スーパーの魚売場がピンチ

皇紀2673年(平成25年)8月25日

【コラム】

魚を食べさせようと売り始めた「ファスト・フィッシュ」なんてのはね、
 日本人が生きることに対してすら堕落した象徴みたいなもの。

 http://diamond.jp/articles/-/40557
 ▲ダイヤモンド・オンライン:スーパーの鮮魚売場は絶滅寸前!? 元バイヤーが語る「お魚大国ニッポン没落」の現場

 今、スーパーの缶詰売場から鯖の水煮缶がなくなってますよね。ちょっと前にテレビ番組で「痩せる」とか何とかやっていたらしく、もうそれだけで無思考にパァーっと売れちゃう。そして或る時、無自覚にパァーっとみんなが買わなくなる、と。

 で、マリン・プレゼントっていう魚介類の商品企画開発を扱っておられる会社の柴田稔社長が「スーパーの鮮魚売場はあと数年でなくなる」と警告されていて、ダイヤモンド社がそれを記事にした。読んでみると、これが平成八年に公開された伊丹十三監督の映画『スーパーの女』で指摘されていたことと多くの点で見事にかぶる。

 しかし、一番の違いはあの頃より日本人がお魚を食べなくなり始めたってこと。野菜売場の次に鮮魚売場へ直行する私なんぞは全くピンとこないのだが、確かに最近テレビや新聞が「お米を食べなくなった」「お魚を食べなくなった」と言っている。ホントかね。

 本年四月に開業したグラン・フロント大阪の北館に、近畿大学水産研究所が養殖に成功した鮪のお刺身を出すお店が入っていて、そこは平日でも開店から人が並んでいる。何しろトロの部位が多いらしくて、あれは和歌山の海で育てたっていうから、出身者の私も気になって仕方がない。

 それでもお魚を食べなくなったっていうのは、柴田社長のおっしゃる通り、国産の鯵や鰯を食べなくなったってことで、鮪や鮭、海老といった輸入物は相変わらず好きな人が多いでしょお魚の骨を取り除いた「ファスト・フィッシュ」なんぞというものまで流通し始めている

 回転寿司でも人気の高い鮪や鮭のお刺身にももちろん骨がありませんね。ファスト・フィッシュは「子供やお年寄りに優しい」という文句で、中国あたりで骨抜きさせて売り始めたのでしょうが、原因を考え違いしている限り、こんなもんが売れても漁師さんたちの儲けにはならない。つまり骨があるからお魚を食べなくなったというのは下手な言い訳で、日本人が食べること、すなわちもう「生きること」に対してすら堕落したんですよ

 だから家族の会話もない。お魚の身をほぐすにも無気力な一人では面倒くさいだけ。「鯛の骨は刺さるよ」とか「そのぐらいの骨ならボリボリ食べちゃえ」とかさ、そんなことを互いに喋り合って日本人は焼魚や煮魚を食べてきた。食文化なんて簡単に言いますけど、食材や調理法だけじゃない。

 きれいに骨だけを残して食べると昔の子供は親に褒められたし、うまく食べられないうちは母親が身をほぐしてくれて、それがどんなに厳しく怒られた後でもそうしてくれたからね、子供はちゃんとそういう時に親の愛情を無意識にでも確認出来ていたわけよ。

 日本人がお魚を食べなくなったというのは、そういう文化も教育もなくなったってこと。お米の減反で補助金をばら撒き、農家の世代交代を断絶させる政治を許した私たちは、お米もお魚も食べず、お肉や野菜の加工品を食べて生きているフリをしていますがね、原材料の輸入品をカネで買えなくなったら即餓死ですよ

 文=遠藤健太郎 (真正保守政策研究所代表)

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『スーパーの魚売場がピンチ』に2件のコメント

  1. 読者:

    大変鋭いご指摘ですね。
    私は昭和末期まで「かつお節」を「すり機」ですっていました。
    その最後の世代かもしれません。
    いま殆どの若い人が「最初からパック詰めされている」と思い込んでいます。
    これは実は恐ろしい事と思うのですよ。恐ろしい事だらけですが。
    先日、あの「日教組」が大会で
    「急須の使い方を知らない子供が増えている(お茶はペットボトルに入っている)」という
    問題を大々的に取り上げたそうです。
    なんで日教組にこの問題を扱わせるのか!と悔しくなってきたものですよ。
    こういった問題は保守派・民族主義者こそが論じるべきなのに、
    瑣末な事にこだわって、先に進みません。本質的な議論もしません。
    今後もこういった本質的問題について是非、取り上げていただけますでしょうか。

  2. kuro:

    本当ですね。
    私は二人暮らしで毎日米を5合炊き、魚もできるだけ食べていますが
    世間は違うようですね。日本の食文化が失われることは悲しい限りです。

    確か今年かいつか、パンの売上が米の売上を始めて超えたらしいです。
    米を食べ慣れると、パンなんて食べた気がしなくなりますがね。
    (たまには食べたくなりますが)