「二重橋」「九段」の歌

皇紀2673年(平成25年)11月17日

【コラム】

おっ母さん、二重橋の前で記念写真を撮りましょう。
 やさしかった兄さんの待つ九段(靖國神社)へ行きましょう。

 島倉千代子さんが八日、七十五歳で亡くなられた。私なんぞは『東京だョおっ母さん』と『人生いろいろ』しか島倉さんの歌を知らない。それもですよ、『東京だョおっ母さん』を正確に知ったのは、伊丹十三監督の映画『お葬式』でだ。

 お通夜の席で、皆が帰ったあと、宮本信子さんと菅井きんさんと尾藤イサオさんがね、死んだ父ちゃんの奥村公延さんが好きだった『東京だョおっ母さん』を三人で唄おうということになる。

 今は何かと著作権の問題で歌詞をそのまま載せられませんが、これがガキの私にも「イイ歌だなぁ」と思わせたんですね。映画では一番を唄って音声がフェードアウトし、そのまま山崎努さんのナレーションに被るんだけど、これまた二番の歌詞がイイ。

 昭和三十二年でしょ、アレ。焼け野原から十二年で、連合国軍総司令部(GHQ)の占領統治が終わってから五年。つまり「九段」を唄ってもよくなって五年の月日が経っていたわけよ。占領統治下では日本人に対する徹底した言論と表現の弾圧がありましたからね、靖國神社の桜の下で、戦死した兄さんが待っている、なんぞという歌は唄わせてもらえなかった。純真な反戦歌でもあるのに……。

 作詞は福島出身の野村俊夫さんでしたが、あのわずかな言葉の中に、日本人の叙情が全部込められている。あれを忘れちゃいかん、と。私はそう思う。

 母音の歌詞に対してそのまま音程が上がるといった歌でも平然と唄う、圧倒的な歌唱力を誇った美空ひばりさんに対して、島倉さんは歌唱力より叙情的表現力で唄いきった方ではなかったか。だから『人生いろいろ』は島倉さんが唄わないと聞き手に響かない。技巧ではどうにも再現出来ないのだ。

 でも、あたしゃやっぱり『東京だョおっ母さん』が好き。もう聞けないのかねぇ。つまんねぇなぁ。

 文=遠藤健太郎 (真正保守政策研究所代表)

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『「二重橋」「九段」の歌』に1件のコメント

  1. とんとん:

    この「東京だよ、おっかさん」の歌を、NHKは一度も歌わせなかったんだよね。
    国民的大ヒットだったというのに・・・
    島倉さんはそのことを残念がって、マネージャーに訴えたこともあるそうだ。
    NHKにとって、「皇居」だとか「九段」たというフレーズが入っているだけで許せなかったんでしょう。
    まあつまり、NHKは骨の髄から反日だったんだね。