米の対中強硬化、日本は?

皇紀2670年(平成22年)8月9日

 7月29日記事でも取り上げた米国のテレビドラマ『ザ・ホワイトハウス(The West Wing)』は、大統領の政策意思決定がどのような人々の影響を受けているものなのか、とても分かり易く観ることのできる作品でした。むろん「つくりもの」である以上、すべてが現実を反映しているとは限らず、また劇中の首席補佐官が非常に影響力のある人物として描かれすぎているきらいはあります。

 ビル・クリントン大統領の、特に2期目のころの外交姿勢は、よく「ジャパン・ナッシング」などと表わされ、日本を無視して中共との連係を密にしました。未だに占領憲法を無効にもできない日本は慌てずにはいられず、まったくみっともなかったのですが、中共への企業進出を最優先にした財界が大統領をこのように動かしたことは明白です。

 この当時は、まさに中共を「世界の下請け工場」にすべく、またそれが中共指導部の利益にもなったため、米中蜜月が続きました。いざとなれば「同盟関係」や「反共産主義」といった政治は、賭博のような経済システムにかき消され、中共での企業斡旋で飯を食っているクリントン政権時代の元国務省スタッフは大勢いたのです。

 それが、ここへきて変化したのでしょうか。ヒラリー・クリントン国務長官は先月23日、ASEAN(東南アジア諸国連合)フォーラム後の記者会見で、突如として「南シナ海での領有権などの主張はUN(連合国 俗称=国連)海洋法条約に基づくべきだ」といった中共批判を展開しました。

 その直後、米国防総省は原子力空母「ジョージ・ワシントン」などを大規模な米韓合同軍事演習に参加させ、8月5日には黄海に派遣する計画を明らかにしています。きっかけは北朝鮮による韓国哨戒艦撃沈事件ですが、(推論の域を出ないが)中共が北朝鮮をそそのかし、結果として北朝鮮が震え上がっているものの、米国はこの経緯を察知して中共を牽制し始めたのかもしれません。

 これはパラセル(西沙)およびスプラトリー(南沙)諸島問題のみならず、中共の魔の手が忍び寄る沖縄県石垣市尖閣諸島や、人民解放軍による最近の高圧的行動を厳しく指弾する含みがあったため、楊潔篪外相は怒って退席したといいます。戻ってきた楊外相は、ASEAN参加国外相たちを睨みつけながら延々中共の勝手な立場を弁明しましたが、この瞬間、中共の対ASEAN外交の地盤は米国によって破壊されたのです。

 恐らく、ここで何度か指摘しているように、もうまもなく中共の世界工場体制が崩壊します。米国財界はとっくに中共に見切りをつけているはずであるからこそ、バラク・オバマ政権の対中外交姿勢が強硬化したのではないでしょうか。

 例えば、またぞろ小麦価格が先物取引(博打そのもの)で異常な高騰を示していますが、川島博之氏の『「食糧危機」をあおってはいけない』(文藝春秋社刊)によれば、これは世界の穀物需給が逼迫したためではなく、サブプライム・ローンなどで余った金融資金が穀物市場に流入したために起こっていると解説しています。

 これが「賭博のような経済」の正体であり、中共の富裕層もせっせと博打に励んでいますが、そうして自分たちで価格を釣り上げ、公称人口13億人のうち11億人以上もの中共人が飢えていく仕組みを作り出しました。本来ならば、世界唯一の皇帝陛下・祭祀王たる天皇陛下の御言葉(全世界に向けた声明)を賜って、彼らに私たちが自然祭祀による救いの手を差し伸べねばなりません。

 しかし、占領憲法下の日本は米国を前にして「ただ静かに呼吸しているだけ」であり、「平和」だ「人権」だの内弁慶パフォーマンスに明け暮れて、時としてカネは出す(出さされる)が本当の意味で人間を救えないのです。本当ならば日本にはその力があるのだと、まずここで知って下さい。

 米国の外交姿勢はかくして影響を受ける人物や状況によってころころ変わり、それを見据えて日本は行動すべきですが、鳩山由紀夫前首相による在日米軍普天間飛行場移設問題での「国外」の対米強硬姿勢は絵に描いた餅だったことが分かり、菅直人首相はまったくの屈米になってしまいました。米国の対日重視を引き出させる機会を逃すとは、左翼市民活動家の出身だというのに一体どうした腰抜けでしょう。

映画『氷雪の門』オフィシャルサイト

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『米の対中強硬化、日本は?』に1件のコメント

  1. ストリートマン:

    アメリカもようやく中国の「中身」が見えてきたのでしょう。蒋介石・毛沢東時代から見て少しは「国家」では無い事を認識しはじめたとすれば良いことですが・・・日本も騙されますが、アメリカも良く騙される国です。日本も早く眼を覚まして欲しいのですが、平和・平和と一人で踊っていますから「空しい」です。