐや姫の物語を東宝の特撮技術(本作を最後の仕事とした、『日本沈没』昭和48年版や『ゴジラ』昭和59年版などの中野昭慶特技監督)を用いて描いた市川崑監督作品です。

 市川監督といえば、私は『犬神家の一族』や『細雪』を取り上げたいのですが、それは後日としましょう。恐らく市川監督は、凛として美しく、ときに激しく気丈な女性を描こうと、『細雪』の蒔岡雪子や前作『映画女優』の田中絹代(ともに吉永小百合)の系譜として本作のかぐや姫(沢口靖子)を登場させたに違いない、と私は思うのです。

 思えば、市川映画に登場する女性はほぼそうであったように思います。本作製作のころには亡くなられていましたが、妻で脚本家の和田夏十(わだなっと)さんのイメージなのでしょうか。例えば、和服美人が勢いよく部屋を出ると、ふすまに裾が挟まっており、それを女が向こう側でこれまた勢いよくスっと引くといった場面が、私の好きな「市川演出」なのです。

 ですから、本作に古典『竹取物語』に関する研究成果の描写を求めるのは間違っているかもしれません。『細雪』の蒔岡姉妹を包み込んだヘンデル作曲の歌劇『クセルクセス』の『オンブラ・マイ・フ』を再び音楽に使用(本作では谷川賢作が編曲)したことからも、やはりかぐや姫を描きたかっただけの映画なのでしょう。しかし、それにしても雑な構成だったように思えてならないのです。

 今日の研究では、第40代の天武天皇と第41代の持統天皇に仕えた藤原不比等らを指し、このころから始まった藤原氏の絶対権力を批判したものだっただろうと言われています。ところが、本作ではあくまで帝(石坂浩二)が絶対権力者であるかのように描かれてしまいました。これではわが国のかたちに大いなる誤解を与えるでしょう。

 物語の展開を単純化すべく、実はいくらでも面白く描けたはずの古典に込められた権力批判を描かなかったことで、本作は非常につまらない子供騙しの映画になっています。

 羽衣伝説に材を得た異界からのかぐや姫を異星人と設定し、蓮の花をモチーフにしたという巨大な宇宙船が襲来する後半の見せ場も(初見の中学生のころは少しワクワクしましたが)今となっては何やら虚しく、当時全世界公開をうたった本作は決して大ヒットしませんでした。

 また、配役に関する批判も多く、特に竹取の翁(三船敏郎)と妻の嫗(若尾文子)がイメージに合わないとされ、これには私もどちらかと言えば小津安二郎監督作品のイメージを借りたほうがよかったように思います。例えば、笠智衆と(杉村春子ではトゲがありすぎるので)三宅邦子の翁と嫗ならどうであったか、と。

 とにもかくにも、平成の御代にあって第125代今上陛下を政治利用してきたような政治家や国民がワンサカおります。それも占領憲法で「すべて国民」が「主権者」なのですから仕方がありません。仮に紀貫之が古典『竹取物語』の筆者とされ、彼がわが国に残した警告はまったく生かされないのでしょうか。

 官や民の権力が暴走しないよう、祭祀王たる天皇陛下がおわすのに、いつの世も勘違いした権力者は暴走し始めます。そして、周りはメディアも含めて萎縮し、その間違いを正せなくなって何らかの破壊へと突き進むのです。

 私たちは、もう藤原氏を批判した書を焼き払われたりはしません。権力批判を暗喩でしか表現できない時代や国家でもありません。堂々と言いましょう

 http://sitarou09.blog91.fc2.com/blog-entry-159.html

 ▲【日本を】『日本解体法案』反対請願.com【守ろう】

  文例:「国会法改正案」への反対意見書 *利用、改変可*

 ◎民主党の小沢一郎幹事長は、さすがにこのままでの成立を断念するようですが、18日に自民党やたちあがれ日本などの野党5党が関連法案の撤回を求めることに決まりました。あともう一歩です。

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『込められた権力批判が…』に3件のコメント

  1. ランキングのポイントが変です:

     このブログを除いた、他の映画ブログランキングの上位ブログのポイントが、この10日足らずで各ブログ1000ポイント以上底上げされたようなのですが・・・ ポイントについて説明しますと、・ 順位の基準となる「INポイント」は、各ブログからクリックしてランキングへアクセスした場合に、1アクセスにつき10ポイント加算される。同IPにつき一日1回有効。・ ポイントは30分毎(深夜は1時間毎のようです。)に集計されて加算され、「週間IN」は一週間分のポイントの累計です。 「月間IN」は、一ヶ月のポイントの累計です。 (・「OUTポイント」は、反対にランキングサイトからクリックして各ブログにアクセスした場合に加算され、順位に影響はないようです。) (以上、人気ブログランキング システム概要参照) このブログが映画ランキングに参加したばかりの頃、3位以下の「週間IN」は、3000ポイントもありませんでした。1000ポイント代だったと思います。 続きます

  2. ランキングポイント続き:

    本当に全てのブログでこの10日足らずの間にクリック数が倍増して上位陣全体のポイントが増加した可能性も考えましたが、月間INと比較すると矛盾してしまうのです。 もし実際に10日程でクリック数が増加したなら「月間IN」の数字まではそれ程大きく動くはずがない。本日から一ヶ月遡っての累計なのだから、20日分は今までの(低い)ポイントであるはず。けれども実際は何故か「月間IN」までが「週間IN」に比例した数字になっている。(明らかに増えている) 「週間IN」÷7=現在のクリック頻度での一日分のポイントとなるので、この割合で一ヶ月分を算出した 「週間IN」÷7×30 は、今表示されている「月間IN」よりもずっと大きな数字でなければおかしいのではないでしょうか? なぜ、現在の「月間IN」が、 「週間IN」÷7×30 と一致しているのでしょう?  このブログのINポイントはここ2?3日でそんなに大きく低下していないのにもかかわらず、現在の時点で既に3位とは僅か30ポイント差。3クリック差となっています。 納得できない状況ですが、とにかく1日1クリックしながら様子を見たいと思います。

  3. ランキングの続きです:

     度々申し訳ありません。本日見てみると、また少し全体のポイントが下がってきたように見えます。でも、やはり10日前と比較すると不自然ですし、月間と週間のINのバランスが昨日と明らかに違うものがいくつかあり、これもまた疑問に思います。 そう言えば、政治ブログのランキングについても今まで不自然だと話題になった事が何度かありました。 今後は気づいた時に数字をメモして残しながら様子を見たいと思います。