ああ、高倉健さん…

皇紀2674年(平成26年)11月19日

 安倍晋三首相の中途半端な記者会見なんぞ、急にどうでもよくなりました。

 http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKCN0J207A20141118
 ▲ロイター:俳優の高倉健さん死去、悪性リンパ腫で=報道

 十八日正午過ぎ、映画俳優で「本物の銀幕の大スター」だった高倉健さんが、森繁久彌さんや森光子さんと同じ「十一月十日」に亡くなっていたことが報じられました。昭和の大スターを神神になさる日なのでしょうか。

 実はですね、本当にお恥ずかしい話なんですがね、私の名前の「健」の字は、高倉健さんからもらったんだ、と。父がよく言っていたのですよ。そりゃもう、父は健さんの大ファンでしたから。

 それで日教組の悪事を追及したら警察のご厄介になった、なんてなことはございませんが、いえいえ、高倉健さんの百分の一も立派な男になれず、父を失望させてきたに違いありません。

 近頃は、こういう大スターを育てようっていうより、何かを暴露して引きずりおろしてやろうっていうほうが多いように思います。気さくでないとダメ、面白いことを言ったりやったりしてくれないとダメ、というね。

 とにかく芸能人を自分たちの目線に降ろさせて、一方で国家や家族の模範に仕立て上げようとします。芸能人になるような若者の飲酒や喫煙、異性交遊をことさらにばらし、まぁそれが未成年なら問題もあるでしょうが、時には徹底的につるし上げて頭を下げさせる、と。コンビニで土下座を強要したチンピラどもと何が違うのか。

 いや、話を健さんに戻したい。健さんの演じた任侠の世界は、決して暴力じゃないんですよ。人を殴るし、刀で斬るんだけど、ぜんぶ礼を重んじて丁寧語だったでしょ。シリーズ化された『昭和残侠伝』も『日本侠客伝』も、ご自身が確かのちに「嫌だった」とおっしゃっていた『網走番外地』も。あれが格好良かった。

 だから私も悪事を追及するときに丁寧語できたんです。それでもダメなものはダメでしたけどね。警察さん的には。健さんの役どころに至っては、いわゆる「反社会的勢力」です。おもいっきりダメなんだけど、義理を通す格好良さだけが印象に残ります。ヤクザがいいって言うんじゃなくて、こういうヤツがいいんだ、と。

 『君よ憤怒の河を渉れ』が文化大革命以降初の中共での日本映画公開(中共でのタイトルは『追捕』)となり、約三億人は観たとまで言われ、健さんも中野良子さんも大人気になりました。これがあったから、張芸謀監督の『単騎、千里を走る。』が作られたわけです。

 ロバート・アルドリッチ監督の『燃える戦場』やリドリー・スコット監督の『ブラック・レイン』もよかったし、そういえば『新幹線大爆破』もよかった。健さんがなぜ新幹線を爆破することになるのかを描いた暗い部分は、海外公開ではカットされましたが、あの路線が健さんの映画のすべてなのですよ。

 高倉健さんは、間違いなくわが国を代表する映画俳優のお一人でした。お悔やみを申しても申しても足りません。

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『ああ、高倉健さん…』に2件のコメント

  1. さっし:

    正直、この度の解散総選挙、何処に投票しようか、悩んでいます。与党が過半数を確保しよが、過半数割れしようが、日本の危機的状況が解消されるわけではないですから。しばらく地獄が続くでしょう。太陽の党しかないかな?次世代の党は、TPP、地域主権、道州制推進だから、投票できないし。

  2. 我は、拳を極めし者:

    遠藤さんが日々精力的に活動されていることにただただ敬服いたします。
    昨年初秋の講演会は非常に充実した有益な時間を過ごさせていただきました。
    改めて感謝の念とお礼を申し上げます。
    今年の集会には私用で参加できませんでしたが、またそういった機会を与えていただけるのであれば参加させていただきたく思っています。
    私も今までずっと欠かさず遠藤さんのブログを読み続けてきましたが、なかなかコメントできずにいました。
    ここにきて私からも思い切ってコメントいたします。

    11月19日付けのブログを読んで遠藤さんが映像学科に進学された理由が少しだけ分かったような気がします。
    ほんと、安部総理の記者会見なんてどうでもよくなりました(笑)。高倉健さんの訃報を知ってから現政権の解散など私から消え去っていました。
    私は映画の世界に関しては全くの素人です。それを承知で高倉健さんの印象を私なりに申しますと、高倉健さんの何事に対しても真っ向から真剣に誠実に向き合う姿には動かされるものがありました。

    現代社会においてこれまでオフラインはもとよりオンライン上でも醜聞が絶えません。むしろ今はオンライン上のほうが酷いでしょう。
    政治ブログランキングでも上位から下位まで見るに耐えないものが数多く存在します。
    表面的な情報収集と表面的な分析だけで「俺は正しい。俺の主張が絶対だ!」といって何の恥じらいもなく得意絶頂で自己顕示に溺れるようなものや、特定の民族に対してのみならず、同じ日本人であるにもかかわらず、不特定多数の人々の欠点や失態を殊更強調して口汚く罵倒している醜聞など上位から下位までずらり勢揃いです。その中には非常に陰険なものや幼稚なものもかなり散見され、ブロガーの精神構造を疑います。
    そういったブロガーが国士気取りでブログしているのを見ると世紀末という表現が思い起こされます。

    政治ブログランキング上に掲載されているブログに関して遠藤さんや一部の方のブログ以外は、もはや見るに値しないと確信してばっさりと斬り捨てました。
    朱に交われば赤くなるものです。赤くならないためにもそのような取るに足らないものはぶった斬って然るべきです。
    とりわけ青少年には見せるべきではありません。どんどん歪んでいってしまい、中身がすっからかんの大人になってしまう。

    そのように精神衛生上決して良いとは言えないブログがずらーっと鎮座する政治ブログランキングの中でも遠藤さんのブログは、オアシスのような存在です。
    まさしく高倉健さんのように何事にもまっすぐに向き合うブログだということは、遠藤さんのブログ愛読者の皆様なら十分に理解しているはずです。
    今までずっと遠藤さんのブログを読ませていただき、昨年の講演会で私は完全に分かりました。遠藤さんは真に誠実で信用できる方です。
    人間の本性は何気ないところで出るものです。遠藤さんは、敵対する民族に対しても決して悪辣ではなかった。決して卑怯ではなかった。
    さまざまな場面で色々と試される昨今の世の中で遠藤さんは気高く、まっすぐだった。
    私は大変嬉しく思っています。やっと保守を、精神というものを語るに相応しい方に巡り会えたことを私は歓喜しています。

    遠藤さんと「同じ健」の名を分かち合う高倉健さんもきっと喜んで下さっているに違いありません。
    にっこりと微笑んで「そうですね!」と振り返って頷き、「太陽」へと続くゆるやかな傾斜の階段をゆっくりと上っていく高倉健さんの後ろ姿が、見えます。