大魔神の魅力と森田先生

皇紀2675年(平成27年)1月2日

●お正月の映画鑑賞~おすすめ●
映画『大魔神』 DVD

安田公義監督作品 出演=高田美和・青山良彦・藤巻潤・五味龍太郎・橋本力ほか

 実は旧年六月十一日、撮影監督の森田富士郎先生が亡くなりました。森田先生は、大阪芸術大学映像学科の元教授で、私が勤めていたころに作った大学院の土台となったお一人です。

 普段はとても物静かでいらっしゃって、お酒を飲まれるととてつもなく明るく、しかしながら怒ると本当に怖かった。そもそも撮影監督のほとんどがそうで、急に怒りの沸点が下がります。で、よく「森田先生が怒ると、顔が大魔神にそっくり」なんぞと申しておりました。ごめんなさい。

 そう、大映京都撮影所が誇る傑作映画『大魔神』は、まさに森田先生がハリウッドの合成技術を独自に研究、熱心に企画を通して実現された作品なのです。

 本作の魅力は、一見単純な勧善懲悪の物語のようで、大魔神が人の定義する善、或いは善の味方とは限らないことでしょう。悪の領主に搾取され困窮していた村人さえ掴んで放り投げてしまうのです。

 すなわち設定のヒントはともかく、西欧的なヒーローとして存在するのではなく、自然祭祀のゆえたる一部として存在しています。ですから、放っておけばすべての人に牙をむくのです。

 いわゆる「特撮」の演出は、森田先生のご学友だった黒田義之監督で、美術はやはり大阪芸大映像学科元講師の内藤昭先生。三部作が一気に昭和四十一年のうちに作られました(監督はそれぞれ安田公義、三隅研次、森一生監督)。

 森田先生はこのほか、五社英雄監督の『鬼龍院花子の生涯』『極道の妻たち』『吉原炎上』、勅使河原宏監督の『利休』『豪姫』、降旗康男監督の『蔵』など、大作を手がけておられます。後年は、「もう作品は選ぶ。やりたくないものはやらない」とおっしゃっていましたが、結局は『蔵』が劇映画最後の作品でした。

 未見の方、久しぶりの方、ぜひもう一度ご覧ください。

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『大魔神の魅力と森田先生』に1件のコメント

  1. miku:

    「大魔神」シリーズは幼少期に家族でよく見ました!

    仰る通り、大魔神は一旦怒りが頂点に達すると
    善人・悪人関係なく暴れまくるという(笑)

    でもそこが、子供心に
    「やっぱり神様を怒らせる様なことはしちゃダメだ!」と良い教訓になりました

    無表情な埴輪から顔面緑色の大魔神に変身する瞬間!
    あれは今見てもコワイです。