露中首脳会談、両国の本音

皇紀2674年(平成26年)5月21日

 http://sankei.jp.msn.com/world/news/140520/chn140520……
 ▲産經新聞:中露首脳会談、中国“援軍”プーチン氏を歓迎…孤立の中で「同盟」確認

 報道各社は「露中の蜜月アピール」というような伝え方に終始していますが、基本的には昨年三月二十四日記事「露中の『蜜月』報道はウソ」で申した状況に変わりはありません。ただ、昨日記事で申したように、ここ数ヶ月の劇的な変化は、ウクライナ政変があったことです。

 ウラジーミル・プーチン大統領は上海市で、習近平国家主席だけでなく、江沢民元主席とも会っています。これも「蜜月アピール」に拍車をかけているのですが、いわゆる「上海閥」の習主席側が自らの体制強化(権力闘争の勝利宣言)のために江元主席を担ぎ上げて設定した会談に過ぎません。

 まして、露国にとって最も重要な露産天然ガスの売買契約は、結局合意に至りませんでした。プーチン大統領は、露中連携で新たにパイプラインを建設する気などほとんどなく、そのようなことをすれば、平易に申しますと露中国境紛争のようなものを起こされて面倒なことになる、中共とはそういう国だ、と理解しているのです。

 共同声明の文言をめぐり、中共側が執着した「歴史改竄と戦後秩序の破壊に反対」も、プーチン大統領の興味を一切ひいていません。どうでもよいことだったからこそ彼は、日本や独国の名指しを避けるよう調整させています。

 一方、ウクライナ問題に対し、米国も欧州各国も積極的に露国へ制裁を加えているとは申せません。北大西洋条約機構(NATO)軍も動いておらず、実のところ露国は日欧米から非難声明を出され(口だけで)、大して痛くも痒くもない経済制裁を受けているだけなのです。

 欧州各国の本音は、露国からのエネルギー供給に悪影響がでるような対露外交に踏み切りたくないのであり、プーチン大統領はそれを知っています。次なる供給先はあくまで、経済信用度が高くて米国の牽制材料に使える国、すなわち日本です。

 それでも中共はわずかな隙を見逃さず、露国に恩を売るつもりでしょう。ただちに効果がなくてもよいのです。こうして楔を打ち込んでいくのが中共のやり方だということを、私たちも忘れてはなりません。

【追記】
 露中両首脳は結局、パイプライン東ルートにて露国が中共に天然ガスを提供する協力覚書と天然ガス売買に関する契約書に調印しました。プーチン大統領は、いざとなれば供給を止める外交カードを手にしたつもりでしょうが、くれぐれも注意が必要でしょう。

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『露中首脳会談、両国の本音』に2件のコメント

  1. pleabargain099:

    >>一方、ウクライナ問題に対し、米国も欧州各国も積極的に露国へ制裁を加えているとは申せません。

    それはチョット違うと思いますよ。 日本では、ロシア要人の米国内資金凍結など(意味の無い制裁)しか言われていないが、実際 Sアンドプアーズがロシア債の格付けをジャンク級にしたために、ロシアは国債発行できなくなってますよね。
    ロシアは原油、天然ガス、金、など資源豊富ですが、米国は裏でそれらの国際価格を引き下げる工作もやっています。これについてはほとんどオバマの力不足ですけどね。
    軍事戦争となると、両国共に核が絡んでくるが、裏技を使った経済金融戦争ならOKですよね。
    思い出してください。そもそもソ蓮が崩壊した理由だって、一つにはルーブルをドンドン下落させた事でしょう。米国はその経済金融戦争に味をしめたし、効き目を確信したんです。ただ今回はオバマに力が無いために圧力効果が薄い。

  2. マリア:

    ウクライナは最初に欧米が仕掛けたクーデターだったということが 日本ではあえて忘れられるようになっています。 グローバリズミを進めるウォール金融のプーチン潰しという視点で見つめることが 日本ではまだされていない。 それが日本の限界なのだと思います。
    歩調を合わせて制裁に加わり TPPというグローバリズムに進む安倍総理には 限界を感じます。
    今は安倍総理を支持していません。 グローバリズムと一人戦うプーチンを抱くロシアがうらやましい。
    安倍政権では 在日問題などを解決していくことが精一杯。 グローバリズムがヤルタ会談から始まっていたという歴史さえ分かっていない政治家ととらえています。